あの「池袋ウエストゲートパーク」こと西口公園が消滅の危機、理由は?
「池袋ウエストゲートパーク」(通称「I.W.G.P.」)は、石田衣良が1997年に発表したベストセラー小説だ。2000年にTBSで放送されたドラマは、脚本家・宮藤官九郎の名を世に知らしめた名作として、レンタルビデオショップで高い回転率を誇る。
小説やドラマで不良のたまり場として描かれている「池袋西口公園」。実際は東京芸術劇場と池袋警察署のすぐ近くで、ドラマのイメージほど危険な場所ではない。小さいながら野外ステージを備えており、2014年8月26日から9月15日まで「肉汁祭 ギョーザ vs からあげ グランプリ」が開かれるなど、イベント会場としての人気は高い。
そんな池袋西口公園が再開発で消滅するかもしれない――I.W.G.P.ファンにとって衝撃的なニュースがネットを駆け巡っている。
西口公園は完全消滅するわけではないが...
池袋は日本で2番目に乗降客数の多い巨大ターミナルだが、新宿や渋谷と比べて目新しい商業施設に乏しく、とくに西口はローカルな雰囲気が漂う。
雑然とした街並みを一新する必要がある――かねてから再開発の必要を感じていた池袋駅西口の地権者らは2007年「池袋駅西口地区まちづくり協議会」を組織した。協議会がディベロッパーとして指定した三菱地所と、豊島区の3者で再開発計画を練ってきた。
公表された池袋駅西口駅前街区の基本構想案によると、マクドナルド池袋西口店やドコモショップ池袋北口店、ソフトバンクモバイル池袋北口店などが入居する雑居ビル群は更地にして、池袋西口公園の一角にあるバスターミナルを移設する。
みずほ銀行池袋支店やビックカメラ池袋西口店、東京都豊島合同庁舎が建っているところには高層ビル2棟が建設され、商業施設やオフィス、ホテル、マンションが入る。池袋西口公園の一部も高層ビルの予定地となる。
東武百貨店の北側、マツモトキヨシのある辺りは地下タクシープールが整備される。
池袋西口公園が完全に消滅するわけではないが、基本構想案がそのまま実行されれば今よりもコンパクトな公園となる。
問題は再開発実施に必要な地権者の同意を得られるかという点だが、協議会そのものに参加していない地権者も3割残っており、決着にはまだ時間を要しそうだ。
西武と東武に三菱地所が加わり、池袋がパワーアップする?
池袋は長年、西武鉄道と東武鉄道の2社を中心に開発が進められてきた。これに三菱地所グループがプレイヤーに加わることで、新たな息吹がもたらされる。
三菱地所グループは東京・丸の内や横浜みなとみらい地区の開発、全国のプレミアム・アウトレットなどを手がけ、ディベロッパーとしての実績は申し分ない。
池袋東口のサンシャインシティは1970年代後半に西武鉄道が開発した施設だが、2008年に三菱地所が子会社した。首都圏における第3の拠点として、同グループが池袋を重視していると見る向きもある。
池袋西口から延びる要町通りは、4年後にも新大宮バイパスを介して埼玉県さいたま市とつながる予定だ(練馬の古道「埼玉道」は「池袋の埼玉化」を予言していた!?参照)。
また、西武池袋線・東武東上線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線と相互乗り入れしている東京メトロ副都心線の池袋駅ホームは西口地下にある。計画されている高層ビルは地下通路で直結すると見られる。副都心線渋谷駅&ヒカリエと同じような関係になると思えばいい。
今回の再開発が成功すれば、新宿・渋谷、横浜方面に流れている買い物客を呼び戻すことができるかもしれない。
デンジャラスなゾーンも残る池袋
ところで池袋で物騒なのは、西口公園よりむしろ北口(西口の北部)一帯だ。
周辺はいつの間にか中華街化しており物騒な事件が相次いでいる。今年7月には中国人による射殺事件や脱法ハーブ吸引運転死傷事件が相次いで発生した。指定暴力団・極東会の事務所もこのエリアにある。
北口はやけに駐車場が目立つ場所でもある。巨大ターミナル近くにこれほどの広さの土地が放置されているのは不思議だが、アンタッチャブルな理由があるのだろうか――。
誰もが安心して通行・生活できる環境が整ったとき、池袋はサンシャイン60オープン時の輝きを取り戻すことができるだろう。