トマソン第1号「四谷の純粋階段」は今どうなっているのか
何のためにあるのかわからない階段
それは今から42年前の1972年。
赤瀬川さんらが四谷の旅館「祥平館」の裏手を歩いていたところ、どこにもつながっていない、単に「上って下りるだけ」の階段を見つけたのがトマソンの事始めだ。
この階段は「純粋階段」、あるいは四谷怪談をもじって「四谷階段」と名付けられ、以後次々と「発見」されるトマソンの栄えある第1号となった。
さて、この四谷階段の今は――。
Google Mapを頼りに、四ツ谷駅を出て、外堀通り沿いに「祥平館」を探して歩くこと、およそ1分。
駅のすぐそばに、「祥平館」はあった。
しかし建物自体は、すでにビルになっていた。
せっかくなので、裏手に回ってみることにする。
旅館のすぐ裏だとすれば、このあたりだろうか――と、猫一匹入るのがやっとの路地を覗いてみたが、それらしき姿は見えない。
なんでも、外堀通りの拡張に伴い、旅館を現在のビルに建て替えたのだそうだ(別の場所でホテル営業は続いている)。それもずいぶん昔のことで、「四谷階段」をしのぶには、あまりにも遅すぎた話だったようだ。
ちなみに赤瀬川さん自身も2000年代にここを訪れ、この代替わりしたビルと対面していたという。他の赤瀬川さんらが「発見」したトマソンも、すでに姿を消したものが多い。