ふるさと納税が「ECサイト感覚」で行える未来 【さとふる担当者インタビュー(2)】
ソフトバンクが開始したふるさと納税ポータルサイト「さとふる」。その特徴を尋ねた筆者に、高松さんが強調したのは「簡単」というキーワードだった。まずはハードルを下げること。それがふるさと納税の発展には不可欠だという。
【さとふる・事業推進部部長の高松俊和さんインタビュー、第1回はこちら】
「旗振り役」がいないと進まないふるさと納税
――他のふるさと納税系サービスと比べ、さとふるにはどのような強みがありますか。
まず「使いやすい」サービスというところです。
具体的には、多くの自治体では申し込んでからお礼品が届くまで、1~2か月ほどかかるのですが、さとふるではお礼品の生産者・事業者と直接連携しておりますので、1週間~10日で届けられます。また発送を知らせるメールや、確定申告の時に役立つ寄付履歴など、「かゆいところに手が届く」利便性を追求しています。
目指したのは――まだ実現していませんが――AmazonやYahoo!ショッピングといった、「一般的なECサイト並み」の利便性です。まずは「簡単」にすること。ECサイトで買い物するくらいの感覚で気軽に寄付できるようにすることで、ふるさと納税という制度と文化を推進したいと思っています。
――寄付者側ではなく、自治体の観点からはいかがですか。
まず、ふるさと納税の厄介なところが、「お礼品を考えるのは企画課」「財務処理するのは税務課」「入金管理するのは財務課」「PRは観光広報課」......といった具合に、いろんな部門に業務がわたるところです。強力な旗振り役がいないと、なかなか推進できません。
また費用の面ですが、内製でシステム構築をされた自治体の中には、数千万円かかったところもある、という話も聞いています。
在庫管理が間に合わず、首長が謝罪する事例も...
――自治体にとってもハードルが高いわけですね。となると、「簡単」にふるさと納税に取り組める仕組みが必要、ということでしょうか。
その通りです。
さとふるではそういった面倒なことをすべて引き受けます。また「申し込み受け付けだけを代行する」ような競合他社では、在庫状況などを無視して申し込みを受け付けてしまい、結果首長が謝罪するという事態に発展するケースも起きていますが、当社は在庫の管理や生産者・事業者との調整もやりますので、そういうことも回避できます。
また我々は寄付金のうち一定比率をいわば「成功報酬」として受け取るだけで、他の月額料金などはいただきません。仮に寄付が集まらなくても自治体に損はない、リスクは当社の方で背負う、というのが、1つのキモとなっています。
「通販なんかやったことない」事業者とどう連携するか
――サービス立ち上げに当たって苦労された、工夫された部分はありますか。
たとえばお礼品の注文、配送です。
ECサイトで通販経験があるような大きなところを相手にしていれば別ですが、地域活性化のためには、地元の小さな事業者からお礼品を集めないと意味がない。しかし、そうした事業者には、PCも持っていないようなところもあります。だからこそ最初に、できるだけ簡単に受発注ができる仕組みや、日々の在庫確認の方法を作らなければならなかった。そこが極めて大変でした。
なので伝票や運送業者もこちらで手配して、事業者には「明日×個取りに行きますから、倉庫に置いておいてください」とだけ伝える形を取りました。これなら事業者の日々のオペレーションと変わらない、新しい仕事は増えないので、相手も乗りやすい。また個人情報流出のリスクも減ります。
こうした工夫で、小さな事業者でもECサイトに近いことができる仕組みを実現しました。とはいえ目標に掲げた「一般的なECサイト並みのサービスレベル」という点では、まだまだの部分も多いですが......。
【第3回/このままでは、ふるさと納税は「ブーム」で終わる?】