弘前大医学部では津軽弁が「必須科目」らしい
青森県・弘前大の医学部では、意外な「必須科目」がある――そんな話を紹介したツイートが、最近話題になった。
弘前の医学部はこんなのも覚えなきゃいけないらしい。津軽勉、 pic.twitter.com/QJGXk0jmjU
— かーずゆき (@kazuyuuuuu) September 4, 2014
そう、それは「津軽弁」だ。
多くの人の笑いを誘ったこのつぶやきだが、考えてみればこれは深刻な問題だ。
青森出身でも「津軽弁」わからないことも
高齢者の方言がきつくて何を言っているのかさっぱり分からない――国内で見知らぬ土地へ旅行した人なら一度は経験したことがあるのではないか。言葉は生ものとはよく言ったものだが、地元の若者でさえ、お年寄りの方言を理解できないケースが全国的に増えている。
老人たちが多く集まるのが医療の現場。患者にしてみれば方言以外に適切な表現が見つからないのだろうが、医師や看護婦に伝わらない、あるいは誤解されるというのは深刻な問題のようだ。
中でも青森県津軽地方の「津軽弁」は、本州の方言の中でも共通語との隔たりが大きいと言われている。地域唯一の医学部、弘前大学の医者の卵たちにとって、「津軽勉」は笑い話ではない。
第一、一口に津軽弁といっても青森県内全域で通じるわけではない。次のような意見をツイッターに投稿した人もいる
「八戸育ちの南部弁使いですが 津軽弁さっぱりわがんねじゃ」
弘前大学では「津軽弁講座」も
弘前大学医学部のOBで現在は市内で開業医をしている沢田美彦医師は、母校で津軽弁の講義をしたことがある人物だ。沢田内科医院のウェブサイトによると、彼は講義で以下の点を心がけたそうだ。
「医学部の学生の約半分が青森県出身でした。しかし、青森県といっても、津軽だけでなく南部地方と下北地方がありますので、純粋に津軽弁を理解できるかなと思ったのは約4分の1程度と想像しました」
「津軽弁そのものはもちろんですが、標準語ではとても言い表すことができない津軽弁の奥深さを知ってもらおうと試みました」
「日常診療では、話を聞いて診察すれば多くの場合解決できます。そのためには、患者さんから言葉で状態をうまく説明してもらうことが重要です」
「もう一つ、医学生に対して伝えたかったことは、津軽弁を拒否しないで欲しいということでした。津軽弁で医師に話しかけた時に、拒否するような態度を見せると患者さんは黙ってしまいます。結果として、正しい診断に到達することができず、適切な医療を提供できなくなってしまうからです」
高齢者の方言を理解できないという問題は、医療だけでなく福祉の現場でも発生しているという。津軽ではないが、介護職に就いている筆者の知人女性も、地元出身にもかかわらず、施設に入居する人たちの言葉を聞き取るのに苦労していると話していた。
医療・福祉と「方言」――これからの高齢化社会、この「科目」はますます重要さを増しそうだ。