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選ばれ続ける国や地域になるための ブランド戦略【東洋大学 SDGs News Letter Vol.09】

2022.04.20 12:00

東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します

2022年4月20日発行
東洋大学

東洋大学 SDGs News Letter  Vol.09
東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します

選ばれ続ける国や地域になるための
ブランド戦略

本ニュースレターでは、東洋大学が未来を見据えて、社会に貢献するべく取り組んでいる研究や活動についてお伝えします。
今回は、国際観光学部国際観光学科の宮崎裕二准教授に、消費者に持続的に選ばれるための仕組みづくり「プライス・ブランディング」について、お伺いしました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202204180071-O8-t606YegS
 
国際観光学部国際観光学科
准教授 宮崎 裕二

Point
1.消費者に選ばれ続けることの意味とは
2.「いいモノを作れば選ばれる」という幻想
3.多様なステークホルダーに参画してもらう工夫
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202204180071-O6-38212wPW
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202204180071-O7-f7ihkio4
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202204180071-O5-8EIqxFlG
消費者に選ばれ続けることの意味とは
「プレイス・ブランディング」の研究について概要を教えてください。
プレイス・ブランディングとは、消費者に持続的に選ばれる仕組みづくりのことです。「プレイス」は日本語だと「場所」と訳しますが、本来は地理的空間の意味で、国や都市、地域、地方などを指します。「ブランディング」にはロゴマーク策定や商品開発のイメージがあるかもしれません。しかし、それは本来の意味とは異なり、日本でプレイス・ブランディングが浸透するのはまだこれからだと感じています。
はじまりは英国が1997年にネイション(国家)・ブランディングを打ち出したのが起源とされ、その後、国家に限らず適用できる概念としてプレイスの名で広まりました。分かりやすい例として米国カリフォルニア州の取り組みが挙げられます。カリフォルニアで想起するのは、ナッツやフルーツ、ワイン、映画、テーマパークなど、人によって多少違うかもしれませんが、概ね多くの人に「カリフォルニアといえば」といったイメージは共有できると思います。それがカリフォルニアというプレイスのアイデンティティであり、それがブランドであり、世界中で競争するなかで選ばれ続けるために同州が取り組んできた仕組みづくりの成果の一つと言えるでしょう。

観光政策や産業政策とは何が違うのでしょうか。
プレイス・ブランディングの対象はすべての消費者で、「観光」など属性の絞り込みは行いません。なぜなら特定の産業だけでなく、政治や外交、教育など、あらゆる観点で選ばれることが重要だからです。選ばれる存在になれば、旅行者や居住者が増えたり、ビジネス活発化による経済の好循環などが期待されます。
ただし、観光政策は消費者にメッセージを届けやすく、プレイスを知ってもらうきっかけを作りやすい分野ではあります。観光に出かけて気に入ればお土産を買うでしょうし、その地に親しみを覚えればいずれ留学や移住を考えるかもしれません。いまはコロナ禍で移動が制限され、国内旅行に対する意識が変わりました。外国人観光客が減少した分、日本人観光客に戻ってきてほしいと考えている国内の地域は少なくありません。しかしながら、日本の場合、国内の観光振興を担う組織と、インバウンドを推進する組織が別で、縦割りの弊害が起きるケースも考えられます。そういう課題を解決するためにも対象を限定しないプレイス・ブランディングは有効と考えられます。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202204180071-O3-zb0gxwWd
カリフォルニア州のブランドマニュアルに記載されているターゲットのペルソナ

「いいモノを作れば選ばれる」という幻想
組織や業界が異なると必ずしも利害が一致せず、プレイス・ブランディングを推進していくのが難しいような気がします。
確かに利害が一致しない場合が多く、どんなブランドでも人によって好き嫌いがあるのが難しいところです。それでも常に選ばれるプレイスであるためにはブランディングは必要なことですから、国や地域、自治体のトップがブランディングの意義を理解し、実務を担うマネージャーの活動を支援していかなければなりません。英国では世界最大規模のブランドコンサルタント会社と契約し、首相直轄の部署でブランディングを推進しています。
日本では、ブランドよりむしろ、「いいものを作れば、つまり、観光地を磨き上げれば、選んでもらえる」という意識があるように思います。しかしながら、ブランディングではその地ならではの魅力は何か、それを誰に伝えるべきか、誰に遊びに来てほしいのか、どのような人に移り住んできてほしいのか、改めて考えることが大切なポイントになります。

多様なステークホルダーに参画してもらう工夫
観光分野だけ取り上げても、小売店やホテル、交通機関など多様な業種が関係しています。どのようにして地域関係者にブランドを理解し、事業活動に取り込んでもらうのでしょうか。
カリフォルニア州では観光局(DMO)がブランドマニュアルを策定しています。非常に分厚いファイルなのですが、なかでも興味深いのは同州を訪れてほしい人のペルソナ(ユーザー像)が細かく解説されている点です。年齢や性別といった属性ではなく、「〇〇という価値を大切にする人」「□□に喜びを感じる人」など思考や感性の特徴が記されているのです。これをもとに各事業者は「当店ではこういうサービスを提供しよう」「当社はここに力を入れたい」などの取り組みを検討して実行するので、州全体として統一されたブランドメッセージの発信が可能となるのです。なかには、適合できないケースもありますが、協力する事業者には金銭的なメリットがあり、多くの観光関係者が取り組みに参画しています。プレイス・ブランディングは特定の業種や企業のためではなく、そこに暮らす人々が地元に誇りを感じたり、人生の豊かさを実感できたりすることがゴールであり、その意識を共有できると一体感が生まれやすくなります。SDGsでは、働きがい、平和と公正、パートナーシップなど多くの面で親和性があります。まずは、観光をフックにして、地域のQOLが高まっていくことに期待しています。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202204180071-O2-16Ohz9aE

宮崎 裕二(みやざき ゆうじ)
東洋大学国際観光学部国際観光学科 准教授

専門分野:国際観光マーケティング、デスティネーション・ブランド、DMO戦略論
研究キーワード:国際観光マーケティング、プレイス& デスティネーション・ブランド、
デスティネーション・マーケティング

本News Letterのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
TOYO SDGs News Letter
https://www.toyo.ac.jp/sdgs/

 

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