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活版印刷機&活字がスクラップの危機! 「引き継ぎたい方は...」呼びかけに希望者続出

野口 博之

野口 博之

2018.02.05 20:00
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活版印刷機と活字一式がスクラップの危機にあると、大阪市内の印刷所がツイッター上で引き継ぎを求めたところ、希望者が相次ぐほどの反響を呼んでいる。

赤茶けた古い大きな棚一面に、活字がズラリと敷き詰められて並んでいる。まるで、扉か門の古美術品のようだ。

博物館への寄贈は、時間的な制約などから難しく

この写真を2018年2月2日に投稿したのは、大阪市北区内の「なにわ活版印刷所」だ。

引き継ぎを求めている活字一式(以下、なにわ活版印刷所提供)

引き継ぎを求めている活字一式(以下、なにわ活版印刷所提供)

投稿にはほかに、ストップシリンダー式という古びた活版印刷機の写真もアップされている。印刷機は、明治時代の1905年に創業した旧河内市(現東大阪市)の鉄工所が製造したものだった。

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印刷所ではこのツイートで、「スクラップの危機です。どなたか引き継ぎたいという方はおられませんか?」などと呼びかけている。

投稿は、1万件以上もリツイートされており、その重量感に「すごいな・・・置き場所が大変だ」などと驚きの声が上がった。同時に、「活版印刷、もう、滅びゆくものなのかなぁ...」「鋳造された活字が組める状態で一式残っているのはとても貴重で、廃棄されるには惜しすぎる」「博物館とか美大とか、どこでもいいから残せないだろうか....」とその行方を心配する声も相次いでいる。

印刷所のその後の連続ツイートによると、一式は、兵庫県中東部のオーナーのところに置いてあるが、2月中旬の搬出が決まっており、引き継ぐ人が現れないとスクラップの運命になる。博物館への寄贈については、時間的な制約があって難しく、また、よほどの価値がないと断られてしまうという。さらに、引き継ぎの条件として、単なるコレクションではなく、活版印刷技能の伝承を考えていることを挙げている。ただ、戦後間もなく製造された印刷機であり、「10年ほど休眠しているものなのでメンテナンスが必要」だとしている。

数件の下見申し込みあり、まず1組と交渉

なにわ活版印刷所は、引き継ぎ価格については、「活字はお気持ち程度、印刷機は鉄スクラップ代に少し色を付けた程度」からオーナーと交渉してみてはとツイッター上で提案した。

写真投稿は、大きな反響を呼んでおり、2月5日までに、すでに数件の下見申し込みがあったことも明らかにした。そのうち最も早く下見に行けるとした1組がこの日にオーナーのところへ行く予定だという。

印刷所の大西祐一郎さんは5日夕、Jタウンネットの取材に対し、この1組目の近畿地方の印刷会社による下見が終わり、6日中にこの会社が一式を引き継ぐか否かをオーナーに返事する見込みだと答えた。

「輸送コストがかかるなど搬出にネックがありますので、業者の手当てなどを詰めているそうです。今週中には、引き継ぎ先が決まるのではないかと思っています。私が交通整理をしていますので、決まったかについてはツイッターでお知らせするつもりです」

大西さんによると、活版印刷機の製造は、東京都内で手動式の受注生産だけをしている業者しかなく、活字鋳造所も関東にはあるが関西にはないという。商業印刷としての活版印刷、特に活字組版の存続はかなり厳しいそうだ。

「この10年で見直しの動きが続いていますが、活版印刷だけではなかなかやっていけません。うちでは、普通の印刷も手がけています。活字は、1文字1文字を選んで組んでいくプロセスがあるからこそ、パソコンのキーボードで打ち込むのとは違う、できることがあります。活字を拾いながら詩集を作るといったプライベートプレスなどの支援もしており、こだわりを持って活版印刷を続けたいと思っています」
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