最先端材料科学研究: 機械学習により持続可能な新材料の探索をスピードアップ
既存の複合材料と同等な性能を持つ複合材料を迅速に開発する方法を開発
2022/5/27
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)
Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌 プレスリリース
配信元:国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)・〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
Date: 27 May 2022
最先端材料科学研究: 機械学習により持続可能な新材料の探索をスピードアップ
(Tsukuba 27 May) 既存の複合材料と同等な性能を持つ複合材料を迅速に開発する方法を開発
論文情報
タイトル:A data-driven scheme to search for alternative composite materials
著者:Michihiro Okuyama*, Yukihito Nakazawa and Kimito Funatsu
* KONICA MINOLTA, INC., 2970 Ishikawa-machi, Hachioji, Tokyo, 192-8505, Japan (E-mail: michihiro.okuyama@konicaminolta.com)
引用:Science and Technology of Advanced Materials: Methods Vol. 2 (2022) p. 106
プラスチック材料は、原料そのままで使われることはほとんどなく、添加物や補強材など様々な材料の複合材料として使われている。とりわけ、異なる構成材料間の複雑な相互作用による相乗効果により、単一材料よりも飛躍的に性能が向上することが複合材料の魅力だ。例えば、繊維強化プラスチックは、電気・情報技術を始めとする幅広い産業で使用されている製品で重要な役割を担っている。
一方で、プラスチックの使用量削減が、大きな環境問題として取り上げられるようになるにつれ、構成材料をバイオマスやリサイクル可能な材料で置き換えることも多くなってきた。その際、構成材料自身の物理化学的特性はもとより、構成材料間の相互作用も、元の複合材料の性能の著しい向上や低下の原因になってしまうこともある。
まさに、作り方次第で良くも悪くもなるのが、複合材料開発の魅力であり難しさでもある。
コニカミノルタ株式会社の奥山倫弘、中澤幸仁、および、奈良先端科学技術大学院大学の船津公人教授は、Science and Technology of Advanced Materials: Methodsに共著発表した論文 A data driven scheme to search for alternative composite materials において、複合材料中の代替材料を選抜できる機械学習法を開発したと報告している。
コニカミノルタの奥山倫弘は、「オリジナルと同等の性能を持つ新しい複合材料を見つけるには、材料間の相互作用を考慮しながら、代替前の構成材料の代わりとなる材料を無数にある候補の中から見つけなければならないため、このような状況で人の経験と直感に基づく従来の開発を行ってしまうと開発期間が極めて長くなってしまう」と説明する。
この問題を解決したのが機械学習である。これまでにも材料の特徴と性能の関係から、多数の材料の中から迅速に探索するための機械学習手法がいくつか提案されてきている。しかし実際の開発では、構成材料の化学構造や物理化学的特性が不明である事が多いため、これまで提案された手法の適用は困難であった。
研究グループが開発した新しい代替材料探索手法の最大の特徴は、構成材料間の相互作用が複合材料全体の性能にどの程度寄与しているかを明らかにする事で、相互作用の影響を考慮しつつ複合材料を開発できる点にある。その結果、元の材料と同等の性能を持つ代替材料を容易に探し出すことができるようになる。
研究者らは樹脂、フィラー、添加剤の3つの材料からなる複合材料の代替構成材料を探索して、この方法を検証した。機械学習によって特定された代替材料を用いた複合材料の性能を実験的に評価したところ、元の複合材料と同等の性能になる事が示され、この方法が機能することが証明された。
「複合材料を構成する代替材料の開発において、この新しい機械学習手法を用いることで多数の候補の網羅的探索が可能となる。これは、時間とコストの両方の節約につながる」と奥山は言う。
この方法は、複合材料の持続可能な代替品を迅速かつ効率的に特定することができ、プラスチックの使用量を削減するとともに、バイオマスや再生可能な材料の使用を促進するために使用することができるものと期待される。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202205271840-O1-AEAAarKZ】
(図の説明)
複合材料に関する開発では、リサイクル可能な材料やバイオマスによる代替など持続可能な選択肢を探すことが研究者の課題となっている。
論文情報
タイトル:A data-driven scheme to search for alternative composite materials
著者:Michihiro Okuyama*, Yukihito Nakazawa and Kimito Funatsu
* KONICA MINOLTA, INC., 2970 Ishikawa-machi, Hachioji, Tokyo, 192-8505, Japan (E-mail: michihiro.okuyama@konicaminolta.com)
引用:Science and Technology of Advanced Materials: Methods Vol. 2 (2022) p. 106
最終版公開日:2022年5月24日
本誌リンク https://doi.org/10.1080/27660400.2022.2063009(オープンアクセス)
Science and Technology of Advanced Materials: Methods (STAM Methods) 誌は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)とEmpaが支援するオープンアクセスジャーナルです。
企画に関する問い合わせ: stam_info@nims.go.jp