米FDAがMenarini Groupのエラセストラントに、ER陽性/HER2陰性の進行性・転移性乳がん患者向け治療薬として優先審査認める
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【フィレンツェ(イタリア)、ニューヨーク2022年8月11日PR Newswire=共同通信JBN】
*承認されれば、エラセストラントは、2次、3次治療が必要なER陽性/HER2陰性の進行性・転移性乳がん患者に使用できる初の経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)となる
*申請の裏付けとなったのは、全患者集団およびエストロゲン受容体1遺伝子(ESR1)に変異のある患者群の両方で、現在の標準治療(SOC)と比較して統計的に有意な有効性を示した、エラセストラントの第3相主試験EMERALDの結果である
*米FDAは、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)の審査期限を2023年2月17日とした
イタリアの株式非公開の医薬品・診断薬企業Menarini Group(「Menarini」)とMenarini Groupの100%子会社Stemline Therapeutics(「Stemline」)は11日、米食品医薬品局(FDA)が、治験段階にある同社のER陽性/HER2陰性の進行性または転移性乳がん患者向け経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)エラセストラントの新薬承認申請(NDA)を受理したと発表した。FDAは同申請の優先審査を認め、PDUFAの審査期限を2023年2月17日とした。
FDAは、重篤な疾患の治療、診断、予防の安全性と有効性において、現在のSOCより著しい改善をもたらす可能性があると判断した医薬品に優先審査指定を与えている。エラセストラントは2018年、FDAからファストトラック指定も受けた。
Menarini GroupのElcin Barker Ergun最高経営責任者(CEO)は「FDAが当社のNDAを優先審査で受理したことは、当社にとって規制上の重要な節目だ」「初期の治療で耐性がついてしまった進行性・転移性乳がん患者の管理における、満たされていない大きなニーズに対応した新たな潜在的治療オプションを提示する本申請の審査で、FDAに協力していきたい」とコメントした。
今回のNDA申請の裏付けとなったのは、EMERALD試験の第3相データ(https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.22.00338 )の結果である。EMERALD試験は、SOCである内分泌薬の単剤治療と比較した、全患者集団とエストロゲン受容体1遺伝子変異のある(mESR1)患者群における無増悪生存(PFS)というあらかじめ設定した2つの主要評価項目を達成した。本試験の比較対照群は、治験責任医師が選択したフルベストラントまたはアロマターゼ阻害剤のいずれかで治療を受けた。12カ月時点のPFS率は、全患者集団ではエラセストラント22.32%に対しSOCは9.42%、ESR1変異群では26.76%対8.19%だった。本臨床試験データで、エラセストラントは、疾患の進行または死亡のリスクを全患者集団で30%、ESR1変異群で45%低下させたことが示された。同データでは、安全性プロファイルが管理しやすいことも分かった。
エラセストラントは治験薬で、いかなる規制当局からも承認されていない。販売承認申請(MAA)は2022年7月、欧州医薬品庁(EMA)にも出されている。エラセストラントの臨床試験に関する詳細情報は、www.clinicaltrials.gov で入手可能。
Menarini Groupは2020年7月、EMERALD試験を実施、成功させたRadius Health, Inc(NASDAQ:RDUS)からエラセストラントのグローバルライセンス権を取得した。良好な第3相データに基づき、Radiusの支援を受けたStemlineが2022年6月、FDAに新薬承認申請(NDA)を行った。Menarini Groupは現在、エラセストラントの全世界での登録、商品化、さらなる開発活動を全面的に担っている。FDAの承認が得られれば、ニューヨーク市に本社を置くStemlineがエラセストラントを商品化する。Stemlineは、がん患者への革新的腫瘍治療法提供に注力しており、現在、米国と欧州の両方で芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍患者向けの新規標的治療薬を商品化している。
▽エラセストラント(RAD1901)と第3相試験EMERALDについて
エラセストラント(Elacestrant)は、治験段階にある選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)で、ER陽性/HER2陰性の進行性または転移性の乳がん患者に1日1回投与する経口治療薬として使用できるかどうかの評価が行われている。エラセストラントは2018年、FDAからファストトラック指定を受けた。EMERALDに先立ち完了した前臨床試験で、本化合物は、単剤または他の治療法との併用で乳がん治療に使用できる可能性があることが示されている。第3相試験EMERALDは、ER陽性/HER2陰性の進行性・転移性乳がん患者の2次治療または3次治療の単剤療法としてエラセストラントを評価する、無作為化・非盲検・実薬対照試験である。本試験には、CDK4/6阻害剤を含む内分泌療法での1次または2次治療歴のある患者477人が登録された。本試験の患者は、エラセストラントを投与する群と、治験責任医師が選択した承認済みホルモン剤を投与する群に無作為に振り分けられた。本試験の主要評価項目は、全患者集団およびエストロゲン受容体1遺伝子(ESR1)に変異のある患者群における無増悪生存(PFS)だった。副次評価項目は、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)の評価だった。
▽Menarini Groupについて
Menarini Groupは、売上高40億ドル超、従業員数は1万7000人を超える国際的な大手医薬品・診断薬企業である。Menariniは、満たされていないニーズの高い治療分野に重点を置き、心臓疾患、腫瘍、呼吸器疾患、消化器疾患、感染症、糖尿病、炎症、鎮痛用の製品を提供している。18の生産拠点と9の研究開発センターを有するMenariniの製品は、世界140カ国で販売されている。詳細については、www.menarini.com を参照。
▽Radiusについて
Radiusは、骨の健康、神経系希少疾患、腫瘍分野の満たされていない医療ニーズへの対応に注力しているグローバルなバイオ医薬品企業である。Radiusの主力製品TYMLOS(R)(アバロパラチド)注射薬は、骨折リスクの高い閉経後の骨粗しょう症女性の治療薬として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。Radiusの臨床パイプラインには、骨粗しょう症男性の治療に使用できる可能性のある治験薬のアバロパラチド注射薬、Menarini Groupにライセンス供与した、ホルモン受容体陽性乳がん治療薬として使用できる可能性のある治験薬エラセストラント(RAD1901)、当初はプラダーウイリー症候群、アンジェルマン症候群、小児けいれんを対象とし、複数の神経内分泌疾患、神経発達疾患、神経精神疾患領域で使用できる可能性のある治験薬の合成カンナビジオール内服液RAD011などがある。
ソース: Menarini Industrie Farmaceutiche Riunite