がん免疫療法を目指したiPS細胞由来NK細胞大量培養を実現!
ヘリオス社へ治験製品製造用シングルユース自動培養システムの導入が完了
【概要】
佐竹マルチミクス株式会社(埼玉県戸田市 代表取締役社長 西岡光利 以下“当社”)は、バイオベンチャーの株式会社ヘリオス(東京都千代田区 代表執行役社長CEO 鍵本忠尚)が開発するヒトiPS細胞から機能を強化したNK(ナチュラルキラー)細胞(ヒトiPS細胞由来遺伝子編集NK細胞)の大量培養の研究開発に協力して基盤となる培養システムを提供し、治験製品製造を予定している神戸医療イノベーションセンター(KCMI)内のヘリオス社の細胞加工製造用施設へ、2022年3月に治験製品製造用シングルユース自動培養システム(VMF-SUB/TCS-EX/SLI-4090)の導入を完了させた。
本取り組みにおいて、ヘリオス社は全工程フィーダーフリー培養・完全閉鎖系での培養系を構築し、1バッチ当たり1000億個の対象培養に成功しており、今後試験運用が開始され、早期に患者さんへの投与を目指す。
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NK細胞は、がん細胞やウイルスに感染した細胞など異常な細胞を認識し、直接攻撃し体内から排除する働きを持ったリンパ球の一種であり、ヘリオス社が独自に研究・開発しているヒトiPS細胞由来遺伝子編集NK細胞は、iPS細胞から遺伝子編集技術を用いて抗がん活性を強化するなど、細胞が本来持っている能力を高めており、特定のがんに限定されずに幅広いがん疾患への効果が期待されている。
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【内容説明】
本NK細胞治験製品製造用シングルユース自動培養システムは、当社の上下動撹拌培養装置VMF-SUBと、無菌状態で低温インキュベータ―内からシングルユースバイオボトル(バッグ)へ培地を供給し、不必要な細胞と培地を連続的に排出・交換する連続培養システムTCS-EX/SLI-4090で構成され、本培養に必要な制御を自動化すると共に全てのシステムを完全密閉系でシングルユース化している。また当社が独自開発し特許を出願している特殊メンブレンを用い、ヘリオス社の要望に応えるべく各種仕様へカスタマイズし、複雑かつ困難なNK細胞連続培養制御を実現している。
また、安定且つ均質な細胞生産を実現するため、当社撹拌技術研究所が有する数値計算技術“CFD(computational fluid dynamics)シミュレーション” による流動解析を実施、実際の培養結果との相関関係を明らかにし、細胞培養に必要な物理的作用を解明すると共に、より多くの大量商用生産を実現するスケールアップファクターを確立した。現在、最大200Lまでのシングルユースバイオリアクターを開発・製品化しており、本系に限らず多くの再生医療生産の取り組みに寄与すべく、1000Lクラスまでをラインナップする予定である。
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培養槽内における物理的作用をビジュアル化している。培養槽内では、細胞培養に必要な様々な作用を適切に与える必要があり、細胞に対する刺激が強すぎても弱すぎても最適とは言えない。これを最適化することが、装置メーカーである当社に求められている。
【おわりに】
ヒトiPS細胞由来遺伝子編集NK細胞は、特定のがんに限定されずに幅広いがん疾患への効果が期待できることから早期の社会実装が望まれている。海外も含め、多くの研究機関での取組みが進められている中、いち早く実用化するためには、コストを下げるための高効率生産、すなわち安定した連続大量培養が必要不可欠といえ、本成果はその実用化に向けた飛躍的な進歩といえる。また、日本国内における完全密閉のシングルユースシステムは、海外製が多くを占める中、純国産として治験製品製造システムとして導入した意義は大きく、今後メイドインジャパンとして再生医療分野のシングルユースシステム市場を確立していきたい。