サステナブルな酪農へ②「明治グループと味の素株式会社が持続可能な酪農業の実現に向けた協業を開始」
【サステナブルな酪農の実現に貢献する取り組み②】
酪農・乳業における温室効果ガス排出削減の取り組みを2023年3月よりスタート
明治グループと味の素株式会社が持続可能な酪農業の実現に向けた協業を開始
~酪農における温室効果ガス排出削減分をクレジット化し、酪農家の収入源に~
株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)をはじめとした明治グループと、味の素株式会社(取締役代表執行役社長最高経営責任者:藤江 太郎)は、酪農・乳業において、温室効果ガス(以下GHG※1)排出削減と経済価値創出を同時に実現する「J-クレジット制度※2を活用したビジネスモデル」の構築に向けた協業を開始しました。
本協業は、消費者に安定的に乳製品を提供する責任のある明治グループ、GHGの一つである一酸化二窒素(N2O)の削減を乳牛用アミノ酸製剤により飼料中のアミノ酸バランスを改善することで実現する味の素株式会社、GHG排出量の削減を迫られている酪農家という立場が異なる3者でつくる、酪農家の経済面にも配慮した国内初の「J-クレジット制度を活用したビジネスモデル」です。なお、本取り組みで活用するJ-クレジット制度プロジェクトの登録は、3月15日(水)付で、承認されております。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202303254244-O1-aUikVFM5】
「J-クレジット制度を活用したビジネスモデル」の概要
酪農家の経営支援に取り組んできた明治グループが、支援の基盤を生かして、味の素株式会社と協業し、乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」を用い、飼料中のアミノ酸バランスを改善することで、本ビジネスモデルの構築を実現しました。
このアミノ酸バランス改善飼料を給餌することにより、GHGの一つでありCO2の約300倍という温室効果のある牛の糞尿から発生する一酸化二窒素(N2O)排出量を削減することができます。J-クレジット制度で規定されているGHG排出量削減における農業分野の5つの方法論※3のうち、「アミノ酸バランス改善飼料の給餌」という方法論を用い酪農分野として初めてプロジェクトの登録がされました。
酪農家が「AjiPro®-L」を用いアミノ酸バランスを改善した飼料を添加することにより削減したGHG排出量の価値を、味の素株式会社がJ-クレジット制度に基づいてクレジット化し、当社がそれを購入します。購入したクレジット代金は酪農家に支払われ、今後の酪農家の新たな収入につながります。また、当社としては、購入したJ-クレジット分のGHG排出量を、当社のGHG排出量のオフセットに役立てることが可能となります(カーボンオフセット)。本年3月より、北海道根室市の有限会社北翔農場(代表取締役:佐藤 幸男)と本ビジネスモデルを用いた取り組みに着手しています(アミノ酸バランス改善飼料の給餌は1月より開始)。
今後は本ビジネスモデルの対象戸数を拡大し、国内の酪農業におけるGHG排出削減と酪農家の支援につなげることを狙ってまいります。
<酪農家にとっての価値>
・飼料の改善という手法には糞尿処理施設などの設備投資や移送の必要がなく、初期費用を抑えられる。
・アミノ酸量のバランスを調整した飼料により、乳量を維持しながらN2O削減を図ることができるため、地球環境保護にもつながる。
・アミノ酸量のバランスを調整した飼料により、高たんぱくながら高コストで余剰なアミノ酸も多く含む大豆粕などの飼料を減らしながら飼料コストの削減を図ることができる。
・明治グループが購入したクレジット代金が還元されることで、新たな収入につながる。
<明治グループにとっての価値>
・酪農家支援につながる取り組みの実施によりサステナブルな酪農の実現、将来的には乳原料の安定調達につながる。
・酪農・乳業業界の地球環境保護策として、他社協業のもとでJ-クレジット制度を活用したビジネスモデルを築いたことにより、業界全体のGHG排出削減を後押しすることができる。
・本取り組みが酪農分野でのGHG削減の第一歩となり、それが将来的には明治グループ全体のカーボンニュートラル達成につながる。
<味の素株式会社にとっての価値>
