静岡VS浜松! 県内No.1都市はどちらか、6つの要素で比べてみた
静岡市と浜松市は様々な点で並び立つ存在だ。静岡は駿河の中心で、浜松は遠江の中心。両市の中心地は約78キロ離れていて、しかもその間には大井川と天竜川という2つの大河が横たわっている。
そんな地理的背景もあってか人的交流はあまり盛んではない。しかも住民の気質は微妙に異なる。ケンカするような仲ではないけれど、同じ県民として一枚岩かというと疑問符がつく。県都への一極集中が止まらない宮城、高知、鹿児島からすれば、人口や経済力の分散はむしろ理想的というべきかもしれないが――。
今回の対決シリーズは、お茶の県の2大勢力、静岡と浜松を比較する。
グルメが充実しているのは?
驚くのは両市とも面積が広大なこと。どちらも名古屋市の4倍以上あり、浜松に至っては香川県の約84%に相当する。
広い分だけ海の幸と山の幸には恵まれている。
静岡市の名物グルメは、茶をはじめ、おでん、黒ハンペン、桜えびなど様々ある。わさびは栽培面積、マグロは水揚げ量でそれぞれ日本一。意外なほど海産物に恵まれているのは、2003年に旧清水市と合併したおかげだ。
一方の浜松も負けてはいない。うなぎ、餃子(ぎょうざ)、三ヶ日みかん、シラス、トラフグなど、誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
甲乙つけがたいところだが、日本一が複数ある静岡の優位は揺るがない。グルメ対決は静岡の勝ち。
基礎データが優秀なのは?
次に基礎データを比較してみよう。
住民1人当たりで比較すると、静岡の豊かさが浮き彫りになってくる。地方税収額・所得、財政力指数、昼夜人口比率、完全失業率で上。
浜松が優位なのは病院・診療数だ。「浜松方式」と呼ばれる救急システムがあり、1次救急から3次救急まできめ細やかに対応できる体制が整っている。県西部の病床数は静岡を上回る。その中心に位置する浜松医科大学と附属病院は、1970年代に熱心な誘致活動によって設立された。
老年人口比率の低さや1世帯当たりの乗用車保有台数の多さも浜松が上だが、それ以外の項目は負けている。
基礎データ勝負も静岡の方が優秀。
「都会の象徴」高層ビルが目立つのは?
名古屋は長年「大きな田舎」と言われ続けた。そうした陰口が聞かれなくなったのは、超高層ビルが建ち始めてからだ。
静岡県で一番のノッポビルは、1994年に竣工したアクトシティ浜松。外観はハーモニカをモチーフにしており、高さは約212メートルある。完成当時、これを超える構造物は名古屋にすらなかった。
県内で2番目に高いビルは、静岡にある葵タワーだ。しかしその高さは約125メートルにとどまっている。
以下、3位が「D'グラフォート浜松 D'sタワー」(浜松)が高さ約116メートル、4位が「シティタワー浜松」(浜松)が約113メートル、5位が「サウスポット静岡」(静岡)が約110メートルと続く。
実は100メートル前後のビルが静岡市内に続々建っており、高層ビルの数でいえば両市はいい勝負だ。
それでも静岡県にとってアクトシティ浜松はシンボル存在で、竣工から20年経過した現在も県内一を守り続けているのは立派。
高層ビル対決は浜松の勝利としたい。
繁華街が賑わっているのは?
東海道新幹線の「のぞみ」が停まらない静岡と浜松。市中心部の繁栄は名古屋に到底およばず、とくに浜松の衰退は目を覆うばかりだ。
下の表は両市の大型商業施設を比較したもの。
浜松は大型ショッピングモール、とくにイオンの攻勢が目立つ。駅前で頑張っているのは遠鉄百貨店くらいで、松菱や西武、イトーヨ―カ堂、丸井はすでに撤退または破たんしている。
一方の静岡は、地元が郊外の出店を強固に拒んできたため商店街がまだ残っている。
静岡鉄道のターミナルビルとして2011年10月にオープンした新静岡セノバは、オシャレなセレクトショップが入るファッションビル。すぐ近くにある109や丸井とともに、若者を街に惹きつける。
東静岡駅そばに2013年オープンした「MARK IS 静岡」は、三菱地所が運営する市内最大のショッピングセンターで、鉄道でも車でもアクセスしやすいロケーションとなっている。
中心部の商店街=善、郊外のショッピングモール=悪というつもりはないけれど、先の年間商品販売額を見ても、静岡の方が買物客を引き付けている。
家康指数が高いのは?
2015年は徳川家康が亡くなってから400年の節目にあたる。「生誕の岡崎、出世の浜松、大御所の静岡」と銘打ち、様々なイベントを両市で開催している。その力の入れようは、まるで家康公への愛を競っているかのよう。
浜松の公式マスコットは、家康公の生まれ変わりを名乗る出世大名家康くん。彼の口癖は「浜松は日本一よいとこじゃ」。天下人としての貫録よりも必死さが目立つけれど、その努力は誰もが認めるところ。
一方の静岡も負けてはいない。家康公が隠居の地として選んだ駿府城は、江戸城をしのぐ規模の天守が建っていたといわれる。観光のランドマークとしたい市は天守再建を目指していて、天守台の発掘調査に動き出している。
もし静岡市中心部に日本一に天守が完成すれば、日本はおろか世界中から観光客が集まるかもしれない。
この対決もいい勝負だが、静岡にはキラーコンテンツがある。家康公の死後、最初に葬られた久能山東照宮があることだ。遺命でここに葬られたということは......やっぱり静岡で眠りたかったのだろう。その後日光東照宮に改葬されるも、分骨されただけで遺体の一部は残っているという説もある。
家康くんの必死のアピールも捨てがたいが、終焉の地だった静岡に軍配をあげたい。
有名企業と芸能人を多く輩出しているのは?
最後に。両市に拠点を置く企業と地元出身の有名人を比較した。電子楽器メーカーのローランドは大阪発祥だが、スズキ、本田技研工業、ヤマハは浜松の生んだ企業だ。
静岡の企業は地域のインフラを支える重要な役割を担っているけれど、世界に通ずるネームバリューという点では浜松の方が上だろう。同じことは有名人にも当てはまる。
主要事業所・有名人対決は浜松の勝ち。
静岡の盟主にはなれない浜松だが...ゆるキャラの天下取りは!?
以上、名物グルメ、基礎データ、高層ビル、繁華街のにぎわい、徳川家康指数の高さ、主要事業所・有名人の6つで比較した結果、4対2で静岡が勝利した。人口の多い浜松が優勢と思われたが、静岡が県都としての意地を見せた。
浜松の製造業がもう少し元気だったら、この結果は逆転していたかもしれない。今年のゆるキャラグランプリで、家康くんが最多得票を獲得して優勝すれば、市民は大いに発奮することだろう。
9月の中間発表では愛媛の「みきゃん」に次ぐ2位につけている。差はわずかで、逆転は十分可能だ。なにより地元開催のアドバンテージは大きい。
11月21~23日、浜松市西区の「渚園(なぎさえん)」が最終決戦の場となる。悲願の優勝を達成し、その名を天下に知らしめることができるか――。