スズメには桜の花をちぎって落とす習性があった その可愛すぎる「犯行の瞬間」がこちら
桜の花が散る姿といえば、花びらが一枚ずつヒラヒラと舞う光景を思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、桜の木のすぐ下に、きれいに咲いている花が丸ごとポトリと落ちているところを見たことはないだろうか?筆者は強い風や雨のせいでそうなるのかと思っていたのだが、実はこの現象、スズメが犯人の場合があるらしい。
2020年4月7日、その犯行の瞬間を収めた写真がツイッターに投稿され、注目を集めている。
撮影したのはスズメを中心に撮影する写真家・中野さとるさん(@aerial2009)。
このスズメは一体何をしているのか。中野さんの作品集「にっぽんスズメ歳時記」(カンゼン刊)にはこう書かれている。
「桜の木の下で花びらとともによく目にするのが、地面に丸ごと落ちている桜の花です。実はこれ、多くがスズメのしわざ。スズメが花ごとちぎって蜜を吸っているのです。
花粉をくちばしなどにつけ受粉の媒介者となることもなくただただ蜜を吸うだけ、ということから、この行動は『盗蜜』と呼ばれます」
せっかく咲いた花を蜜を吸うためにちぎってしまうとは、悪いやつだ。しかし、ラッパのように桜の花をくわえるスズメの愛らしさはたまらない。
中野さんのツイートには
「お花を持ってるみたいで可愛い」
「散らしちゃってるけど可愛い〜」
「スズメが蜜を吸った後に桜をぺって落とすと、くるくる回りながら落ちてくるのかわいいんだよね。桜はたまったもんじゃないのかもしれないけど」
などの反応が。スズメが可愛らしいだけでなく、スズメが落としてしまった花も可愛いらしい。桜の側からしてみれば、迷惑千万な話なのかもしれないが...。
スズメが花を落としても、桜はへっちゃら?
ツイートによると、スズメの盗蜜が広く見られるようになったのは最近のことらしい。
鳥類の研究を行うNPO法人・バードリサーチが2010年に発行した研究誌「Bird Research Vol.06」に掲載されたレポート「スズメの盗蜜によるサクラへの害を定量化する方法」(三上 修・三上かつら)によると、スズメの盗蜜は1990年前後の時点で、日本の広い範囲で観察されるようになっていた。
江戸時代中期の画家・三熊花顛(みくま・かてん、1730~1794)の「桜花小禽図」にもヤマザクラをつつくスズメの姿が描かれているため、その頃には盗蜜が行われていた可能性もある。
しかし、これが一般的な光景だったのか、珍しい情景を画家が捉えたものなのかはわからないそうだ。
ちなみに、スズメが桜の蜜を食べるときに花をちぎってしまうのは、くちばしが太く短いせいで、花の正面から蜜だけを吸うことができないからだと考えられるという。
では、このスズメの盗蜜が桜にとってどれくらい迷惑なものなのかというと、実はその影響はあまりないようだ。
前述のレポートによると、日本で最も多い桜の種類はソメイヨシノだが、これは接ぎ木などで増える品種。ソメイヨシノ同士で受粉しても、芽が出る種子は作られないとのこと。
なので、スズメがいくら花をちぎってしまったところで、ソメイヨシノの増殖には関係がないそうだ。
また、花が咲いている期間にスズメがどれくらいの花をちぎってしまうのか調査したところ、「1本の樹あたりせいぜい十数花」らしい。大きな桜の木には、数万から10万以上の花がつくと推測されるので、盗蜜が見た目の良し悪しに影響するとも考えにくいという。
スズメの行動が桜を害するとなれば不安だが、どうやらそその心配もあまりないらしい。桜もスズメもわたしたちにとって身近で馴染み深い存在。春ならではの可愛らしいコラボレーションを、一度はこの目で観察してみたいものだ。