ふるさと納税寄付額が「アレ」のおかげで300倍に!? 静岡・富士宮市は富士山産の魅力あふれるスゴイ街
2023年7月、Jタウンネット記者は、生活に欠かせない"アレ"と共に富士山のお膝元・静岡県富士宮市にいた。
"アレ"は、富士宮市「ふるさと納税返礼品」の超人気者。 "アレ"とその仲間たちの参戦以前である2015年度と直近の2022年度を比較すると、寄付額が300倍にもなっている。
"アレ"とはいったい、何者か。
トイレットペーパーである。
富士宮市内には、有名ブランド・エリエール(大王製紙)の工場が2か所もある。そこで製造されているトイレットペーパーやティッシュペーパーが、ふるさと納税の寄付額大躍進に一役も二役も買っているらしいのだ。
エリエール本社を直撃 with トイレットペーパー
富士宮市はエリエール以外にも多くの製紙工場が存在する、国内有数の「紙のまち」だ。
いったいなぜ? どんな理由が? 記者とトイレットペーパーは富士宮市内にあるエリエールペーパーの本社を直撃した。
同社は1939年に富士宮市内で製紙を開始。82年にはトイレットペーパーやティッシュペーパーの製造が始まった。
この地で紙づくりをはじめた理由を、総務部総務課の山田芳紀課長は次のように説明する。
「富士宮は水が豊富な場所で、元々製紙工場の多い地帯だったことからここにしたのです」
「紙づくりは、まず木材や古紙を水の中で薬品と反応させることで繊維を取り出し、紙の元となるパルプ作りから始まります。
次に、そのパルプを水に溶かして汚れなどを取り除いた後、水分を抜いて乾燥させながら薄いシート状にしていくことで、紙ができます。
というように、紙をつくる段階だけでもこれだけの水が必要になってきます」
富士宮では、市内の至るところから地下水が湧き出ている。この地下水は、雪解け水をはじめとした、富士山からの恵みだ。そんな豊かな水が、エリエールペーパーをはじめ、多くの製紙会社にとって、なくてはならないものなのだ。
「尚且つこの水、キレイな水が必要で、まさか海水ってわけにも行かないし泥水というわけにもいきません。
汚れた水を使えば当然紙の品質は落ちます。
それで一番影響を受けるのは色調。紙の白色度を落としてしまうので品質は悪化します」
「最近は環境への配慮から、水の再利用や古紙を原料とする割合が増えていますが、紙に染みができたり、製造途中で紙が切れてしまう可能性が高まり、これもまた品質に直結してしまいます。
いくら再生してもそこそこキレイになるだけで清水になるわけじゃありませんし、なので、紙を生産するには良質な水が豊富に必要ということに繋がるのです」
エリエールペーパーは富士宮市内に2つの工場を持ち、様々な紙製品を製造している。ふるさと納税の人気上位を独占するトイレットペーパーやティッシュペーパーを製造しているのは、「富士宮工場」だ。
富士宮工場は、エリエールペーパーの主力工場の一つ。ここで作られたトイレットペーパーやティッシュペーパーは北海道を含む東日本全域で販売される。富士宮市内を流れる豊かな水は、多くの人々の清潔な暮らしを支えているのだ。
あなたが東日本で生活しているなら、家や会社、出先のトイレでお尻をふいてくれているのは、富士山の恵みかもしれない。
そして、記者が横浜市内の自宅から連れてきたエリエールのトイレットペーパーも、その一員なのかも――。
水のまち、富士宮をトイペと巡ってみたら...
