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パナソニックも「影響少ない」って言ってます 「タワマン高層階ではお米が美味しく炊けない」アピールに反論「長野県民に喧嘩売ってんのか」

松葉 純一

松葉 純一

2023.03.05 08:00
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「タワマン高層階でお米炊くと美味しくない論法、長野県民に喧嘩売ってんのか」

2023年2月17日、そんな呟きと共に投稿された次のような図が、ツイッターで話題となっている。

「おもしろ地理」(@omoshirochiri)さんのツイートより
「おもしろ地理」(@omoshirochiri)さんのツイートより

ツイッター上ではしばしば、タワーマンションに住む人々の暮らしや悩みをストーリー仕立てでつぶやく「#タワマン文学」なるツイートが話題となる。

「タワマン高層階だと、お米が上手に炊けない」というのは「タワマン文学」ではお決まりの展開だ。標高が高いと沸点が下がるから、というのがその理由らしい。

はたして本当なのか? それとも単なるネタなのか? まったく定かでないのだが、どことなく「ありがち」な気がするからか、「#タワマン文学」の決めゼリフとして、すっかり定着してしまっている。

しかし、東京・湾岸のタワーマンション最上階より、はるかに標高が上の場所に住んでいる人もいる。たとえば、長野県民だ。

「おもしろ地理」(@omoshirochiri)さんが投稿した図によれば、日本で最も背が高いタワーマンションの高さが「247メートル」なのに対し、長野県の平均標高は「1132メートル」。ほぼ5倍の高さだ。

タワマン最上階が「お米が上手に炊けない」高さなのであれば、長野県民はもっと厳しい状況になっている、ということになってしまう。

「おもしろ地理」さんはいったいどんなきっかけでこの画像をツイートしたのだろう。そして何より、タワマン高層階で「お米が上手に炊けない」のは本当なのか。

Jタウンネット記者は、投稿者「おもしろ地理」さんと、炊飯器を販売する家電メーカー大手のパナソニックに話を聞いてみた。

「タワマン高層階で炊くご飯は美味しくなくて~」

地理系Youtuber(https://youtube.com/@omoshirochiri)であり、普段から地理雑学をツイートしている「おもしろ地理」さんは、ツイートのきっかけについて、こう語った。

「『タワマン文学』のツイートがきっかけです。
ツイートの背景にあるのは、私の興味関心です。もし『タワマンでお米が美味しくない』なら、平均標高が高い都道府県、長野県(1132メートル)や山梨県(995メートル)、群馬県(764メートル)や岐阜県(721メートル)はどうなるんや、と。ただ、地理系Youtuberとして、観光や動画の取材で長野に何度も訪れた経験と、長野県民の友人もいるので、勝手ながら長野県民の気持ちを代弁しようと思いました」(おもしろ地理」さん)
長野県川上村の風景(photoACより)
長野県川上村の風景(photoACより)

ほかにもタワマン高層階よりも標高の高い場所に住んでいる人々はいるが、中でも馴染みのある長野県民の気持ちもを代弁したという「おもしろ地理」さん。

実際、長野県の炊飯事情はどうなのだろう?

ツイッターでは「おもしろ地理」さんの投稿に対し、こんな声が寄せられている。

「ウチの実家の辺りの標高も290メートル以上あるみたいですけどご飯美味しいです」
「市街地限定なら標高760メートルの諏訪市でもかなり高いほうですが、これくらいの標高で炊飯して味の差が分かるかは気になるところです」
「確かに夫の長野の実家も標高1000メートル超えてるが特に米は不味くない。 家の前の湧き水のためかなとも思ったが、炊飯器の性能も特に悪くないと思う」
「栄養たっぷりの粘土質の田んぼで美味しいお米が採れて、日本で1番標高の高いほぼ源水という、とても美味しいお水でお米を炊けるのでそりゃもう美味しく炊けますよ。最近の炊飯器も圧力タイプですしね 但し一部硬水の地域のお水で炊くと味は落ちます お米は軟水が一番です」

どうやら長野県でも基本的にお米は美味しく炊けている様子。

では、炊飯器的には標高の高さは、お米の美味しさに関係してくるのだろうか。してくるとしたら、どこから?

Jタウンネット記者は、炊飯器も取り扱っている家電メーカー・パナソニックを取材。広報の担当者が応じてくれた。

炊きあがりのおいしさに影響が出る標高は...

担当者によれば、おいしいごはんを炊くためには、摂氏98度以上のお湯で20分以上かける必要がある。標高が高くなると水の沸点が下がり、沸点が摂氏98度を下回る環境下では、炊き上がった米のおいしさに影響が出てくるという。

そこで、今回話題となっているそれぞれの場所について聞いてみた。

――タワーマンション高層階(標高200メートル以上)ではいかがですか?

「標高200メートル程度であれば、影響は少ないと考えます」(パナソニック広報担当者)
高層階でも、おいしく炊けます(画像はイメージ)
高層階でも、おいしく炊けます(画像はイメージ)

――長野県、山梨県、岐阜県など、もっと標高が高い地域では、いかがでしょうか?

「標高が600メートル以上になると、炊き上がりのおいしさにいくらか影響が出てくると考えます」(パナソニック広報担当者)

だからと言って標高の高い地域に住む人たちが美味しくお米を炊けないわけではない。パナソニック広報担当者は、図を示した。

図表提供:パナソニック株式会社
図表提供:パナソニック株式会社
「圧力式炊飯器は、圧力を高めることで沸点を上げることができますので、沸点の影響は少なくなります」(パナソニック広報担当者)

図を見てみると、圧力なし炊飯器でも標高600メートルまでは沸点が98度以上。日本で一番高いタワー・東京スカイツリー(634メートル)のてっぺんでは難しいかもしれないが、日本で一番高いビル・あべのハルカス(300メートル)の最上階でも、問題はない。

圧力炊飯器であれば、標高が2000メートルを超えていても沸点が98度を超えていることがわかる。日本で最も標高が高い場所に村役場を構えているのが長野県川上村の1185メートルなので、日本のだいたいの場所で美味しいお米を炊けそうだ。

というわけで、タワマンでも、長野でも、お米を美味しく炊くことはできる。

「うちはタワマン高層階だからお米がうまく炊けないんだよね」と言っている人がいたら、そこには何か「別の問題」が潜んでいるのだろう。

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