「2歳の息子とお出かけ中に、突然の夕立。駅で雨宿りしてたら、見知らぬ女子中学生に『壊れた傘』を渡されて...」（埼玉県・30代女性）

シリーズ読者投稿～あの時、あなたに出会えなければ～　投稿者：Yさん（埼玉県・30代女性）

その日、2歳の息子を連れて出かけていたYさんは、突然の大雨のため、駅で足止めを食らってしまった。

そこに声をかけてきたのは、見知らぬ女子中学生。彼女はYさんに傘を差しだしてきた。

もう穴が開いていて、捨てようと思っているものだと言うのだが......。

＜Yさんの体験談＞

長男がまだ2歳だった頃、電車が大好きな子供のために毎日のように色々な電車に乗り、幸せなひとときを過ごしていました。

その日もいつものように息子と二人で電車に乗って買い物に出掛けたのですが、夕方最寄り駅に到着すると、突然の雷雨。傘をもっていなかった私と息子はビニール傘を買おうと駅の小さな売店に立ち寄りましたが、突然の雨と帰宅ラッシュが重なり、すでに傘は売り切れていて......。

駅で雨宿りをしていると...

駅から自宅までは歩いて15分ほど。息子は疲れてぐずりだすし、タクシーもなかなか来ないし、私は途方に暮れるしかありません。どっと疲れて、息子と2人、駅で座り込んでしまいました。

周りには私たちと同じように突然の雷雨に身動きがとれなくなって、雨が止むのを待つサラリーマンや学生がたくさんいます。

5分ほど経った頃でしょうか。だんだん弱まる雨を見ながら息子をあやしていると、セーラー服を着た、恐らく中学生の女の子が声をかけてきたのです。

「この傘使ってください」

彼女はそう言って、持っていた傘を私たちに差し出していました。突然のことに驚きながらも、私はとっさに「ありがとう！でも大丈夫だよ。ありがとうね」と答えました。

すると彼女は、こう言ったのです。

「実はもうこの傘こわれてしまっているんです」

「穴も空いているし、今日使ったら捨てようと思っていたので」

「穴も空いているし、今日使ったら捨てようと思っていたので使ってください。 うちはすぐそこなんです」

彼女にじっと目を見つめられた私は咄嗟に「勇気をだして声をかけてくれた好意を無駄にしてはいけない」などと思い、「本当にいいの？ありがとう」とお礼を伝えて傘を受け取ることに。

すると女の子は、そのまま走って去っていきました。

私は息子に「優しいおねえちゃんがいたねぇ」と話しかけながらもジーンと胸が熱くなり、涙してしまいました。

「ありがたいな、でも申し訳なかった、もっとちゃんとお礼を言えばよかった」。そんなことを考えながら、私は傘を開きました。

その傘は壊れてなどいませんでした。もちろん穴も空いていなかったんです。

「優しい嘘」に感動

あの女の子は、小さな息子を連れた疲れ切った私を見て、声をかけてくれたのだと思います。

そして、私達が遠慮することを分かっていて、咄嗟に壊れていると優しい嘘をつき、傘を受け取りやすくしてくれたのでしょう。

10代でそんな思いやりを持てるなんて。。。

あれから10年。あの雨の日の女の子はどんな素敵な女性になっていることでしょう。

彼女の現在が幸福に溢れていますように。

そして、私があの日とても感動し、感謝したことを、どうにか彼女に伝えたい。

あのときは本当にありがとうございました。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて！

名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。

Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。

読者投稿フォームもしくは公式ツイッター（＠jtown_net）のダイレクトメッセージ、メール（toko@j-town.net）から、具体的な内容（どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度～）、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢（20代、30代など大まかで結構です）、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。

（※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください）