「マタニティマークをつけて乗った満席バス。マークを見てくる老人と目を合わせないようにうつむくと...」(東京都・30代女性)
東京都在住の30代女性・たかおかさんは今、小学生の男の子を育てている。
その子を妊娠中の時のこと。マタニティマークをつけて混雑したバスに乗ったところ......
<たかおかさんからのお便り>
上の子のを妊娠してから、それまで毎日歩いて通っていた最寄り駅までの道をバスに乗って仕事に向かっていました。
妊娠中何かあっても怖いのでマタニティマークをつけていると、時々席を譲ってくださる方がいて、毎回とてもありがたい思いでした。
その日はバスが混んでいて、出口付近に立って乗車。すると、杖をもって優先席に座っていたおじいさんが私の方を見ていることに気付きました。
目を合わせないようにうつむくと「そこのひと!」
スリーピースのスーツをビシッと着て、おしゃれな帽子を被ったそのおじいさんの目線の先はマタニティマーク。
ちょうどSNSなどでマタニティマークをつけていたことで嫌な思いをした妊婦の話を見た頃だったので、私はなるべくおじいさんと目線を合わせないようにしようと下を向くことに。
すると、おじいさんが私に大きな声で話しかけてきました。
「そこのひと!ここにすわりなさい!」
なんと、おじいさんはわざわざ席から立ち上がり私に座るよう促したのです。
「いえいえ!大丈夫です!申し訳ないです!!」思わずそう答えると、「バスでゆれて転んだらお腹の子が大変だ。私は大丈夫だから。さあ、座りなさい」とにこやかに言ってくださり、私は申し訳なく思いながらも座らせていただきました。
とはいえやはり申し訳ないので、「すみません、譲ってくださり.........あの、お身体大丈夫ですか?」と尋ねると、おじいさんはこう仰ったのです。
「なあに、私は今年92歳だが足もしっかりさせるために鍛えているし、これからは老いていくだけだ。あなたのお子さんの将来の方が大切なのだから身体を大事にしなさい」
思わず声が出てしまって...
思わず、「92歳ですか!?もっとお若く見えました!!」と言ってしまいました。
杖はついていらっしゃいましたが、背筋がピンと伸びた、紳士という言葉が似合うかっこいいおじいさんだったので、そんなお年とは思わず、出た言葉でした。
しばらくお話して、バスが駅につきそうな時、そのおじいさんは「それでは、休み休みいきなさい、お達者で」とハキハキと言って降りていきました。
その後、何回も同じバスに乗りましたが、おじいさんとは一度もお会いできませんでした。
あの時お腹にいた子は、今は小学生。かっこいい紳士になるよう、頑張って育てています。
おじいさん、あの時席を譲ってくださりありがとうございました。今でもハキハキとお話されていることを心から願っています。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆さんの「『ありがとう』と伝えたいエピソード」「『ごめんなさい』を伝えたいエピソード」を募集している。
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