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集団でゴロンと路上に寝っ転がる! しかも自分から勝手に起き上がっちゃダメ!「うなごうじ祭」

織江賢治(おりえ・けんじ)

織江賢治(おりえ・けんじ)

2014.04.05 20:45
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全国の奇祭をご紹介するこのコーナー、5回目は2014年4月5日、6日に愛知県豊川市で行われる「うなごうじ祭」をご紹介します。

画像:すべて織江賢治が撮影

画像:すべて織江賢治が撮影

このうなごうじ祭、正式には「若葉祭」といって、詳しくは省きますが1505年に旧牛久保城主の牧野成時が八幡社に参拝したことがきっかけ。

で、何が面白いかっていうと、「やんよう神」という囃子方が歌いながら、輪になって道路の真ん中にゴロンと一斉に寝転ぶんです。しかも自分から起き上がることは禁止! 起こし役がタッチするまで起き上がっちゃダメなんですよ!

さらに祭りの行列が行われる間中......休憩を挟みつつも、実に8時間もの間、何度も何度も寝転び続けるのです。ステキでしょ?

爆竹で気合を入れるぜ!

この行事は牛久保城主から振舞われたお酒に酔った領民が真っ直ぐ歩けず、ごろごろ転がりながら助け合って帰ったことに由来し、その様子がうじ虫に似ていることから、別名「うじ虫祭り」とも呼ばれています。

会場となるのは豊川市牛久保町の八幡社。豊橋から飯田線に乗り換えて4つ目の牛久保駅が最寄です。駅に到着したのは午前9時50分なんですが、電車のドアが開いた瞬間、パンパンパパンッと爆竹の音が聞こえてきて、早くも胸がときめきます。

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駅前では半纏を着た若者たちが「祭りはもう始まってるぜ!」といわんばかりに元気良く踊っておりました。その傍らで何やらスタンバイしてたのが、この大量の爆竹。ちょっ、ちょっ、ちょっ! 重ねすぎだろコレ!!

踊りを終えた若者の1人が果敢にもこの爆竹に火をつけると...案の定、ババババババババババーン!!!

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と、ロケットの発射音のような大爆発。どこかの子供が「うわ~ん」と泣き出し、自分もあまりの音に耐え切れず、本能的に耳を塞いでしまいました。

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爆発が終わると若者たちは「ハイッ! ハイッ!」とさらに気炎を上げ、猛り狂っておりました。

少年たちの踊りも見応えあり

会場の八幡社へは駅から徒歩12分ほど。到着すると、車輪のついた大きな山車が運びこまれていました。これは「お車」といって、このように2層になっている大型のものを大山車(おおやま)といいます。

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11時半。この大山車の前に人が集まりまりはじめ、いよいよ祭りがスタート。またも大量の爆竹で口火を切ると、この大山車の上でからくり人形による祭り太鼓が始まります。

それにしてもこの人形、屋台の上から半身を乗り出したり、ひっくり返ったりと、やたらとアクロバティック。

操る大人もさることながら、よくできてるな~と思っていたら、実は生身の少年が演じているもの。これは「隠れ太鼓」といって、祭り囃子の音に合わせて身を乗り出したら隠したりするのです。

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そのうちに、4つの町内組のダシがお車を伴って到着。この地方ではこの鉾のことを「ダシ」と呼びますが、それぞれ社に参拝し、準備を整えます。これがそのダシ。実は僕も持たせてもらいましたが、結構重くてバランスを取るのが大変。決して落としたりしてはいけないのです。

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それが終わると社前で愛知県東部に伝わる神事芸能「笹踊り」を奉納。大人たちの祭囃子のなか、中国風の衣装を纏って顔を隠した3人の踊り手が胸の太鼓をたたきながら太極拳のような踊りを披露。なお、この3人は地元の中学生だそうです。

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その後、先導役ややんよう神が参拝し終わると、いよいよ行列のスタート。そもそもこの行列は、前日の宵祭に十王社から運んで奉納した獅子頭を日曜日の本祭にお返ししに行くというもので、その獅子頭を先頭に、各組の鉾や囃子車、巫女装の男児が踊る神兒車など、笹踊りと続き、やんよう神は最後尾を勤めます。

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すぐ、転んだ!

