降りるなキケン? 東京一「何もない駅」市場前駅に行ってみた
秘境駅。人里離れた土地にぽつんと残る、忘れられた駅。訪れる人もほとんどない、孤独な駅――。
ところが首都・東京のど真ん中にも、「駅周辺に何もない」「利用者もゼロに近い」いわば「都会の秘境駅」と呼ぶべき駅が存在する。Jタウン探検隊がその実態に迫った。
乗降者数は23区内ワースト
眩しいほどに空の青い、春風が吹きさらす3月の日である。
発展著しい「お台場エリア」への玄関口・豊洲から、筆者はゆりかもめに乗り込んだ。
電車に揺られること――わずかに3分。
到着したのは今回の取材対象である、市場前駅だ。
1日あたりの平均乗降者数は、わずかに50人強に過ぎない(2012年)。すぐ隣の有明テニスの森駅(ここも大概何もない)が1000人強ということを考えれば、その異常さがわかる。当然23区内では当然最も少ない。
実際、筆者が訪れた日も、いるのは工事関係者らしき人たちと、間違って降りてしまったらしい中国人親子(文句を言いながらまた乗り直していた)だけだった。
広告すら貼っていない!
駅内部の造り自体は、他のゆりかもめ駅と変わらない。2006年開業とあって、まだ建物も真新しく、「秘境駅」というイメージとは一見程遠い。
だが降り立ってすぐ、筆者は違和感に気付いた。そう、この駅......広告ポスターの類がほとんど掲示されていない!
数少ない掲示物は、全駅共通で貼られていると思われる運営会社からのお知らせや、指名手配のビラくらい。あとはさかなクンが写ったイベントチラシが、なぜか1枚だけある。
もちろん、当然のごとく無人駅だ。
ひたすら広がる工事現場...
さて、駅前である。いや、ここを駅前と言っていいのかどうか、正直よくわからない。
そこにあるのは、車が高速で行き交う未完成の「環二通り」を始めとする道路群、ひたすらに広がる工事現場だけだ。
現場には、骨組みも露わな巨大な建築物、恐竜のような重機がそびえたつ。
コンビニはない。スタバもない。普通なら「駅前」にあるはずのものは、何もない。
なにしろ、駅周辺で何か物が買える場所は、「エキナカ」の自動販売機ただ1つしかない。昼食を食べないまま来てしまった探検隊(1名)は、危うく遭難しかかった。チャレンジしたい人は、事前に自販機で物資を補給しよう。
全天球カメラで、市場前駅周辺を撮影してみた
あまりにも何もなさ過ぎて、その光景を文章で表現するのがなかなか難しい。そこで、360度撮影が可能な全天球カメラ「RICOH THETA m15」で駅周辺を撮ってみた。
おわかりいただけただろうか......。
「秘境駅」なのもあと2年足らず?
さて、「市場前」の名前からもわかるとおり、この駅は築地から移転する卸売市場=「豊洲新市場」への玄関口となるべく作られた。
ところが2001年の移転決定後も反対論がくすぶり続けたせいで、最短2012年度予定だった開場は先延ばしに。結果として開業以来10年近くにわたって、市場前駅は「何もない」状態が続いたわけだ。
とはいえ2016年11月には、ようやくこの地に新市場が誕生する予定だ。「都会の秘境駅」を見られるのも、あと2年足らず。「未完成の東京」を覗ける、なかなか見られない景色なので、ぜひ1度訪れてみては。