「お父さん、また新幹線乗ってよ」 末期がんで〝最期の場所〟に向かう叔父は、車掌の優しさのおかげで...
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Sさん(静岡県・50代女性)
Sさんには、新幹線に乗るたびに思い出す人がいる。
それは15年近く前の出会い。重病の叔父と一緒に、新幹線に乗っていた時のことだった。
<Sさんの体験談>
2010年2月9日の出来事です。
若い頃に離婚し、数年前に一人娘にも先立たれた叔父は、私の実家しか身寄りがありませんでした。
そんな彼が末期の肺がんだと診断され、最後はこちらで看取ろうと、九州まで迎えに行きました。
「お父さん、また新幹線乗ってよ
私の父(叔父にとっては兄)も末期ガンだったので、向かったのは母と私の二人。
飛行機移動を予定していましたが、酸素ボンベを使う場合は搭乗不可と分かり、急遽新幹線移動に変更。
叔父の負担軽減のために多目的室を予約したところ、車掌さんが定期的に見回りにきてくれ、優しい言葉をかけてくださいました。
途中、叔父が発熱したときも、車掌さんに助けられました。
叔父が汗をかいた肌着を交換したいと言うのですが、荷物は宅急便で発送ずみで手元にありません。
売店もなくて母と困っていると、状況を知った車掌さんが肌着を差し出してくださったのです。
「俺の肌着の替えだけど、洗濯して綺麗だから使って。お父さん、また新幹線乗ってよ」
申し訳ない気持ちとありがたい気持ち半々でしたが、お礼を言って頂戴しました。
着替えてサッパリした叔父が、気持ち良さそうな顔をしていたのが印象的です。
新幹線に乗る度に、思い出す優しさ
その後、なんとか東海地方の実家に到着し、父と叔父は数年ぶりに再会。
兄弟が固く握手している姿を見た時、少しは親孝行できたかなと思ったものです。
あの時は緊張と動揺でお名前すら聞けませんでしたが、車掌さん、あの時は本当にありがとうございました。車掌さんのお心遣いに大変救われました。
あれから1か月後、叔父は天寿を全うしました。
叔父はもう新幹線には乗れませんが、車掌さんのお優しい気持ちは母との共通の思い出になっています。
新幹線を利用するたび、車掌さんの優しさを思い出します。
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