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あんなに安かったのに、なぜ? 今や唯一の「旧3級品」...増税前に、沖縄限定たばこ「うるま」の歴史を振り返る

井上 祐亮

井上 祐亮

2021.09.30 11:00
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沖縄ご当地たばこ「うるま」(写真は編集部が2021年9月下旬撮影、以下同)
沖縄ご当地たばこ「うるま」(写真は編集部が2021年9月下旬撮影、以下同)

みなさん、「うるま」というたばこをご存知だろうか。

Jタウンネットでは2021年8月30日、「日本のタバコと海外のタバコ、どれくらい味が違う? 中国&インドネシアの銘柄と吸い比べてみた」という記事を配信。愛煙家の筆者が、中国の「中南海」やインドネシアの「ガラム」を日本の代表的なたばこと吸い比べた。しかし、一口に日本のたばこと言っても、銘柄はさまざまだ。

タツノオトシゴをあしらったパッケージがなんとも愛らしいこの「うるま」は、日本たばこ産業(JT)が製造・販売している沖縄県地域固有の銘柄の紙巻きたばこ。

沖縄以外でも取り扱っているたばこ専門店がないわけではないが、県外の人間にとってはなかなか見ることのない存在だ。

沖縄らしい味がするのだろうか......?

気になった記者は、たばこ専門の通販サイトで「うるま」購入してみた。

もう安くない、旧3級品

紙巻きたばこ「うるま」は、「旧3級品」に分類される商品だ。

JTの前身、日本専売公社の製造する紙巻きたばこは、主原料とする葉タバコの品質により、1~3級に分けられ、価格にも差が付けられていた。3級は等級が最も下の「中質及び下質の葉たばこを主原料に用いて調製したもの」(1965年施行、85年廃止の「製造たばこ定価法」より)。85年の「たばこ事業法」で品質の分類は廃止されたが、「わかば」「エコー」「しんせい」「ゴールデンバット」「うるま」「バイオレット」の6銘柄は「旧3級品」として扱われてきた。しかし、18年に「しんせい」と「バイオレット」、19年には「わかば」「エコー」「ゴールデンバット」がJTの在庫売り尽くしをもって廃止となることが発表され、現在も販売されているのは「うるま」だけだ(「わかば」「エコー」は紙巻きたばこではなく、葉巻の一種リトルシガーとしてリニューアルしている)。

ソフトパッケージ。封かん紙は、サンゴ礁をイメージした?
ソフトパッケージ。封かん紙は、サンゴ礁をイメージした?

21年9月現在の価格はひと箱500円。

旧3級品に「安いたばこ」のイメージを持っている人は、驚いたかもしれない。たしかに、85年施行の「たばこ税法」により、「旧三級品」には税率の特例が適用され、価格が抑えられてきた。ほかのたばこと比べて、100円以上安いこともあったのだ。例えば、うるまは18年10月時点では、ひと箱360円だった。このころのメビウスは、480円だ。

しかしその特例も2015年に撤廃が決まり、段階的に税率が引き上げられることになった。

旧3級品の中で現在も残っているのが「うるま」一種だけになっているのは、この特例税率の撤廃より、手ごろな値段での販売が難しくなったことも大きい。

「わかば」などの廃止が発表された19年7月24日付けのプレスリリースでは、以下のような説明がなされている。

「旧3級品特別たばこ税率撤廃により、大幅に値上げせざるを得ず、お求めやすい価格での販売が困難となります。このため、10月以降、売り尽くしをもって販売を終了し、廃止することといたしました」
「旧3級品銘柄の一つである「うるま」については、その他銘柄同様に税額分として大幅な値上げを予定しておりますが、沖縄県地域固有の銘柄であり根強い支持をいただいておりますため販売を継続いたします」

「沖縄限定」のワケは?

そもそも、なぜ「うるま」が沖縄固有の銘柄なのかというと、もともと沖縄の企業が作っていたものだからだ。

1960年、当時まだ米軍の占領下にあった沖縄で、紙巻きたばこ「うるま」は誕生した。たばこの歴史を扱う書籍「たばこパッケージクロニクル」(たばこと塩の博物館監修)の「沖縄の本土復帰とたばこ」というコラムには、こんな記載がある。

「(占領下の)間、専売制度から離れた沖縄のたばこ産業は、民営産業として地道な発展を遂げていた。昭和26(1951)年に、琉球煙草株式会社が設立され、それに続いて合計3社が発足し、個性あふれるたばこが販売されていたのである」(冒頭括弧内は編集部記載)

戦後の沖縄における最初の煙草製造企業・琉球煙草。これが、「うるま」を作った会社である。

なお、「専売制度」とは、たばこの製造から販売までを国の管理によっておこなうこと。1904年7月に施行され、1985年に廃止された。詳しくはJタウンネットの記事「『昔は、たばこが安かった』←いったい、どのくらい?たばこの歴史と社会情勢を探る」で説明している。

パッケージには「since1960」とある
パッケージには「since1960」とある

その後1972年に沖縄が本土復帰する際、たばこ専売制施行にあたって沖縄のたばこも専売公社が製造・販売することになり、「琉球煙草」を含む3社は廃業。琉球煙草の工場は専売公社が買収し、那覇工場になった(参考:「日本たばこ産業―百年のあゆみ―」、日本たばこ産業刊行、2009年)。

この那覇工場は04年に閉鎖されたが、「うるま」の製造は県外の工場に引き継がれ、そして今に至るまで販売され続けている。

そんな沖縄の歴史が詰まった「うるま」。根強い支持を受けていると言うが、いったい、どんな味がするのだろうか。

たばこのフィルターが、アレとソックリ...?

「うるま」を開封
「うるま」を開封

「うるま」を開封すると、ほんのりバニラっぽいシガレットの匂いが漂った。

フィルター部分には、タツノオトシゴが金字でデザインされ、かわいい。

どこか、「ロングピース」にも似ているような。あちらは鳩がオリーブの葉を咥えているデザインであるが......。

上2本が「うるま」。下2本は「ロングピース」
上2本が「うるま」。下2本は「ロングピース」

白い巻紙に、白いフィルター。長さはロンピーよりも2ミリ程度短いようだ。

タールは17ミリなので、ちょっと「重め」だ。

ガツンとくる
ガツンとくる

火をつけると、香ばしい香りが口の中に広がる。ガツンと濃いたばこである。

沖縄ご当地たばこというくらいだから、てっきり南国の爽やかなフレーバーかなと思ったが、2口、3口と吸っても、やっぱり味の濃いたばこ。ロンピーはタールが21ミリだが、そちらよりキツイ気がする。

蒸し暑い沖縄で、泡盛を飲みながら味の濃いツマミを食べて......、その後吸いたくなる......、そんなたばこだった。

ちなみに、この「うるま」も21年10月の増税で530円に値上がりする。

参考までに、以下に筆者がまとめた「うるま」の販売価格の推移を記しておく。

72年...60円(専売公社として販売した年)
75年...80円
80年...100円
83年...120円
86年...140円
98年...160円
03年...180円
06年...190円
10年10月...250円
14年4月...260円
16年4月...290円
17年4月...320円
18年4月...360円
19年10月...450円
20年10月...500円
(06年までは「たばこパッケージクロニクル」巻末を参照。それ以降の価格は筆者が調査した)

いろんなたばこを吸い比べてみるのは楽しいが......いまやけっこう、贅沢な遊びになってしまったようだ。

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