ふるさとの親に「介護Uターン」で寄り添いませんか? 北九州市、首都圏在住者に新提案
ふるさとの親に介護が必要となったら、離れて暮らす子供はどうすればいいか――。そんな、介護とUターンを一緒に考えるイベントが、福岡県北九州市の主催で行われた。
その名も「北九州市 Uターン×介護セミナー」。北九州市東京事務所(東京都千代田区)には2018年3月10日、50代男性を中心とした19人が集まり、市担当者や介護の専門家による講演に耳を傾けた。
「高齢化率」は政令市トップだが...
このところ、北九州市はシニアのみならず、幅広い世代の移住先候補として注目されている。たとえば月刊誌『田舎暮らしの本』(2018年2月号、宝島社)が発表した「2018年版 住みたい田舎ベストランキング」では、人口10万以上の都市のうち、北九州市が「総合部門」と「シニア世代部門」でトップになった。
2015年の国勢調査(10月1日時点)によると、全国の高齢化率は平均26.6%だった。これに対して、北九州市は29.3%。全国20の政令指定都市で、最も高い割合だ。1985年以降、全国を上回る高齢化率となっているが、市保健福祉局地域医療課長の青木穂高さんは、高い高齢化率によりむしろ、早くから高齢化対応を進められたと語る。
医療・介護の状況についてみると、北九州市は全政令市のうち、病院数で3位(90か所。順位は人口あたりの数。以下同じ。)。病院のベッド数は2位(1万9039床)、診察所数も5位(961か所)と、他の市と比較しても、手厚い医療体制を持つ。
市内24か所の地域包括支援センターをはじめとして、介護のサポート体制も整備されている。また、「認知症サポーター」に7万人以上の市民が認定(20政令市中2位)されるなど、近隣住民の知識や理解も高まりつつある。
寄り添って介護するメリットは?
とはいえ、「介護に適した土地でも、仕事と介護の両立はハードルが高いんじゃない?」と、二の足を踏む人も多いだろう。しかし、仕事と介護の両立支援の専門家である、パソナライフケアの継枝綾子さんは、Uターン後の介護には多くのメリットがあると語る。
継枝さんによれば、介護の鉄則は「早期発見、早期対策」。近距離で介護すると、早めに対策できるうえ、いざという時に「もっと早く気付いてあげればよかった」といった後悔を回避できるチャンスがある。また、介護保険を活用する上で必須となる、ケアマネジャーやサービス事業者とのコミュニケーションも迅速になる。そして、「両親と過ごせなかった『空白の時間』」を埋められることもポイントだそうだ。
もっとも、実際にUターンをするには、慎重な準備が必要だ。次の職が見つかる前に、早々と移住してしまうのは、思わぬ失敗につながりかねない。勤務先の介護休暇制度を活用しつつ、退職前に現地調査しておくのがよさそうだ。
イベントでは、北九州市U・Iターン応援オフィスの安田亜紀子さんから、介護Uターンの事例も紹介された。「セカンドキャリア支援プロジェクト」を活用して、静岡県から北九州市内の企業へ転職したYさん。Uターン時は57歳で、初めは、応援オフィスにふらりと立ち寄った。年齢もあって、転職先を探してもらえるか半信半疑だったが、アドバイスに沿って履歴書・職務経歴書を提出したところ、経験を生かした職種に就くことができた。
北九州市は今後も、東京事務所などの首都圏で、U・Iターンや移住に関するイベントを行っていく予定だ。また、同市小倉北区と東京事務所内に常設している「北九州市U・Iターン応援オフィス」でも、随時相談を受け付けている。<企画編集:Jタウンネット>