「この道にわとり優先」 庭で鶏を飼う旅館に泊まったら、一品目が「鳥刺し」で...「なまのいのちの味がしました」
「ニワトリのおかげで、食事全体の味が鮮明でした」
成田悠輔さんによると、この看板の写真は、5月30日、旅館の周りをうろうろ散歩中に撮ったという。
「鹿児島県霧島市にある、忘れの里 雅叙苑という旅館です。当日ふと思い立ってはじめて行きました。一人で泊まったので、周りの老夫婦や母娘、カップルにちょっと不審そうな目で見られた気がします」
「鳥刺し」を食べた感想を聞くと、成田さんは「なまのいのちの味がしました。『生命』という言葉への手触りが深まった気がします」と答えた。
「最初のニワトリのおかげで、食事全体の味が鮮明でした。食後に飲んだ、竹に入れた薩摩焼酎をいろりで温めたやつも抜群な締めでした」
雅叙苑のウェブサイトを見てみると、2羽のニワトリが施設内の階段を慣れた様子でのぼっていく動画が掲載されていた。
また、「ある日の夕食」として、「地鶏の刺身盛り合わせ(自家農場で育った地鶏)」の記載が。
生き生きと歩き回るニワトリを見た直後に、新鮮な鳥刺し。とにかく印象に残る夕食であったことは確かだろう。
食事以外で、印象に残ったことは? と聞いてみた。
「風呂への全振りがよかったです。建物は安普請なところがあったり、サービスもちょっと素人っぽいところがあるんですが、だからこそ温泉の凄さが際立ちました。
半室内半露天のお風呂リビングも、川の真横の屋外ラムネ湯も、どの角度で入ってどっちを眺めても光の入り方や緑の覗き方が独特で複雑です。温泉の匂い、光や緑の色彩、横を流れる川の音色といったものがぐちゃぐちゃに混じりあって、何もない宿なのにすべてがあるようでした。
タクシーの運転手さんが『温泉以外なーんもないところだからねぇ』って言っていましたが、その貧しさを豊かさとして逆用する潔さがよかったです。とってつけたようなサウナとかもなくて、時流に無駄に乗ってないところもよかったです」(成田悠輔さん)
ウェブサイトによると、雅叙苑は「なつかしいふるさと」を再現した宿。かやぶき屋根の古民家を移築し、昔ながらの集落のようなつくりになっているという。
温泉は、約20トンの巨大な一枚岩をくりぬいて造られた大浴場に、自然に湧き出す自噴泉を活用した「うたせ湯・ラムネ湯」。そして、温泉付きの客室も複数ある。
成田さんの話から、これらの温泉を楽しむために、あらゆる施設が見事に整えられていることがうかがえる。
次にJタウンネット記者は、6月2日、「忘れの里 雅叙苑」に電話取材した。