SNSで注目「幽霊子育飴」...ってどんな飴？　京都の老舗飴店・20代目店主に聞いたらホッコリ

死してなお残る〝親の愛〟

みなとや幽霊子育飴本舗の現在の店主は、段塚きみ子さん。優しい声で話してくれた彼女は、20代目だと名乗った。

「幽霊子育飴」とは何か。その名前は、ある伝説に由来する。

今は昔、慶長四年京都の江村氏妻を葬りし後、数日を経て土中に幼児の泣き声あるをもって掘り返し見れば亡くなりし妻の産みたる児にてありき、然るに其の当時夜なよな飴を買いに来る婦人ありて幼児掘り出されたる後は、来らざるなりと。
此の児八才にて僧となり修行怠らず成長の後遂に、高吊な僧になる。
寛文六年三月十五日、六十八歳にて遷化し給う。されば此の家に販ける飴を誰いうとなく幽霊子育ての飴と唱え盛んに売り弘め、果ては薬飴とまでいわるゝに至る。（みなとや幽霊子育飴本舗公式サイトより引用）

子供を身ごもったまま亡くなり埋葬された母親が、夜ごと幽霊となって飴を買いに来て、墓の中で生まれた我が子に与えていた。亡くなった母の魂が、飴を届けることで子供の命を守っていた。

みなとや幽霊子育飴本舗では、そんな曰くを持つ〝命をつなぐ飴〟を、実に450年以上もの間作り続けているのだとか。

「幽霊子育飴」の材料は麦芽水あめと砂糖の2つのみ。前者が9に対し後者が1の割合で、「やさしい甘さの飴」だという。

「砂糖が1割ですから『甘い！』という感覚ではなく、昔ながらの甘さ。中には『おばあちゃんのところで食べた味や』と言われる子供さんや、『サツマイモの味』と言われる方もいます。麦芽水あめにはサツマイモも使われていますから、味に敏感な方はそう感じられるかもしれません」（段塚さん）

みなとや幽霊子育飴本舗があるのは、重要文化財「空也上人像」などを安置していることでも有名な六波羅蜜寺の近く。観光の際に前を通ったことがある人も、多いかもしれない。

そして、その時、きっとお店は開いていたに違いない。

段塚さんによると、お店は毎日午前10時から午後4時までオープンしている。

「一人でもお客さんに来ていただけたら、と思うのでお店は毎日開けています。だって遠くから来たのに店が閉まっていたら悲しいでしょう？　だから、午前10時から午後4時まで、毎日開けています」（段塚さん）

また、段塚さんによると、お店は〝利益度外視〟。

「できるだけ安くお客様に味わっていただきたいので、150グラム500円という値段をみんなの努力で据え置きにしています」（段塚さん）

1人だけかもしれないお客さんのために毎日お店を開け、この物価高の時代に値上げもしない。

「幽霊子育飴」の販売の裏には、まさにその名前の由来となった逸話のように、店主の深い思いやりがあった。

Xでの投稿をきっかけに、今までその存在を知らなかった人たちから「幽霊子育飴」が注目されていることについて、段塚さんは「喜んでおりますし、感謝しております」とコメント。

単純に舐めて味わう以外にも、冷やし飴にしたり飴湯にしたり、といった「幽霊子育飴」の楽しみ方も教えてくれた。

「（飴湯は）5倍のお湯、飴が40グラムやったら200CCのお湯で煮込んで、お好みでしょうが汁を入れる。汁だけやなくて、すりおろしてそのまま入れてもかまいません」（段塚さん）

これからの寒い季節はとても体が温まりそうだし、風邪や喉の調子が悪いときなどにもいいそうだ。

ハロウィンの時期に限らず、京都を訪れた時にはこの飴の優しさを味わってみてほしい。