北海道の焼きそばは「やき弁」だけじゃない! 道民が愛する2種をマニアが徹底解説
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第八十回 北海道で愛される焼そばの袋麺「ホンコンやきそば」と「焼そばやきっぺ」を食べ比べ 文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。
「ご当地カップ麺」連載の第八十回目となる今回は、北海道で愛される焼そばの袋麺、エスビー食品の「ホンコンやきそば」と東洋水産の「焼そばやきっぺ」をご紹介します。
どちらも長い歴史をもつ商品で、北海道内のスーパーなどでは、全国的に定番商品である「日清焼そば」を置いていなくても、この2品はほぼ必ず店頭に並んでいるほどの存在です。
北海道の焼そばと言えば、カップ焼そば「やきそば弁当」を真っ先に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
「UFO」や「ペヤング」などはどこ吹く風、北海道民のソウルフードとして圧倒的な支持を集めています。北海道限定商品ながらその知名度は全国的。北海道土産としてもおなじみです。
しかしその間隙を縫うように、今回紹介する袋麺「ホンコンやきそば」や「焼そばやきっぺ」も、北海道でインスタント焼そばの定番として定着しています。
北海道で根付いているのは果たしてどんな商品なのでしょうか。
「ホンコンやきそば」と「焼そばやきっぺ」の内容物
「ホンコンやきそば」には、麺と「ふりかけ」が入っています。
麺は薄いソース色で、麺自体に味がつけられており、焼そばながら「チキンラーメン」に近く、そのままパリポリ食べてもお菓子として十分においしい塩加減です。
「焼そばやきっぺ」には、麺の他に「液体ソース」と「ふりかけ」が入っています。
麺は白っぽい色味で、「ホンコンやきそば」のような味付けは施されていません。麺量は「ホンコンやきそば」の84グラムに対し93グラムでひとまわり大きいです。
両商品とも「ふりかけ」のみで具は入っていないので、冷凍食品の「肉入りカット野菜」を使用します。ただ、冷凍食品は水分が多いので、冷蔵のカット野菜を使う方がソースの濃さを保つには良いかもしれません。
焼そば袋麺の作り方
1963年に発売された「日清焼そば」のヒットにより、焼そば袋麺は大手を始めとして多くのメーカーで作られましたが、1970年代にカップ焼そばやチルド焼そばが登場したことで、焼そばの主流ではなくなりました。
若い方の中には、袋麺の焼そばにあまり馴染みのない方も多いと思うので、改めて作り方をご紹介します。
袋麺の焼そばは、フライパンで調理します。
沸騰したお湯に麺を入れ、箸で返しながら、水気がなくなるまでほぐしていきます。
お湯の量は「ホンコンやきそば」は200ミリ、「焼そばやきっぺ」は220ミリと定められています。
入れ過ぎると水気をなくすのに時間がかかってしまい、風味も損なわれます。
特に「ホンコンやきそば」は麺にソースの味がつけられているため、お湯を入れすぎて捨ててしまうと味が薄くなってしまうので注意が必要です。
自分で用意した具を入れる場合は、麺と一緒にお湯に投入するか、別途味付けして添えます。今回は、用意した冷食の具を麺と一緒にお湯に投入しました。
「ホンコンやきそば」は水気がなくなったら完成。「焼そばやきっぺ」は「液体スープ」を入れて麺とソースを混ぜ合わせます。
カップ麺に比べると手間がかかりますが、比較的安価でお手軽の楽しめるのが魅力でしょうか。
ジャンキーさはあまりなく、優しい味の「ホンコンやきそば」
「ホンコンやきそば」は「日清焼そば」と同じ1963年に全国で発売されたエスビー食品の商品で、現在は販路が縮小されて、北海道、宮城県、大分県の一部で売られています。
いかにも昔からあるクラシックなパッケージデザインですが、描かれている「中華コック長」とは一体ナニモノなのでしょうか。「ホンコン」と関係しているのは間違いなさそうです。
ほんのりとソースが香りますが、かなりの薄味で、今回野菜類を入れたことでいっそう薄味になっています。
現在主流の焼そばソースの傾向は、酸味や甘みを効かせたり、スパイスが強く感じられたりと、メリハリのついた味のものが多いですが、「ホンコンやきそば」のソースは刺激がまったくない昔懐かしの味。調理前の麺をパリポリ食べても「ベビースターラーメン」より薄味なくらいです。
今回のように具を入れると味が薄くなるので、薄味が気になる場合は具を入れないか、具を別調理で味付けして加える必要があります。
麺は中太程度で、焼そばとしては太め。
ソースがうす味なので、太めの麺の油揚げ麺臭が前面に出てくるバランスとなっており、食事というより間食とかおやつ感が強いです。
ふりかけにはアオサやごまが入っていて量は多め。ソースがうす味なことで、香ばしさが目立って感じられました。
インスタントの焼そばといえばジャンキーな味のイメージが強いですが、油揚げ麺臭が感じられる以外はやさしい味です。
「焼そばやきっぺ」は、袋麺版「やきそば弁当」?
