平成最後の「10.19」―記者は川崎球場を訪れた 30年で変わった風景、変わらない熱気
2018.10.23 13:03
昭和野球の空気を語り継ぐ場所
日が暮れた18時頃からは、30年前の試合進行に合わせて第2試合の映像を放映しつつざっくばらんに語り合う座談会で川崎の夜は更けていく。熱烈なパリーグファンのサークル「純パの会」の協力で実現した企画で、こちらも試合同様、満員で部屋に入りきれない人が出る盛況ぶりだった。
試合の展開も結果も知っているのに、得点シーンや好プレーのたびに歓声が起き、皆で集まって当時を追体験したくなる。それだけの熱い試合展開と、昔ながらの野次や客席の光景に野球ファンは引き寄せられるようだ。様々なグルメやイベント、キャラクターのパフォーマンスなどで観戦を楽しむ演出満載の現代のプロ野球からかけ離れた、ひなびた空気がつきまとう昭和の野球のカルチャーの一端がこの空間には息づいていた。
こうして、平成最後の10.19は知る人ぞ知る盛り上がりのうちに終わった。
1988年当時、パリーグ球団の本拠地だった球場で少しでも往時の姿をとどめるのはここ川崎とメットライフドーム(旧西武ライオンズ球場)、東京ドームだけである。昭和のプロ野球をつくった他の球場が皆解体される中で、30年経ってもファンが集まって当時を懐古できる場となっているのは実に幸運だ。不人気ぶりをネタにされた当時とは違い、21世紀になってひそかに昭和野球の「聖地」と化しているのも運命のいたずらだろうか。田中さんはじめ川崎フロンターレや野球ファンの地道な取り組みで、次の時代も川崎のスポーツ文化を語り継ぎ、新しい歴史を作っていける場所になっていた。