北海道では「焼香台が回ってくる」って本当? 地元のお坊さんに聞いた
北海道では焼香台が回ってくるらしい――
こんな投稿がツイッターで話題になっている。
焼香といえば、葬儀や法事の際に、仏壇の前にある焼香台に行く「立礼焼香」が一般的なイメージ。それが回ってくるとはどういうことか。中華料理屋のようなテーブルに焼香セットが載って回ってくるのだろうか...。見たことがない人にとっては未知の世界である。
実際の様子がこちらだ。
登場したのはキャスター付きの台に載った小さな焼香台。イスに座って焼香をするのにちょうどいい高さだ。自分の焼香が終われば横にスライド、隣の人にどんどん回してく。
この動画をツイッターに投稿したのは、北海道函館市にある湯川寺の副住職・筒井章順さん。筒井さんはこの方式が普通だと思っていたようで、
「全国共通かと思っていたのですがそうではないんですね(笑)お葬式の参列の人数が少なめの時は回し焼香が多いですが、300人とか規模が大きなお葬式だと人数が多いので、前に出て焼香台で行うことが多いです」
と投稿している。
回転ではなく隣の人に「回す」ということだったのか...。似た方法として畳に座ってお盆に載せた焼香を回す形があるが、キャスター付きの焼香台もその一つ。動く焼香台は初めて見る筆者だが、こうして見るとあまり違和感はない。
ツイッターでは、このキャスター付きの回し焼香について、
「香炉が動くパターンは初めて拝見。ちょっと意味が分らず10秒ほど考える」
「九州ですが法事の際回し焼香ですよ。こんなキャスターは無いですが」
「北関東ですが同じものを見かけます。通路が狭かったり、ご高齢で足の悪い方が多い時にはありがたいですね」
といった声が寄せられている。
お盆タイプの回し焼香は経験があっても、キャスター付きを見たことがない人は一定数いる様子。しかし北海道以外の場所でもキャスターは使われており、これが地域差なのかは分からない。
高齢化が影響?
Jタウンネットは2月5日、筒井さんに詳しい話を聞いた。

キャスター付きを使うタイミングについて、筒井さんは会場の規模とそこにいる人数が大きく関係しているのではと話す。
「小さな会場に人がたくさんいると、動くのも大変なので回すのでしょう。逆に広い会場で大人数だと、時間もかかるしスペースもあるのでたくさん焼香台があって、前に出てお焼香することが多いです」
筒井さんはキャスター付きのメリットとして、移動しなくて済むこと、高齢者も楽であること、焼香の時間を気にせず進行できること、喪主も毎回頭を下げなくていいから楽であること――をあげている。逆にデメリットは、遺族からすると参列者が後ろにいるため、式が終わるまで誰が来ているのか分からない可能性があることだという。
しかし一体なぜ、キャスター付きの回し焼香がメジャーな地域とそうでない地域があるのだろうか。そもそもこれは地域性の問題なのか...。それとも信仰している宗派の違いだったりするのだろうか。筒井さんに聞いてみると、
「宗派ではないですよ、地域性によるものです。どなたかがアンケートもとってくれていたのですが、前に出て行うのが一番多くて、回し焼香(座礼も含む)が全国のごく一部のようです。中には東京でも行ったという答えもあったので、高齢化や時代背景とともに変わってきていて、全国的に行われているけど知名度が低いんでしょうね」
とのこと。
今から20年以上前、筒井さんが小学生だったころはキャスター付きではなく焼香箱を回すことが多かったが、10年ほど前に僧侶になったときには、すでにイスになっていたという。また北海道には独自の冠婚葬祭の文化があることも「地域性」が関係していると考える要因の一つのようだ。
現在、筒井さんのお寺ではキャスター付きの回し焼香が基本で、
「うちのお寺でも、椅子を使い始めたのがきっかけです。高齢化社会に突入する頃に、足腰の弱い方向けに自然と切り替わっていったようです。高齢化社会の時代の変化と、各地方のローカル文化が合わさって出来ていったのでしょうねえ」
としている。