続いては東洋水産の「焼そばやきっぺ」。1977年に発売開始された商品です。
同じ東洋水産の「やきそば弁当」の発売が1975年なので、袋麺ながらカップ麺より後発の商品となっています。
「ホンコンやきそば」とは違い完全に北海道限定商品で、「やきそば弁当」と同じ「東洋水産 北海道工場」で生産されています。
ソースはやや甘めで、刺さらない味が特徴。「ホンコンやきそば」ほど薄味ではないですが、酸味やスパイスなどはあまり強くなく、最近のカップ焼そばに見られる刺激の強さはありません。
東洋水産はチルド焼そばも有名ですが、チルド焼そばはキレのある濃いめのソース味が特徴なのに対し、「やきそば弁当」のソースは少し甘めのやさしい味。
今回のソースは「やきそば弁当」に近く、刺さらない甘めの味はとてもよく似ていました。
麺は中細で縮れが強く、いかにもインスタント麺らしい形状となっています。ソースのりが良く、麺とソースに一体感がありました。
ふりかけにはアオサと紅生姜が入っていますが、これがまた「やきそば弁当」のふりかけとよく似ています。
名物の中華スープは入っておらず、麺も形状が違いますが、ソースとふりかけは「やきそば弁当」と似ており、袋麺版「やきそば弁当」と言っても良さそうです。
「日清やきそば」も食べてみた!
「世界初のインスタント焼そば」とされる「日清焼そば」も、2品と比較のために食べてみます。
1963年に発売され、現在も全国的に定番商品。袋麺の味が再現されたカップ麺も発売されていたことがあります。
スパイスを強く効かせたキレのあるソースとストレートに近い緩やかな縮れ麺が特徴で、薄味で素朴な「ホンコンやきそば」や甘み強めでやさしい「焼そばやきっぺ」とはまったく違う味。麺の縮れも控えめです。
「日清焼そば」は家庭で焼そばを食べる文化を定着させた立役者。
後発の多くのチルド焼そば商品との共通部分が多くなっています。
スタンダードなソースの味とインスタント然していない形状の麺は、幼い頃から「日清焼そば」を食べてきた人はもちろん、チルド焼そばを食べてきた人にとっても親しみのある味ではないでしょうか。
北海道で愛される焼そばは「やきそば弁当」だけではない
というわけで、北海道で愛される焼そば袋麺2品と全国でお馴染みの「日清焼そば」を食べ比べてみました。
「ホンコンやきそば」は薄味で懐かしい味わい、「焼そばやきっぺ」は「やきそば弁当」に共通する甘めのソースやふりかけの味が印象的でした。
どちらも極端な味ではないところが、飽きられずに北海道で長く愛されてきた秘訣ではないでしょうか。
東洋水産からは他にも袋麺の焼そばが出ており、サンヨー食品の「アラビヤン焼そば」や明星食品の「鉄板焼そば」など、他社からも多くの商品が出ています。今回のように、色々食べ比べてみると面白そうですね。
北海道のお土産としても、「やきそば弁当」と一緒に渡すと会話にひとネタ加わって良いかもしれません。