「艦これ」と、深刻化する「空き家問題」の見えないつながり
海軍の町として栄えたことが、空き家増加の遠因に
その背景には、「海軍の町」として繁栄した呉ならではの事情があるようだ。
港町で元々平地が少ない呉だが、戦前には海軍関係の施設が次々と置かれ、関係者が多く暮らした。人口は40万人に達し、当時の広島市に匹敵する「大都市」だった。
上記のような土地不足から、住宅は山や坂など斜面地に建てざるを得なかった。そして人口が減ってみれば、不便な場所にあるこれらの住宅は、戦後に設けられた団地などとともに、その多くが「空き地」化してしまったのだ。
こうした状況を改善するため、呉市では2014年1月から、「空き家等の適正管理に関する条例」を施行している。所有者に空き家の「適正管理」を呼びかけるとともに、市が改善のための勧告、また命令などを行うことを定めた。
とはいえ、所有者にしてみても、資金がなければ解体しようにもできないというのは前述のとおり。今回のローンは、こうしたニーズに応えたものだ。
最近では「艦これ」ブームもあり、改めて呉を含めた各地の「海軍の町」への注目が集まっている。艦これと空き家ローン。一見まったく関係ない2つの社会現象が、どこかでつながっている――呉信用金庫の取り組みには、そんな不思議を考えさせられる。