富士宮市がどれほど水の豊かな場所なのか。それは、街を歩いただけですぐに分かる。
まず、至るところに川が流れているのだ。
たとえばこれは、市内を流れる神田川。富士山をご神体とする「富士山本宮浅間大社」の境内にある国の特別指定天然記念物「湧玉池(わくたまいけ)」が源となっている。
富士山の雪解け水が溶岩の間から湧き出す湧玉池を覗くと、コポコポと水が噴き出す様子を見ることができる。1秒間に2.4キロリットルほどの水が、まさに玉のように湧いているそうだ。
水はとても冷たくて、池や川に近づくと、ぐっと体感温度が下がる。記者とトイレットペーパーが富士宮を訪れたのはよく晴れた暑い夏の日だったが、過ごしやすい水辺には多くの地元民がいた。
楽しそうに遊ぶ子供たち、近くに腰を下ろして涼を取る大人たち。富士宮市民は水と共に生きている。
地元民だけでなく観光客にも人気のスポットも、水が作った。
富士山の世界遺産構成資産である「白糸の滝」では、一面の岩壁から大小さまざまな滝が流れ落ちる。まさしく「白糸」のような様は圧巻だ。
また、源頼朝が富士の巻狩りで近くに陣を張ったことから名づけられた「陣馬の滝」は、水との距離がとても近く、人々はその驚くほど冷たい水とのふれあいを楽しんでいた。
歩いているだけで汗が止まらないほどの猛暑日だったのだが、滝のマイナスイオンや水音は、そんなうだるような暑さも忘れさせてくれた。富士山からの恵みに、頭があがらない......。
ちなみに、富士宮市のふるさと納税寄付金はこれらの滝など自然環境の保全のためにも使われる。富士の恵みはトイレットペーパーを生み出し、トイレットペーパーは富士の恵みを支えているのだ。
富士山の恵みは、「美味しい」の源にも
富士宮で体験できる富士山の恵みは、まだまだ、こんなもんじゃない。豊かな湧き水は、たくさんの「美味しいもの」の源にもなっているのだ!
例えば、1960年から酪農を行う「いでぼく」にいる牛たちは、高原の新鮮な空気とみずみずしい湧き水で健康に育ち、良質な牛乳をたくさん出す。
この牧場では「乳牛」ではなく「命」を育てるという思いで、排泄や睡眠など、全ての時間を「牛」の生活リズムにあわせている。ストレスの少ない環境で育った牛たちの牛乳は、さっぱりしていて飲みやすい。後味がこんなにすっきりしている牛乳を飲んだのは、初めてで驚いた。
いでぼくの拠点は市内に2か所あり、それぞれこだわりの牛乳で作ったジェラートやソフトクリーム、ふるさと納税でも人気のチーズやヨーグルトの販売や、それらを使用したフードメニューの提供も行っている。
牛たちと富士山を眺めながら食べたソフトクリームは、とにかく濃厚でなめらかでおいしい!牛乳の風味が濃くて、だけどくどくもなく、一瞬で食べ終えてしまった。
市街地から車ですぐのところに、牛たちがのんびり暮らしているのどかな風景があるなんて、なんだかとても不思議な感じがした。
市内にはいでぼく以外にもたくさんの牧場があり、至るところで新鮮な牛乳、そして美味しい乳製品を楽しむことができるので、いろいろ比べてみるのもいいだろう。1日だとお腹が緩くなってトイレットペーパーがたくさん必要になってしまうかもしれないので、何日もかけて、ゆっくりと......。
その合間には、養豚や養鶏も盛んな富士宮で作られたお肉や卵を楽しめるし。うん、最強のプランである。
世界で評価される「SAKE」も富士山が育てました
富士宮では「ニジマス」の養殖も有名だ。
静岡県はニジマスの生産量全国1位で、その中でも富士宮の生産量が最も多い。冷たくて綺麗な水を好むニジマスにとって、最高の環境なのだ。
