ミスターも参加! 「DA.YO.NE」ローカル版の歌詞を読み解く
「DA.YO.NE(だよね)」のヒットを受けて企画された、「SO.YA.NA(そやな)」などのローカル版シングル。今回、Jタウンネット編集部は、それらのレンタル落ちCDを入手し、歌詞から地域性を読み解いてみることにした。(関連記事:あの「DA.YO.NE」ローカル版が、多くのスターを輩出していた!)
北海道の「モザイク禁断」って何だ?
地元民をターゲットにしていたのか、地域性や時代といった背景知識がないと、読み解きにくいネタも多々盛り込まれている。たとえばDA.BE.SA(北海道版)では、鈴井貴之さんらが、こう歌っている。
「夜中のTV モザイク禁断 見てるかい? ほら、俺たちいっぱい出てるべさや」
注釈も何もないが、おそらく当時放送されていた深夜番組「モザイクな夜」(北海道テレビ)と、「禁断どんす」(北海道文化放送)を指しているのだろう。ちなみに、「モザイクな夜」は、後の「水曜どうでしょう」メンバーが初めて一緒に仕事をした番組だ。
ローカルタレントを起用したからか、テレビネタは各地の歌詞にある。SO.TA.I(福岡版)では、
「よなかのTV番組で自分の出産シーン まるごと見せたレポーターおるっちゃん」
と、福岡で活躍するタレントの山本華世さんを紹介。DA.GA.NE(名古屋版)では、
「夜中のCMローカル一色 出たがり社長」
と、美宝堂(2011年に事実上倒産)を意識したであろうフレーズが出てくる。
「だすぺ のは だっちゃ はんで はっ」
DA.CHA.NE(東北版)は、ネット情報によると、青森朝日放送の対馬孝之アナウンサーが作詞に参加しているとされる。しかし、歌詞カードにあるのは、「対島孝之」さん。誤植なのか、別人なのか、それともペンネームなのか。疑問は尽きない。
ローカル版の歌詞カードには、方言解説の注釈が付いているが、そこにもツッコミどころは多数存在している。たとえば、DA.CHA.NEには、こんな歌詞が。
「だすぺ のは だっちゃ はんで はっ」
まったく意味が解らないので、注を読んでみると――。
「東北特有の語尾等を並べただけのもの(特に意味はない)」
アナウンサーが作詞して、アナウンサーが歌ったDA.CHA.NE。いつも日本語に忠実であるはずなのに、いや忠実だからこそなのか、とてつもない歌詞が生まれてしまった。意味がないと胸を張られたら、なにも言い返せないじゃないか。
この20年でメジャーになった「替え玉」
HO.JA.NE(広島版)を歌うのは、名産のカキにひっかけた「OYSTER END×YU-KA」だが、歌詞中に「カキ」はない。「広島の典型的なお好み焼きの頼みかた」として「肉玉ダブル」が出てくるのだが、そこは事実でなくてもカキをトッピングして欲しかった。
また、方言というより新語な気がするDA.GA.NEの「ジモピー(地元ピープル)」や、いまでは全国区になった博多ラーメンの「替え玉」(SO.TA.I)も、時代を感じさせる注釈だ。
これらの楽曲が出た1995年は、阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きた年。Windows95の発売で、インターネットの普及が始まり、スマホ社会になった。娯楽も細分化され、かつてほどローカルネタで盛り上がることも減った気がする。
本家の「DA.YO.NE」(94年発売)に、こんな一節がある。
「佐々木って24だよなー えっ25だよ」
ここで歌われた「佐々木」こと、RHYMESTER宇多丸さんは今年48歳になる。多感な20代がアラフィフになるほどの時間が流れた。人々の記憶が薄れるなかで、「90年代中期のローカルエンタメ文化」を読み解く材料として、これらのシングルは貴重な存在ではないだろうか。