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吸う人も吸わない人も快適な空間に 近鉄の新型特急「ひのとり」に喫煙室が導入された理由

井上 祐亮

井上 祐亮

2020.03.31 11:00
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2020年4月1日から改正健康増進法が全面施行される。それに伴い、屋内施設や飲食店などでの喫煙は原則禁止になり、鉄道からも「喫煙車両」が姿を消すことになる。

私鉄の有料特急のなかで唯一、座席でタバコが吸える車両を走らせてきた近畿日本鉄道も、2月1日から特急列車の座席禁煙化に舵を切った。

その矢先のことである。近鉄が3月14日にデビューした新型特急「ひのとり」に、喫煙ルームが設置されたのだ。

新型特急「ひのとり」と喫煙ルーム(画像は3月25日に編集部撮影、以下同)
新型特急「ひのとり」と喫煙ルーム(画像は3月25日に編集部撮影、以下同)

愛煙家である筆者にとってはタバコを吸う場所があるだけでも嬉しいが、世間的には「禁煙化が進む世の中の流れに少し逆行しているのでは...」と疑問符がつく選択だろう。いったいなぜ導入したのか。

Jタウンネットの取材に応じた広報担当者によれば、

「(タバコを)吸う・吸わないそれぞれのお客様に配慮した」

からだという。つまり、禁煙・喫煙者の双方が快適に過ごせる空間づくりをしているということだ。

メタリックな赤のボディが特徴的で、「くつろぎのアップデート」をコンセプトとする高級感溢れる「ひのとり」。どれほど喫煙者にとって快適なのだろう。

乗車するしか、確かめる方法はないではないか。

高級なタバコとともに至福のひととき

ひのとりの運行区間は、近鉄名古屋-大阪難波間である。デビューしたての列車だからだろうか。大阪難波駅にて、13時の発着時刻を待っていると、線路の端には鉄道ファンや旅行者たちがカメラ片手に待ち構えていた。

ほどなくして、赤と黒のメタリックなボディがやってきた。ひのとりである。ゴールド色であしらわれた鳥のマークからも、リッチな雰囲気が漂ってきた。

メタリックでカッコイイ
メタリックでカッコイイ

筆者が乗車したのは、6両編成の6号車。ひのとりは、1号車と6号車がプレミアム車両という3列(2列と1列)タイプで、残りがレギュラー車両で4列(2列ずづ)という仕様である。

こちらは1号車後方からの眺め。一つ一つの席が広々としている。
こちらは1号車後方からの眺め。一つ一つの席が広々としている。

プレミアムシートは、ふかふかで座り心地抜群だ。

広々としている...。凄くリッチな感じ
広々としている...。凄くリッチな感じ

肘掛けにはリクライニング用の操作パネルが備え付けられ、ボタン1つで背もたれを倒すことができ、レッグレストも伸び縮みする。ちなみにレギュラー車両を含む全席に、バックシェルが付いている。そのため背もたれを倒しても後席の人に迷惑をかけない神仕様なのである...。

ゆったりと足を伸ばしながら小休止していると、体がウズウズしてきた。タバコが吸いたいのである。

「そうだ。喫煙車両には肘掛けに灰皿が設置されていたけど、ひのとりはカップホルダーになってしまっている。早く喫煙ルームに行かねば...」(心の声)

筆者は、ひのとりに乗車する前にタバコ専門店にて、とある銘柄を購入しておいた。それは日本たばこ産業(JT)が販売する「The Peace」である。

一箱1000円(税込み)。ひのとりに負けない高級感である
一箱1000円(税込み)。ひのとりに負けない高級感である

ひのとりに負けない高級感を放っているだろう。封を開けると、箱の中から缶ケースが登場。さらに缶を開き、ブルーのフィルムをめくる。吸うと「バニラのような香り」がすると言われるピースだが、吸う前から芳醇な香りが漂い、テンションはマックスである。

筆者は、ウキウキしたテンションを維持したまま、3号車に設置されている喫煙ルームを目指した。プレミアム車両にはカフェスポットが設置されているため、挽きたてのコーヒーを100円玉2枚で購入。

挽きたてのコーヒーが飲めるなんて、素晴らしい
挽きたてのコーヒーが飲めるなんて、素晴らしい

また、2号車と5号車にはベンチが設置されている。大きな窓から外の景色を楽しみながら、喫煙ルームで「The Peace」を存分に味わうために気持ちを落ち着かせた。

筆者が座るプレミアム車両の6号車から、カフェスポット、ベンチスペースと足を進め、ついに喫煙ルームに到着した。

喫煙ルーム最高だった

幸せが始まる・・・
幸せが始まる・・・

左手には「The Peace」。右手にはカップコーヒー。喫煙ルームで気のゆくままにタバコを吸った。大人3人程度が入ることが出来るスペースである。少し狭い気もしたが、流石ひのとりといったところだろうか。窓がめちゃくちゃ大きいのだ。外の景色が狭さを感じさせない。

筆者は身長が約175センチだが、膝くらいまで窓。気持ちが良かった。

足もとまで光が差す
足もとまで光が差す

喫煙ルームで居合わせた男性も、気持ち良さそうにタバコを吸っていた。男性が2本目を吸い始めたので、話しかけてみた。大阪から名古屋まで乗車するという男性は、喫煙車両にもよく乗っていたと話す。どちらが心地いいか聞いてみると...。

「喫煙車両がなくなってしまったことは悲しいけれど、喫煙ルームも悪くないね。ちょっと狭いけど、その分タバコの煙をよく吸ってくれるし」

どちらも甲乙つけがたいといったところか。男性はそのまま喫煙ルームを後にした。

確かに喫煙ルームはスペースが小さい反面、煙をよく吸ってくれるのだ。天井の換気扇に手を近づけると、ゴーゴーと音を立てていた。

煙は、天井の換気扇がゴーゴーと吸ってくれた
煙は、天井の換気扇がゴーゴーと吸ってくれた

一度喫煙ルームを出て、再度入りなおすと喫煙車両よりタバコの匂いはしなかった。ちょっと一息つくには最高のスペースである。

4月1日から、改正健康増進法が施行される。筆者の自宅近くの喫茶店やファミレス、居酒屋、パチンコ店も喫煙ルームが増えてきた気がする。今後は、座ってタバコを吸う機会が減るだろう。「残念...」と思うがタバコを吸わない人がいることも事実だ。

これからの時代は、「分煙」を意識した取り組みによって、双方が気持ちよく過ごせる空間づくりが進んでいくことを願いたい。

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