静岡県の水産・海洋技術研究所「富士養鱒場」の敷地内では、至るところから湧き出る水を活用して、なんと100個ほどの養鱒用の池を作っている。そこで育つのが、富士養鱒漁業協同組合のプレミアムブランドニジマス「富士山の湧水が育てた大々鱒 紅富士」をはじめとした、多くのニジマス。冷たく、美しく、そして多くのミネラルを含んだ富士山の湧き水でじっくり育てることで、上品な脂が適度に乗り、旨味が凝縮されたおいしいニジマスになるのだという。
ニジマスが育つくらい綺麗な富士山の水は、こんな「和」の味も育てている。
ワサビだ。こちらも静岡県が産出量全国一位。伊豆市や静岡市のものが有名だが、豊かで冷たい富士山からの湧き水を利用し、富士宮でも育てられている。陣馬の滝がある猪之頭地区では大正時代からワサビの栽培がおこなわれているという。
地酒づくりにも、富士山の水は使用されている。
世界最大級の品評会「インターナショナルワインチャレンジ」のSAKE部門 純米酒の部で二冠を達成している「富士高砂酒造」の仕込み水も、富士山の伏流水だ。
富士山に降った雨水や雪解け水が5層の地層を経て、100年かけてこの地までやってくると言い伝えられていたことから、この酒蔵では富士山の伏流水のことを「百年水」と呼んでいる。
「高砂 山廃純米辛口」も、伝統の「山廃づくり」に「百年水」の柔らかさが絶妙にマッチしたことで、どんな温度で飲んでも楽しめる逸品に仕上がっているそうだ。
あの殿堂入りご当地グルメだって、富士山の恵みです
水が豊かということは野菜も豊かということで、JAふじ伊豆が運営するファーマーズマーケット「う宮~な」(うみゃ~な)は美味しそうな農産物がズラリと並ぶ圧巻の場所。
開店後すぐに訪れたところ、地元農家の人たちがどんどん野菜を陳列していて、活気があった。見るからに新鮮な夏野菜たちは、並べられるそばからドシドシ売れていく。地元民から観光客まで、多くの人が訪れているそうだ。
さて、ここまで敢えて言及しなかったが、「富士宮」と聞けばきっと皆さん、アレを思い浮かべるだろう。
そう、B-1グランプリ殿堂入りのご当地グルメ「富士宮やきそば」だ。
当然のことながら、これも富士山の恵み。なぜか? 「富士宮やきそば」の特徴であるコシのある麺は、豊かな伏流水と独自の製法によって作られているからである。そして定番の具材・キャベツも富士宮の名産品のひとつだ。
富士山本宮浅間大社近くの「お宮横丁」では、そんな富士宮やきそばの食べ比べが可能。スタンダードから変化球まで、店ごとの具材や味付けの違いが楽しめるので、富士宮やきそばファンも初心者も、ここなら満足できそうだ。
スタンダードで濃厚なソースも、地元民で好きな人が多いという塩味も、どっちも美味しい!
富士宮やきそばは「肉かす」というラードを搾ったあとの豚肉が入っているのも特徴だが、これがまた焼きそばにコクを生んでいた。ちなみにあえて記者のイチオシをあげるとすれば、かなり悩ましいが......富士宮やきそば専門店・すぎ本の「ミックス焼きそば」!肉だけではなくいかや桜海老も入っていてボリューム満点なのが嬉しい、なんとも贅沢な焼きそばだった。
ちなみに、お宮横丁では、飲み水も富士山の湧き水だった。
今回、富士宮を訪れて目にしたもの、手にしたもの、そして口にしたもの。それら全てが、富士山の恵みによって育まれている。
富士山が織りなす富士宮の魅力に身も心も大満足。それにお腹もいっぱいになった。
ふるさと納税で富士宮市からトイレットペーパーをゲットすると、こんなに素敵な富士山の恵みの一部になる。それってなんだか素敵じゃないか?
もちろん、トイレットペーパー以外にも魅力的な返礼品がたくさんある。やきそば、牛乳、バターにニジマス、お肉に卵、野菜やフルーツ......。
寄付したことがある人もない人も、ぜひふるさと納税サイトを一度覗いてみてほしい。
<企画編集・Jタウンネット>