荷物置くなら「網棚」?「床」?→日本人の多数派はこっちだ!
電車内で天井と座席の間に設置されている網棚は、国内を走る鉄道車両のほとんどに設置されているが、不要論を唱える人が最近増えている。
「忘れ物を増やす元凶だ」
「汚れのついた荷物を自分の頭上に載せられるのは不快」
「車両の振動で荷物が落ちてきたらどうするの」
「身長が低いので網棚に荷物が載せられない」
札幌の地下鉄は開業時からずっと網棚が設けられていない。乗車時間が短いことと、忘れ物防止のためといわれている。
他都市の地下鉄や大手私鉄、JRに乗ってみると、車内に網棚が設置されていても利用する人が明らかに減っていて、代わって床に置く人が増えている。
あなたは網棚に置く派か、それとも床に置く派か――。Jタウンネットでは2015年6月11日から8月17日にかけて、「電車内で立っているとき、手に持ちきれない荷物は床に置く?網棚に置く?」というテーマでアンケートを実施し、全国の読者493名に投票いただいた。
19都道県で「床派」が50%を超える
床派=網棚を使わない人の割合は予想以上に多かった。全国の結果を見ると、「床に置く」と答えた人が51.3%いた。一方、「網棚に置く」と答えた人は34.5%にとどまった。
警視庁の「遺失物取扱状況」を見ると、拾得件数は年々右肩上がりの傾向にある。スマホやタブレット端末の普及で、車内でメールやLINE、ウェブ閲覧、ゲームに夢中になる人は増えている。気が散りやすいシチュエーションだからこそ、荷物を体の近くに置いておきたいのかもしれない。
雨が多い→荷物が濡れやすい→座っている人の迷惑にならないよう網棚の利用は控える、という傾向がないか考察したが、全国の1年間の降水量と、上の床派マップとの関連性は認められなかった。
「その他」が14.2%いたことも注目される。バッグの形状は多様化し、今年は「でかリュック女子」なる言葉が流行った。リュックを背中に背負ったり、ショルダーバッグを肩に引っかけたり、体の前で抱えたり――いろんなスタイルで持っていると推察される。
神奈川を走る鉄道は網棚利用を推奨?
次に地方の傾向はどうなっているか。人口の多い県を比較したのが下の横棒グラフだ。
大票田の東京は全国平均に近い。が、そのお隣の神奈川は網棚の得票率が50%もある。さらに「その他」の特区票率は3.8%しかいない。
東京と神奈川を結ぶ路線は軒並み混雑率が高い。東急田園都市線・東横線、小田急小田原線、JR横須賀線・東海道線......。これらの沿線では現在も住宅開発が進んでいる。朝夕のラッシュは相変わらずで、床に荷物を置く余裕はあまりない。
例えば小田急は、2015年4月に以下のマナーポスターを駅貼りした。
また東急電鉄の比較的新しい車両は、高齢者や障がい者が利用しやすいよう、つり革や網棚の位置を下げたり、金網から板状に変更したりしている。こうした環境が網棚の利用率を高めている可能性がある。
東京の通勤・通学圏である埼玉と千葉。神奈川と似たような結果になってもおかしくないところ、両県とも「その他」の得票率が20%を超えた。なぜこのような差が生じたのか、理由を探ったが分からなかった。
愛知は「網棚がなかった東山線」の影響?
異なる結果だったのが愛知だ。「床」の得票率が高く、「網棚」の得票率は低い。
東京圏と比べ名古屋圏は平均通学・通勤時間が短く、車内は空いている。「すぐ降りるので、いちいち網棚に荷物を載せない」と考えられる。
ちなみに、名古屋一の混雑路線・市営地下鉄東山線の旧車両は網棚がほとんどなかった。網棚を使わないことに慣れている名古屋市民が多いのかもしれない。
大阪と京都は似たような結果で、東京と神奈川の中間といったところ。兵庫は両府と異なり、埼玉と千葉のパターンに近い。
三大圏以外は都市によって傾向が異なる
名古屋と大阪よりも都市圏の狭い宮城(仙台)・広島・福岡はどのような結果だったか。
仙台が県都の宮城は、東京と傾向がよく似ている。
広島は他都市と傾向が異なっていて、「網棚」に投票した人は20%に満たない。そして「その他」が33.3%もいる。県都・広島市民の足は路面電車。そのことが影響しているのだろうか。
福岡は北海道に次いで「床」の割合が高く、一方で「網棚」もそれなりにいる。床派が多いのは、福岡市に学生が多いからとも考えられるが、学生の割合がさらに高い京都は、床派の割合が全国平均よりも若干低かった(参照:札幌・京都・福岡の人間は、地元が「東京と大阪の次にエラい」と思っている!?)