さぁさぁさぁ! 一発目はどこで寝転ぶんだ?

......と思っていたら、社を出てすぐ! 大きなひとつの輪になって「さ~げにもさ~やんよう神もやんよう」と陽気に歌い出し、最後のやんようのところでゴロ~ンと仰向けに。

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そして、そのまま寝てしまったかのように静まり返るやんよう神。起こし役がタッチすると、ひとり、またひとりとムクリと立ち上がり、全員が立ち上がったところで、間髪入れず歌い出し、またゴロ~ン。

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笹踊りや神兒舞は要所で行われます。

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それに対してやんよう神はアッチでゴロン、コッチでゴロン。所構わずひっくり返るもんだから、前に全然進まねぇ(笑)

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こりゃ、まだまだかかりそうだなと思い、頃合を見て一旦昼食をとりに行きました。先頭の獅子頭は14時先に十王社に到着。それから遅れること10分。笹踊りややんよう神もようやく到着。

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ここで獅子頭返却の神事を済ませ、1時間強ほど休憩した後、一向は再び八幡社に向けて出発。南大通りを抜ける頃には陽もすっかり傾いてました。

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さすがに車通りの多いところではやんよう神は寝転がりませんが、再び細い通り(常盤通り)に入ると相変わらず。この頃にはあちこちで近所の方からお酒を振舞われるため、マジで酔っ払ってしまう人もチラホラ(笑)。

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こちらは神兒車。女の子のように見えますが、男の子です。

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19時20分過ぎ、行列の先頭がようやく八幡社へ戻ってくると、いよいよフィナーレの準備。続々と行列が鳥居に吸い込まれていきますが、やんよう神はまだ姿を現しません。

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寝っ転がるのも気力がいる

笹踊り、そしてやんよう神が到着したのは20時を回ったとこ。隠し太鼓が再び始まり、神兒舞が行われるなか、祭りを終わらせたくないやんよう神は、ここで最後の悪あがきとばかりに何度も何度も寝転びます!

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さすがに疲れがきたのか、最後は1人がぶっ倒れ、みんなに担がれて鳥居の中に入っていきましたが、昔はそれこそ夜通し寝転んでいたそうです。

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そして、最後は「三ツ車」という儀式。三基のダシが衝き廻しを行い、その後に笹踊りが奉納されます。それが終わると残りの一基のダシが駆け足で走り、お開きとなりました。

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祭りの余韻を楽しみたかったんですが、東京行きの新幹線の最終まであと30分足らずのため、最後はタクシーを使ってバタバタでの帰京。

さてこの記事、本当は祭りが開かれる前に書きあげてご紹介したかったんですけど......間に合わずで申し訳ありません。祭りは明日(4月6日)が本番ですが、もし明日お時間があったなら、ぜひ足を運んでみてください。

さて次回はゴールデンウィークに行われる、日本一危険なお祭りを"前もって"ご紹介いたします。

【若葉祭(うなごうじ祭)】
日時:毎年4月8日に近い日曜日(本祭)とその前日(宵祭)
時間:本祭は9時~21時過ぎまで(行列は12~13時に出発)
場所:愛知県豊川市牛久保町常盤164(八幡社 )

今回の筆者:織江賢治(おりえ・けんじ)

1975年愛知県生まれ、茨城県在住。出版社勤務を経て現在フリーの編集者・ライターとして活動。雑誌やムックを中心に執筆や編集を行う。プライベートで全国の鉄道の駅とその周辺を歩く「駅鉄活動」をライフワークとし、それが高じて各地の祭りや風習、珍スポット探検なども行っている。今までに行った祭りは200以上。

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