芸術と猥褻入り乱れる「現代の奇祭」ムサビの芸術祭に潜入してきた
二宮敦人著『最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―』(新潮社、2016年)という本が話題となっているが、芸術家というのは往々にして奇異な存在だ。そんな芸術家が巣くう芸術系の大学は一風変わっているに違いない。
そこでJタウンネット編集部は、2016年10月29日~31日の3日間開催された、「おもしろい」と話題の武蔵野美術大学(通称:ムサビ)の芸術祭を訪ねることにした。
ムサビの芸術祭は昨年、3日間で約4万人の来場者を動員し、「Let's Enjoy TOKYO 学園祭グランプリ2015」の第2位にも選ばれた人気の学校祭だ。
芸術祭では毎年テーマを設け、大学全体で世界観を作り上げる。今年のテーマは、妖怪たちが宴を開く「まうかくし」(MAU(Musashino Art University)と神かくしを掛けた造語)。さまざまな妖怪たちが客を出迎える。
コンセプトやデザインも学生が手掛け、構内のあちこちに配置された完成度の高い装飾は圧巻。初めて訪れる人は入り口から「すごい!」の言葉が止まらない。
構内にはアート作品の展示だけでなく、模擬店、イベント、雑貨やフリーマーケットなどの物販など企画が盛りだくさん。その全て見るのは不可能なので、ネットでも特に話題の「元祖ゲイバー」と「男神輿・女神輿」に狙いを定めることにした。
きれいなオネエサンがお・も・て・な・し
50年の歴史と伝統を誇る「♡芸術祭の華♡」である「元祖ゲイバー」。「一丁目」と呼ばれる酒類販売エリアにド派手なピンク色のお店を構え、ひときわ異彩を放つ。
開店前から行列ができるほどの人気で、ラグビー部の部員たち扮するオネエサンたちがお客さんをおもてなしする。きらびやか着飾ったオネエサンたちは、ゲテモノから完成度の高い美女まで勢ぞろい。
オネエサンたちは客に「どブス!」と罵声を浴びせたり、キスしたりと好き放題。狭い店内は常時すし詰め状態で大繁盛だ。
そんな彼女たちの一番のおもてなしが、スペシャルドリンクの注文が入った時に披露するポールダンス(?)。お店を支える骨組みに飛び乗り、歌に合わせてさまざまなサービスショットを連発する。
最後には
「あんたら1杯でいつまでいるつもり!?外にブスどもが行列作ってんだから早くどきなさいよ!!」
と罵られ、お店を追い出される。
見よ!これが公開○○○だ!
もう一つの見どころといえば、彫刻学科の学生による「神輿」。神輿にはそれぞれ男神輿と女神輿があり、♂と♀のシンボルをかたどっている。毎年モデルチェンジするが、基本のコンセプトは変わらない。男神輿にはモデルがいるとかいないとか。
3日間神輿を担いで構内を練り歩き、男は「エンヤコラセ」、女は「武蔵野音頭」という唄を歌って観る者を魅了する。
最終日には「ご結合」の儀式もあり、大変な賑わいを見せる。
女神輿は狐の仮面の下にモノが隠れており、儀式のときにだけ顔を出す。今年はおっぱいに囲まれたデザインなんだそう。
皆が熱い視線で見守る中、いよいよその時が。
今年は女性陣の「支度」に時間がかかったり、男性陣が「慣れ」ていなかったりと、少々時間を要したが、なんとか無事にご結合。飛び出す仕掛けなど、それはそれは見事なものだった。
芸術は爆発だ
美大の芸術祭なので、もちろん作品の展示も行われている。未来の有名芸術家の作品を見られるめったにないチャンスだ。
また「ライブペイント」では即興で作品を創作し、目の前でだんだんと仕上がっていく作品を見ることができる。およそ2時間後には細部が描き込まれ、完成に近づく様子を見学するのは実に興味深い。
芸術家の卵たちが作った雑貨やアクセサリーも売られている。
芸術祭はほかにも見どころ満載で、いずれも素晴らしく、筆舌に尽くし難い。時間の都合上断念せざるを得なかったが、パレードや舞台、プロジェクションマッピングなども「さすが美大生」と思わせるクオリティの高さだ。食品類も安くておいしいと評判。無造作に張られたポスターさえ美しい。
数時間じゃとても回りきれないほど見どころ満載のムサビの芸術祭。来年是非行ってみては。