消える高島屋とシャッター通り、そしてイオンモール...記者が見た和歌山市の今
高島屋の和歌山店(和歌山市)が2014年8月31日に営業を終えた。1973年に南海電鉄和歌山市駅ビルのキーテナントとして開店、最盛期の1991年は約65億円を売り上げたが、2013年度は21億円あまりにまで減少、厳しい営業状況が続いていた。
筆者は閉店直前の8月中旬、市内を訪れていた。以下は、そのレポートだ。
残る百貨店は近鉄のみ...
閉店した高島屋の売場面積は4500平方メートルで、総合スーパー(GMS)並みの広さ。閉店セールを実施中でいつもよりも客はいるのだろうが、それでも客であふれているという印象はしない。
和歌山市駅は南海電鉄本線・和歌山港線、JR紀勢本線が乗り入れるが、1日の平均乗降人員は約2万人しかなく、ピーク時の半分程度まで減少している。
市中心部に残る百貨店はJR和歌山駅前の近鉄のみとなった。市内にはかつて大丸と地場資本の丸正百貨店も店を構えていたが、大丸は1998年に撤退、丸正は2001年に自己破産している。
丸正のあったビルには複合施設「フォルテワジマ」が営業している。また大丸跡にはドン・キホーテが入居しており、それぞれ一定の集客がある。
しかし、「丸正あってのぶらくり丁、ぶらくり丁あっての丸正」といわれたほど密接な関係にあった商店街「ぶらくり丁」は完全なシャッター通りと化している。
ぶらくり丁は午後2時にもかかわらず1~2割しか店が開いていなかった。たまたま定休日あるいは夏季休業中だったのかもしれないが――徳川御三家の城下町として繁栄を極めた場所とは信じられない光景だ。ずいぶん前から閉めているらしき店のショーウインドーに、服を付けたままのマネキンがいた。
残っているのは固定客のいる美容室や個性的な飲食店くらいだろうか。人影のないアーケード街は、かすかにすえた臭いがした。
イオンモールと地元スーパーがしのぎを削る
高島屋に話を戻す。閉店の決定打となったのは今年3月16日に開業した「イオンモール和歌山」と報じられている。
和歌山市駅から急行で約6分の和歌山大学前駅に直結しており、大阪府と和歌山県を結ぶ国道26号線に面している。敷地は15万5000平方メートル、総賃貸面積は約6万9000平方メートルもある。
ぶらくり丁は年配者の姿ばかりが目立ったが、次いで訪れたイオンモールはヤンチャな子供たちやカップル、ファミリーらで賑わっていた。夏休みが終われば和歌山大学の学生たちの姿も増えるのだろうか。
同モールは大阪府と和歌山県の境に立地し、大阪府南部の住民も買い物客のターゲットに入っていると聞くが、駐車場を見渡す限りほとんど和歌山ナンバーだった。
実は和歌山市の商業は地場資本のスーパー「オークワ」に席巻されており、イオンモール開店は高島屋に引導を渡したにすぎなかった。
オークワは県内に55店舗を有し、9月4日にはかつてダイエーのあった場所に「スーパーセンターオークワセントラルシティ和歌山店」がオープンする。ポイントカード「オーカード」は県民の6割以上が所持していると言われ、テレビ番組「秘密のケンミンshow」に取り上げられたこともあるほどだ。
オークワとイオンは業務提携を結んでいた時期もあったのだが、現在は顧客獲得にしのぎを削る。
高島屋に代わってスーパーと100均が駅ビルに入居
かつて郊外に多く出店していたイオンだが、今年12月5日に開業が決まった「イオンモール岡山」や、2015年春開業予定の「イオンモールJR旭川」などは駅前出店を果たす。地元商業関係者の反対はあるものの、町の賑わいや雇用面でのプラス効果は大きい。
人口が減少している和歌山市は県庁所在地の中でも財政状況が極めて悪い。今年の8月24日で退任した大橋建一元市長は、10年前の「市報わかやま」で財政非常事態宣言を出したほどだ。財政再建団体への転落は免れているが、予断を許さない状態は続いている。行政頼りの町おこしに限界があるのは明らかだ。
高島屋和歌山店の入っていた駅ビルにはスーパーと100円ショップが入居することが決まっている。しかし中心部のにぎわいを取り戻すためには、もっと抜本的な対策――いっそ、イオンを誘致するとか――が必要なのではないか、というのが、筆者の個人的な感想だ。