子犬にしか見えないけど、実は... 側溝で「小っちゃくて元気なモフモフ」を見つけても、連れて帰っちゃダメな理由
「拾ったその子犬、実はタヌキです」
子犬と間違えて野生のタヌキを連れ帰ってしまう――そんな事態を防ぐための注意喚起が、ツイッターで注目を集めている。
今年もそろそろ注意喚起の季節です
「拾ったその子犬、実はタヌキです」
5~6月は排水溝などで子ダヌキが生まれています。無事に健康そうなら間違って連れて帰らないで
これは、ツイッターユーザーのみなみなみなさん(@oh_g_3)が2021年5月16日に投稿したつぶやきだ。
Jタウンネット記者がみなみなみなさんに話を聞いたところ、みなみなみなさん自身、かつて野生の子ダヌキを保護した経験がある、と話した。
排水溝で溺れていた子ダヌキ
「大雨の日に自分の家の排水溝で溺れている子ダヌキを救出したのがきっかけです。
他の兄弟は野生復帰できましたがアイちゃんだけは病気で視力を失い野生に帰すことができなかったので役所に終生飼養の申請をして保護することにしました」(みなみなみなさん)
「アイちゃん」と名付けられたそのタヌキは、みなみなみなさんのもとで幸せに暮らし、20年1月に天国へ旅立った。
保護した当初は、タヌキに関する情報があまりに少なく苦労したという。世話に必要なものや兄弟の野生復帰までの道のりをまとめ、「タヌキのアイちゃんの日常」というフォトブックとして自主制作した。現在もオンライン販売サービス「BOOTH」で販売している。
今回、ツイートで注意喚起をした意図について、みなみなみなさんは次のように説明する。
「5~6月は子ダヌキが生まれ巣の排水溝から出てくる時期です。子ダヌキが一匹しかいなかったとしても、それは親が餌を探しに行って留守番しているだけです。
それを勘違いして連れて帰ってしまうのは誘拐と同じですので、溺れているとかケガをしているとかでない限りはそっとしておいてほしいということを多くの人に知ってもらいたい」
タヌキは山や森の中だけでなく、住宅地に姿を現すこともある。もし、黒い子犬のように見える生き物を見つけたら、ただ留守番をしているだけの子ダヌキかもしれないので注意してほしい。
では、実際タヌキに遭遇しやすいのは、どんな場所だろうか。25日、麻布大学獣医学部の塚田英晴准教授にも取材した。
巣作りするのは土管や側溝、建物の床下
塚田准教授は、タヌキが出産する時期について「5~6月で間違いない」とした上で、以下のように説明した。
「出産場所ですが、タヌキは通常巣穴で子どもを生みます。自ら巣穴を掘ることはあまりなく、アナグマやキツネがほった穴を間借りすることが多いのですが、市街地に生息する都市ダヌキの場合、土管や側溝、建物の床下などで営巣することがよくあります。
さすがに天井が空いたような側溝にそのまま子どもを産み落とすことは少ないと思いますが、天井に蓋がしてある横穴のような構造の側溝であれば、出産場所として活用されることは少なくないと思います」
さらに、国内ではどのあたりの住宅地でタヌキと遭遇する可能性があるか尋ねると、
「国内のと言われるとなかなか広くて申し上げにくいのですが、例えば東京近郊の市街地であれば、結構どこにでも生息しているような状況になっています。
うちの大学(麻布大学)などは、相模原市の横浜線・矢部駅の近くに立地しており、住宅地に囲まれていますが、こんな場所でもタヌキは出没しますよ」
とのこと。
地方だけでなく、東京の市街地にも生息するタヌキ。いざ遭遇したときは、どのように対処するのが正解なのだろう。
「子ダヌキを見かけたとしても、怪我などをして明らかに身動きがとれないような場合を除けば、そっと見守ってあげるのが肝要でしょう。
たとえ子ダヌキだけしか見かけなくても、暗くなると、親がちゃんと世話に現れるはずです。ここで下手に手を出すと、子ダヌキを『誘拐する』ことにもなりかねません。
実際、こうした誤保護の事例が数多く確認されています」
塚田准教授のアドバイスも、みなみなみなさんの注意喚起と共通する部分が多い。
皆さんも万一、野生の子ダヌキに遭遇しても、かわいいからとお持ち帰りしないように気をつけよう。