・アミノ酸をベースにしたGHG排出量の削減と経済価値創出を同時に実現するJ-クレジットを活用した新たなビジネスモデルを構築することで、持続可能な酪農業の実現に貢献できる。
・乳牛におけるアミノ酸栄養の重要性ならびに「AjiPro®-L」の有用性の理解促進、需要拡大につながる。
今後の展望
地球温暖化に伴い「脱炭素化」が喫緊の課題とされています※4。日本における畜産からの排出量は1,386万t(CO2換算)とされており、その内乳業牛の占める割合は44.5%(617万t(CO2換算)と試算されています※5。生物由来のGHGは、技術革新なくして削減することは困難とされており、削減に向けての技術開発と実証、さらには酪農家が無理なく導入できる枠組みづくりが世界的にも急ピッチで進められています。
当社としては、今後、本ビジネスモデルに多くの酪農家が参加し、また、牛のゲップなどのメタンを削減するノウハウを持つ企業・団体と協業することによって、取り組みの輪が拡大し、さらに大きなGHG排出量削減が可能になると考えています。これらの取り組みにより、酪農・乳業全体の持続可能性の向上につなげることを目指します。
<明治グループのコメント>
本取り組みによるGHG排出量削減はもちろんのこと、サステナブルな酪農の実現に向けた課題は多岐にわたるため、明治グループでは、新たなGHG排出量削減方法の開発に向けてチャレンジすることが乳業トップメーカーとしての使命だと考えています。その取り組みの一つとして今般、「J-クレジット制度を活用したビジネスモデル」の構築に着手しました。これからも、本取り組みを検証し対象戸数を拡大するとともに、環境への負荷が大きい牛のゲップなど、酪農分野全体のGHG排出量削減に向けて、サプライチェーン全体を巻き込みながらさまざまなチャレンジをしていきたいと考えています。
<味の素株式会社のコメント>
味の素グループは、アミノ酸の働きで酪農業のGHG削減、持続可能な酪農業の実現に貢献していきたいと考えております。その取り組みの一つとして、明治グループの皆さまと、乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」を用いたGHG排出量削減に、J-クレジット制度を組み合わせた新たなビジネスモデルの構築に向けた協業を開始しました。今後もさまざまな関係者の方と連携し、お互いの強みを持ち寄りながら取り組みの輪を広げ、酪農・畜産業の発展に貢献したいと考えております。
明治グループのGHG排出量削減目標(2019年比)
明治グループのGHG排出量削減目標は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、自社での排出量にあたるScope1、Scope2では2030年に50%の削減、2050年までに実質ゼロを目指しています。原材料の生産・調達や輸送、製品の輸送や廃棄など自社以外の間接排出にあたるScope3では、2030年までに30%の削減、2050年までに実質ゼロを目指します。
詳細は明治ホールディングス株式会社 ホームページの「サステナビリティ」コンテンツでも紹介しています。
https://www.meiji.com/sustainability/harmony/climate_change/
参考
◆味の素株式会社について
(1)社名:味の素株式会社
(2)所在地:東京都中央区
(3)設立時期:1925年12月
(4)代表者:取締役 代表執行役社長 最高経営責任者 藤江 太郎
(5)事業内容:調味料、栄養・加工食品、ソリューション&イングリディエンツ、冷凍食品、医薬用・食品用アミノ酸、バイオファーマサービス、ファンクショナルマテリアルズ、その他の事業活動
(6)連結従業員数:34,198名(2022年3月31日現在)
(7)WEBサイト:https://www.ajinomoto.co.jp/
(8)本協業に関するプレスリリース:
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2023_03_27.html
◆乳牛用リジン製剤「AjiPro®-L」について
