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日本酒などで使われる麹菌が作る成分・デフェリフェリクリシンに がん細胞を死滅させる作用を発見

2022.03.09 14:00

月桂冠総合研究所×学校法人甲南学園甲南大学

2022年3月9日
月桂冠株式会社

月桂冠株式会社(社長・大倉治彦、本社・京都市伏見区)総合研究所は、学校法人甲南学園甲南大学(学長・中井伊都子、兵庫県神戸市)の川内敬子准教授(甲南大学フロンティアサイエンス学部)との共同研究により、日本酒などの製造に用いられる麹菌が作る成分・デフェリフェリクリシン(以下、Dfcy)に、ヒト由来のがん細胞を死滅させる作用があることを発見しました。今回の研究成果は、「麹菌産生物質デフェリフェリクリシンの抗がん作用」と題して、日本薬学会第142年会(会期2022年3月25日~28日)で発表します。

●デフェリフェリクリシンによる抗がん作用の検証試験
鉄はがん細胞の増殖に深くかかわることが知られており、鉄と結合する一部の物質には抗がん作用のあることが知られています。麹菌が作る成分Dfcyは、鉄と結合する性質があり、米麹やそれを原料とする日本酒などに含まれています。そこで、Dfcyの抗がん作用について検証試験を行い、甲南大学が抗がん作用の検証を、月桂冠が麹菌によるDfcyの製造および供給を担いました。
その結果、ヒト乳がん由来細胞をDfcyで処理することにより細胞の死滅が確認され、抗がん作用があることがわかりました。死滅する前の細胞には多数の空胞*が形成されており、マーカータンパク質**を用いて詳細に検証したところ、細胞内で不要になった成分が除去されるオートファジー性細胞死によるものであることが示されました。肺がん細胞や大腸がん細胞に対しても同様の死滅と空胞形成があったことから、他の多くのがん細胞腫でも同様の抗がん作用が期待できます。
この成果は、日本酒、甘酒、みそなどの発酵食品に含まれるDfcyの抗がん作用を明らかにした画期的なものです。また、今回明らかになったがん細胞の死滅機構は、新規抗がん剤の研究開発につながる成果であると考えられます。

*:細胞を顕微鏡観察した時に見られる円形や帯状などの細胞内小器官。代表的な細胞内小器官として、核やミトコンドリアが知られている。
**:マーカータンパク質としてGFP-LC3を発現させたヒト乳がん由来MCF-7細胞を用いた。

●学会での発表
学会名:日本薬学会第142年会(主催:公益社団法人日本薬学会)
日時:2022年3月27日 10:50 〜 12:30(オンラインで開催)
会場:名古屋国際会議場
演題:麹菌産生物質デフェリフェリクリシンの抗がん作用
発表者:〇豊田 駿1、芦田 侑加子1、浦野 諒人1、月生 雅也1、赤松 実憲1、取井 猛流1、戸所 健彦2、久田 博元2、石田 博樹2、西方 敬人1、川内 敬子1(1甲南大学フロンティア, 2月桂冠・総研)(○印は演者)

●日本薬学会
日本薬学会は、「くすり」に関係する研究者や技術者が、学術情報の交換を行い、学術文化の発展を目的とする団体。新しい医薬品の開発・製造、安全性の確認、臨床への供給など薬を使ってさまざまな病気を克服することを目的としている。明治13年(1880年)に設立され、の日本では最も古い学会の一つ。現在会員数1万7000人を数える。

●デフェリフェリクリシン(Dfcy)
Dfcyは、麹菌が生産するペプチドで、アミノ酸が6つ環状に繋がった構造をしています。日本酒醸造で用いる米麹はもちろん、日本酒、酒粕、甘酒にも含まれています。Dfcyは鉄と結合して赤褐色の着色成分「フェリクリシン」(以下Fcy)となるため、無色透明であることが求められる日本酒にとっては不要な物質でした。業界では着色原因となるFcyとDfcyを減少させる研究が進められ、現在では、それらの物質を作らせない技術が確立されています。月桂冠では、逆転の発想によりFcyとDfcyの有効活用を検討するために、大量生産技術に関する研究を進めるとともに、これまでに、鉄分吸収促進や抗酸化作用、尿酸値低減、抗炎症作用、美白作用、皮膚バリア機能といった機能性を解明してきました。また、植物への鉄分補給による生育促進作用も確認しています。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202203088323-O1-9w5S29f8
●月桂冠総合研究所
1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から業界に先駆けて設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般の基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいます(所長=石田博樹、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)。

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