「牛丼なら吉野家派」はなんと全国の××%! 予想を超える圧倒的人気とその地域差は?
ハンバーガーがアメリカを代表するファーストフードなら、牛丼は日本人が創作したファーストフードだ。
すき家、吉野家、松屋、なか卯、東京チカラめし、神戸らんぷ亭の店舗数合計は、2015年5月13日現在で4709に達する。2003年は約2100だったことを考えると、驚異的な増え方だ。
店舗数トップの「すき家」は人気で吉野家に及ばず
2000年代半ばまで業界No.1の店舗数を誇っていたのは吉野家だった。ところが2004年に大事件が起きる。BSE問題が発生し、米国産牛肉の輸入禁止措置が取られたのだ。牛丼チェーン各社は牛丼の販売休止を余儀なくされる。
豪州産に切り替えたすき家はいち早く販売を再開し、低価格と安全性をアピール。猛烈な出店作戦を展開して、業界1位の座を奪取した。
しかし牛丼ファンの吉野家信仰はあついものがある。
Jタウンネットが実施したアンケート「あなたが好きな『牛丼屋』はどこ?」で、得票率53.7%を獲得して1位に輝いたのは吉野家だった。
すき家は得票率20.2%で2位、以下、松屋が16.9%、なか卯が6.0%と続く。
吉野家の歴史は古く、1899年に日本橋で創業した。関東大震災後に築地市場の場内へ移転する。築地のプロに鍛えられた味は、業界のスタンダードとして一目置かれている。
上の図に掲載した2つの円グラフは、右側が全国の投票結果を集計したもので、左側が牛丼チェーンの店舗数を示している。
すき家は45道府県で店舗数1位に輝くが、「人気」で単独1位だったのは愛媛と佐賀の2県のみ。同率の滋賀と宮崎を加えても、天下を取ったのは4県に留まる。
松屋は富山で単独1位だったほか、三重、島根、香川で同率トップ。
なか卯は新潟と山形、島根でNo.1の支持を集めた(同率含む)。
これらを除く37都道府県では吉野家が単独首位で、その人気は地域を問わず、全国的なものと言っていい。
松屋は東京と埼玉で健闘
今度は都道府県別の傾向を見てみよう。
まずは人口上位の県から。「Jタウンネット読者得票率」と「店舗数」の2つを横棒グラフで比較できるようにした。
東京・神奈川・大阪の吉野家得票率はほとんど変わらないが、神奈川だけ「すき家」の得票率が27.5%とやや高い。
すき家1号店は、1982年に横浜市鶴見区生麦で開業した。生麦はキリンビール横浜工場などがある労働者の街だが、すき家は郊外やショッピングセンターに積極的に出店する。テーブル席を設けたり、トッピングやサイドメニューを組み合わせることができるようにしたり、牛丼屋のイメージを変えた。
もっとも、神奈川同様に若い子育て世帯の多い埼玉で「すき家」の人気は振るわない。代わりに松屋が健闘している。
牛丼だけでなく定食メニューが豊富な松屋は、1966年に練馬区江古田で開業した。創業者は熱烈な吉野家好き。その味を研究して、1968年に焼肉定食店に路線変更する。
江古田は西武池袋線の駅があり、日本大学芸術学部は目の前だ。学生の熱い支持のもと、東京や埼玉、そして全国に展開していった。
埼玉でもう一つ目立つのは、東京チカラめしの得票率が7.3%だったこと。1号店は2011年、池袋西口にオープンした。「煮る」ではなく「焼く」牛肉を用いた丼料理は、東京の牛丼シーンを席巻した。そのブームの火付け役は、池袋に遊びに来た埼玉県民だったということか。
東京チカラめしは1年余りで100店舗を達成したものの、栄光は長く続かなかった。現在ネット上で確認できる店舗数は15となっている。
店舗数と支持はイコールではない!
次に、すき家の店舗数が比較的少ない県と、圧倒的店舗数の県をそれぞれ取り上げた。
宮城は全国で唯一、吉野家の店舗数が単独1位の県だ。得票率も比例して高く、76.9%に達する。
すき家と吉野家が店舗同数の奈良は、投票先が比較的分散している。東京チカラめしの人気も健在だ。
茨城・新潟・静岡・広島の4県は、すき家が吉野家を店舗数で圧倒している。
それにもかかわらず、人気面では正反対の結果となっている。とくに新潟の傾向は変わっていて、「すき家」得票率が10%を割り込む一方で、「なか卯」が得票率43.8%で人気1位となった。県内に「なか卯」は2店舗しかなく、立地が飛び抜けていいわけでもない。料理のテイストが新潟県民の舌にマッチしているのか、店員のサービスが優秀なのか、ライバルが評判を落としまくっているのか――。理由は解明できなかった。
なか卯は大阪発のチェーンで、もともとは建築系の会社だった。1969年に飲食業をはじめたが、1号店はうどん店。「丼ぶりと京風うどんのなか卯」を名乗っているのはそうした理由からだ。
牛丼メニューが加わったのは1974年の「なか卯梅田店」から。モスフードサービス(モスバーガー)と資本業務提携して全国展開を進めたが、商社の子会社を経て、現在はゼンショーの傘下に入っている。
牛丼系メニューは「和風牛丼」とそのセットメニューのみ。もはや牛丼屋とは言えないという指摘もあるが、京都では吉野家の55.0%に次ぐ40.0%の支持があった。