味の素株式会社が2011年より販売している乳牛用リジン製剤です。通常、牛の第一胃で必須アミノ酸の一つであるリジンは分解されてしまい、栄養として活用することが難しいところ、味の素株式会社独自の製造技術によってリジンを栄養として利用可能な小腸まで効率良く届けることができます。確かな科学的知見に裏付けられた乳生産性の向上と飼料効率の改善をもたらす本製品は、乳牛用リジン製剤ナンバーワンシェア(味の素株式会社調べ)を持ち世界中で使用されています。
「AjiPro®-L」製品紹介:http://www.ahs.ajinomoto.com/products/feed/ajipro-L.html
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202303254244-O2-V4xSZy78】
◆明治飼糧株式会社について
本ビジネスモデルにおいて、酪農家との窓口となり、アミノ酸バランス改善飼料の提供を担うのは、明治グループの飼料販売企業である明治飼糧株式会社です。
明治飼糧株式会社では、酪農家ごとに飼料の栄養成分の分析を行い、牛の健康や乳量の確保のための最適なレシピの提案を行っています。また、牛群管理システム「まきばの彼女」を独自に提供するなど、牛の健康状態や乳量・乳質の管理のデジタル化もサポートしています。
これらの実績に基づき、アミノ酸バランス改善飼料の特徴を最大限に生かした飼料の配合と、飼料の変更に伴うデータの採取の効率化を実現し、本ビジネスモデルにおいて重要な役割を担っています。
◆酪農家:北翔農場について
本ビジネスモデルにおいて、アミノ酸バランス改善飼料の導入にいち早く賛同し、導入を開始したのは、北海道根室市を拠点に乳牛600頭・和牛100頭を飼養する大規模な酪農場を運営する有限会社北翔農場です。北翔農場は、1979年に60頭からはじめ、酪農に適した自然環境を生かし、牛にストレスをかけない酪農を心掛けて飼養頭数を増やしてきました。2000年頃から農場のデジタル管理を進め、効率化の推進により農場の大規模化にも取り組むなど、新しい技術の導入にも積極的に取り組んでいます。
※1 温室効果ガス(GHG)…(Greenhouse Gas)は、熱(赤外線)を吸収する性質をもつ大気中のガスを指します。温室効果ガスが増えると、温室効果が強くなり地表面の気温が上がることから、地球温暖化とそれによる異常気象につながる主な原因として問題になっています。人間の活動によって増加した主な温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスがあります。なお、温室効果の大きさは気体によって異なり、例えばメタンは二酸化炭素の25倍、一酸化二窒素は約300倍の温室効果があるとされています。(参考:環境省ホームページ)
※2 J-クレジット制度…省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量や、適切な森林管理によるCO2などの吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。国内クレジット制度とオフセット・クレジット(J-VER)制度が発展的に統合した制度であり、国により運営されています。J-クレジット制度により創出されたクレジットは、経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、さまざまな用途に活用できます。(参考:J-クレジット制度ホームページ)
※3 GHG削減における農業分野の5つの方法論…2023年3月現在、酪農を含む農業分野でのGHG排出量削減の方法論としては、「①家畜排泄物管理方法の変更」「②バイオ炭の農地施用」「③アミノ酸バランス改善飼料の給餌」「④茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料または石灰窒素を含む複合肥料の施肥」「⑤水稲栽培における中干し期間の延長」の5つが認められています。このたびの明治グループの取り組みは、③の方法論を酪農において実践する初めてのプロジェクトとなります。
※4 地球温暖化に伴う気候変動は、各地で深刻な異常気象を発生させ、食料生産に大きな打撃を与えています。そのため、地球温暖化の原因となるGHGの発生量を減らし、2050年に排出量実質ゼロを目指す「脱炭素社会」に向けた取り組みは、農林水産業分野と食品業界においても急務とされています。
※5 農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」をもとに作成