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歴史的価値ある「学校家具」を救え! 九大総合博物館が活用プロジェクト立ち上げ

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.06.18 20:00
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引っ越しの際に古くなり不要そうな家具などは捨ててしまうことも少なくないが、ある程度の年数を経たものはアンティーク、ビンテージ家具として価値が出てくることもある。専門店もあるほどなので、その価値は広く認められている、のだと思われる。

貴重な家具が存在するのは民家だけではない。大学内に残されている貴重な家具を救出・保存するため、九州大学総合博物館の三島美佐子准教授をはじめとするプロジェクトチームが、クラウドファンディングで九大什器保全活用への協力を呼びかけているのだ。

新聞などでも報じられ、すでにかなりの寄付が集まっているが、プロジェクトの目的や狙いはどこにあるのか。Jタウンネットは2018年6月18日、三島准教授に話をうかがった。

貴重な学校家具コレクションの数々が

そもそも今回のプロジェクトが立ち上がったのは、2005年から始まっている九州大学の全面移転が影響している。

これまでに工学部や理学部のキャンパスが移転し、医学部も施設建て替えなどが行われているが、その際学内に設置されていた古い什器類(じゅうき・家具や食器のような日常的に利用する道具の総称)、特に歴史ある木製家具類が移転先の構造に合わないなどの理由からやむなく廃棄されてきたという。三島准教授は次にように話す。

「2015年に行われた理学部の移転の際に、いくつかの什器を家具史の専門家に評価していただいたところ、歴史的に非常に貴重なものがあることを指摘されました。こうした価値が検証・評価されないまま歴史的な家具が廃棄処理されてしまうことは見過ごせません」

歴史的な価値だけでなく、大学文書館には什器の備品台帳が残されており、番号が残されている什器に関しては、いつどのような目的でどこから購入したのか、といった情報も追跡できる。史料的価値も非常に高いのだ。

博物館で展示されている「レスキュー」した什器の一部(画像はクラウドファンディングサイト「Readyfor」の「歴史的な木製学校家具を救え!九大什器保全活用プロジェクト」より)
博物館で展示されている「レスキュー」した什器の一部(画像はクラウドファンディングサイト「Readyfor」の「歴史的な木製学校家具を救え!九大什器保全活用プロジェクト」より)

「学校家具のコレクションとしても、これほどの規模で残っている学校はなかなかないと伺っています。これらの検証が行われる前に廃棄されてしまうことを看過できないと考えました。しかし、什器のレスキューにかかる費用は移転経費に含めることができません。なんとかレスキューしたいと考え、クラウドファンディングの活用を思いつきました」
すでに第一目標は突破し、現在は第二目標に(画像はクラウドファンディングサイト「Readyfor」の「歴史的な木製学校家具を救え!九大什器保全活用プロジェクト」より、6月18日16時現在)
すでに第一目標は突破し、現在は第二目標に(画像はクラウドファンディングサイト「Readyfor」の「歴史的な木製学校家具を救え!九大什器保全活用プロジェクト」より、6月18日16時現在)

新聞などで取り上げられたことから、当初目標としていたレスキューに必要な費用200万円はすでに確保しており、現在は第二目標である400万円を目指している。追加分は什器のリペアや、保管場所を追加することになった場合の費用に充てられる。

「予想以上の反響をいただき、とても驚いています。クラウドファンディングで注目を集めたことで、『キャンパス内に残された什器が貴重なもの』という認識が学内でも広がっており、広く価値を知っていただくいい機会にもなりました」

価値があるとはいえ、学術的な検証はまだ始まったばかり。運び出す家具が明確にわかっているわけではなく、その都度これまで見てきた家具との類似性や、「貴重そう」という雰囲気から判断してレスキューを行っており、救出点数は膨大な数になるという。

レスキューした什器は一端、すでに確保されている集積場所に保管されるが、並行して研究を進め、大学や博物館として収蔵すべきものは検証によって厳選される。収蔵点数には限度があるため、三島准教授が活用しようと考えているのが「在野保存」だ。

「公共の場や個人の方に活用していただきながら、保存を図るというもので、すでにいくつかの施設にご協力いただき、実践研究という形で貸し出すとどのような効果があるのか、どのような活用法があるのかなどを、検証しています。九州大学に限らず、現在全国の空き家や廃校でも貴重な家具が放置されたままという事例が少なくないようで、今回の私たちの取り組みが、今後の家具保存の先例になるのではないでしょうか」

キャンパス移転が完了するのは今年9月末だが、クラウドファンディングの期限は7月末となっている。九大の家具の行方に興味があるという人、ビンテージ家具に関心があるという人は、クラウドファンディングのページを見てみてはどうだろうか。

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