【旅先いい話】「生活に疲れて北海道一人旅。行きの飛行機で出会ったのは...」(大阪府・40代女性)
「辛いことがあると、旅に出たくなる」という人も多いだろう。普段とは違う景色、食、そして、思わぬ人との出会いが、日常に疲れた心を癒してくれる。
今回紹介したいのは、大阪府のBさん(40代・専業主婦)から寄せられた北海道旅行の思い出だ。
日帰りで出かけた北海道
当時務めていた職場や、家庭でのさまざまなトラブルに疲れて、現実から逃げだすようにして一人旅に出かけた時の話です。
毎日のストレスにすっかり心身をすり減らしていた私は、「できるだけ遠くに行きたい」と、北海道への飛行機チケットを取りました。リフレッシュのため数日は向こうで過ごすつもりだったのですが、出発直前にどうしても断れない知人のお葬式の予定が入ってしまい、結局日帰り旅行に。
普通なら旅行自体をキャンセルするところですが、追い詰められた精神状態だったこともあり、とにかく出かけることを優先して、朝一番のフライトで札幌へ向かい、夕方には帰るという強行軍を決断しました。滞在時間はせいぜい4~5時間。
隣の席の女性が声をかけてくれて
旅行に出かけようと思った理由が理由ですし、その上こんなアクシデントまで起こったものですから、旅立ちの時点で心はすっかりブルーでした。
「旅行ですか?」
そんな私に声をかけてくれたのは、隣の席の女性です。年は同じくらい。札幌に住んでいて、今は帰り道なのだそうです。聞かれるままに、ちょっと事情があって日帰り旅行になってしまったことを話すと、
「じゃあ札幌の町を案内しますよ、そのほうが時間の節約でしょう?」
驚きましたし、遠慮もしましたが、私自身札幌は初めてで、忙しさもあってほとんど下調べもできていなかったこともあり、結局はお言葉に甘えることにしました。
日ごろのイライラが消えていく
札幌に着くと、彼女は陽気に話をしながら、街を案内してくれました。
有名な観光地ももちろんですが、地元に住んでいるだけあって、教えてくれたお店はどこも美味しいところばかり。本場の札幌ラーメン、お寿司、どっちも大満足の味です。
そして何より、その明るい語り口は、ストレスに固く凍りついていた私の心を、ゆっくりと溶かしてくれました。札幌の街を歩くうち、日ごろのイライラが消えていくことを、はっきりと感じたのです。
楽しい時間はあっという間に終わり、別れ際、お礼を言うとともに、どうして、見知らぬ私にここまで親切にしてくれたのかを尋ねました。その答えは、
「あなたがとても悲しそうな顔をしていたから」
旅に出た理由は彼女に何も話していませんでした。なのに、私の心を察してくれた優しさに、私はただ感謝の言葉を繰り返すほかありませんでした。
たった5時間足らずの北海道旅行。一番の出会いはラーメンでもお寿司でもなく、彼女の親切でした。