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霧島酒造、そのテクノロジーとアナログなこだわり 1日300トンのサツマイモが、焼酎に変わるまで【後編】

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.10.15 06:00
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大量のふかし芋がベルトコンベアで運ばれる
大量のふかし芋がベルトコンベアで運ばれる

霧島酒造の本社増設工場をレポートする機会を得たJタウンネット編集部。前編では、焼酎業界を一変させたともいわれる霧島酒造の紹介をはじめ、黒霧島の製造過程を「米」に注目してお届けした。

人気No.1焼酎「黒霧島」はこうして作られる! 都城市にそびえる巨大ハイテク工場を徹底取材【前編】

後編では、芋焼酎製造の決め手となる「サツマイモ」に着目しながら、完成までの工程を追っていきたい。

南九州の2200戸以上の農家と提携、地元産のイモにこだわる

霧島酒造の手掛ける芋焼酎の主原料となるのは、地元・南九州産のサツマイモ「黄金千貫」。その使用量は、4つの工場全て合わせて、1日あたりおよそ300トン以上にも達する。記者が訪れた本社工場では、イモを搬入するトラックで渋滞が起こることも珍しくないという。

シーズン中は、ひっきりなしに芋が搬入される
シーズン中は、ひっきりなしに芋が搬入される

とにかく大量のイモを使用する焼酎づくり。だが、霧島酒造が使用する黄金千貫は、全て地元・南九州のものにこだわっている。一見、不可能とも思えるそのこだわりの裏には、地元農家との密接な関係性があった。ここで一度、製造工場から「黄金千貫」に話をうつしたい。

霧島酒造は、地元・宮崎をはじめ南九州の2200戸以上の農家と提携することで、地元産のイモを大量に仕入れることを可能にしている。さらに、同社は地元での黄金千貫の生産を後押しするため、農家から出た単価上昇の要望を受け入れたこともあるそうだ。

そういった背景もあり、実際に黄金千貫の栽培を行う地元の農家は「ほかの農家からはよく、『霧島さんの黄金千貫に転作したい』という声が聞かれますよ」と笑いながら語る。

芋焼酎が、地元の農業を支えているともいえる
芋焼酎が、地元の農業を支えているともいえる
これが、掘りたての黄金千貫
これが、掘りたての黄金千貫
霧島連山のふもとにひろがる、黄金千貫の畑
霧島連山のふもとにひろがる、黄金千貫の畑

工員の半分以上が、イモの選別業務に携わる理由

さて、再び「黒霧島」の製造工場に話を戻そう。地元で生産された大量のイモは、都城にある4つの工場へそれぞれ搬入される。自動洗浄機で洗われたイモは、人の手によって選別される。実を均一に蒸すために、あまりに大き過ぎるものは人力で切り分ける。

大量のイモが、自動で洗浄される
大量のイモが、自動で洗浄される
1ラインあたり8人のチェック体制を敷いている
1ラインあたり8人のチェック体制を敷いている

実は、工場で働く人員の半数以上がこの「選別・カット」の工程に割かれている。不良のイモが少しでも混ざると、焼酎の質に大きな悪影響を与えてしまうため、機械ではなく人力で念入りなチェックを重ねるのだそうだ。

選別・カットを終えた芋は、連続芋蒸器で芯温が91度になるように蒸し上げられる。大量の蒸しイモが、ベルトコンベアで運ばれてくる様子は壮観だ。

ふかし芋のいい香りが漂う
ふかし芋のいい香りが漂う
コンベア上には、約5トンもの芋が
コンベア上には、約5トンもの芋が

蒸しイモは、前編で製造過程を紹介した「モロミ」(米麹を5日間培養したもの)に仕込み水とともに投入され、二次仕込みの工程に入る。ここでは、約8日間の培養の中でデンプンの糖化とアルコール発酵が盛んに行われる。その影響か、辺りには芋焼酎の強い香りが充満している。

酔ってしまいそうなほど強烈な焼酎の香り
酔ってしまいそうなほど強烈な焼酎の香り
一次仕込みよりも、発酵の様子はゆるやか
一次仕込みよりも、発酵の様子はゆるやか
黄色い泡が大量に
黄色い泡が大量に

ついに、あの黒霧島が完成

二次仕込みを終えて完成したモロミを蒸留器に移し、蒸気を吹き込みながら撹拌すると、アルコールと水が蒸発する。これを冷まして集めた液体が、焼酎の原酒となる。完成した原酒を3か月程度熟成することで、落ち着いた丸みのある味わいに変化させてから使用するという。

縦型の蒸留器
縦型の蒸留器
屋外にある貯蔵タンク、1基あたり20トンもの原酒が熟成されている
屋外にある貯蔵タンク、1基あたり20トンもの原酒が熟成されている

ここまでの工程を経て完成した原酒を、ブレンダーと呼ばれる専門家が味や香りを厳しくチェックする。頂いた資料によれば、その審査には全42項目にも及ぶ評価基準が存在している。このように、細かい味の調整を徹底することで、既成品の味を長年守り続けているそうだ。

ついに、お馴染みの黒霧島が完成(chabin040さん撮影、flickrより)
黒霧島

最後に、仕込み水としても使用した「霧島裂罅水」で原酒を割ることで、我々がいつも親しんでいるあの「黒霧島」がついに完成となる。

ちなみに、工場の内部にはアルコールの香りが強い場所が多々あった。「ここでは、下戸の人間は働けないのでは?」と職員に尋ねてみると、

「ウチの製造部しかり、みやこんじょ(編注・都城の人を指す方言)しかり、そんなにヤワではないですよ」

と笑いながら語ってくれた。もちろん、同社製造部では下戸の人も採用しているそうだ。

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