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嵐電・観音電車の「千手中吊り」に思わぬ注目 「ホラー」「怖い」の声に、担当者の反応は...

松葉 純一

松葉 純一

2019.07.07 20:00
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嵐電・観音電車の中吊り広告(画像提供:京福電鉄、以下同)
嵐電・観音電車の中吊り広告(画像提供:京福電鉄、以下同)

「電車に乗ったら、天井から手が何本も伸びていた......」「ホラー映画みたい」「こんなん子供泣くわ」などと、いま京都の人々をザワつかせていることがあるらしい。

夜、嵐電(らんでん)に乗った人が、薄暗い車内でこの光景を見て、肝を冷やしたという噂も......。鬼でも現れたのか、はたまた妖怪の仕業か?

上の写真は、嵐電と呼ばれる京福電鉄嵐山本線と北野線を走る電車の車内だ。天井から下がっているのは、中吊り広告だ。鬼や妖怪などとはとんでもない。京都市右京区にある仁和寺(にんなじ)の、ありがたい千手観音菩薩像の手の画像がデザインされているのだ。いったいこれは、どういうことなのだろう?

Jタウンネット編集部は、京都に電話して詳しい話を聞いてみた。

「千の手は、千手観音菩薩様の慈悲の象徴」

嵐電・観音電車のラッピング広告
嵐電・観音電車のラッピング広告

2019年7月1日、答えてくれたのは、京福電鉄の広報担当者だった。

「嵐電沿線にある世界文化遺産の仁和寺では、今年の春に6年にわたる観音堂の修復工事が終わり、5月より特別公開が行われています。多くのお客様に、通常非公開の仁和寺観音堂を知っていただき、お参りいただければと思い、仁和寺様ほか多くのご協力の元、4月頃より観音電車を企画し観音電車の運行に至りました」

なるほど、「嵐電・観音電車」と呼ぶ、ラッピング電車ということだ。車体の一部に千手観音菩薩像などの画像がラッピングされている。上の写真が、千手観音菩薩像だ。

嵐電・観音電車の車内広告
嵐電・観音電車の車内広告

仁和寺観音堂は928年頃に造営され、江戸時代初期に再建された。重要な儀式が行われる修行の場である。本尊・千手観音菩薩立像を中心に三十三体の仏像が並ぶさまは、荘厳そのもの。柱や壁に極彩色で描かれた「三十三応現身図」や「六道図」なども、現在、特別に公開されている。

電車内部には観音障壁画の画像のラッピングのほか、千手観音菩薩と二十八部衆の像をプリントした木板で吊皮を装飾するなど、仏様のお姿や障壁画のインパクトある画風が垣間見ていただける演出が行われている。

嵐電・観音電車の車内
嵐電・観音電車の車内

ところで、天井から下がっている中吊り広告は、どんな仕様なのだろう。

「タイベックという素材に印刷しています。手の部分は機械ではなく、人の手で切ってもらいました」

タイベックとは、化学系複合企業デュポンが開発した高密度ポリエチレン繊維不織布だ。化学防護服や、屋内の湿度を屋外に逃がし雨などの水を防ぐ透湿防水シートに使われているらしい。千手観音菩薩の手には、なんともハイスペックな素材が使用されているようだ。

ツイッターには、ちょっと怖いという感想も投稿されているが、何かコメントがありますか? と聞いてみた。

「多くの人々を救われる千の手(無限の手)は、千手観音菩薩様の慈悲の象徴と言われています。その象徴となる救いの手をクローズアップしています。
どのような形であれ、この観音電車やSNSで仁和寺の観音堂のことを知っていただいたのも何かのご縁です。多くのお客様に観音様お参りいただければ、嬉しく思います」
嵐電・観音電車のラッピング広告
嵐電・観音電車のラッピング広告

仁和寺は、真言宗御室派総本山の仏教寺院。本尊は阿弥陀如来、開基(創立者)は宇多天皇。「古都京都の文化財」として、世界遺産に登録されている。

仁和寺観音堂では7月15日までは「春季」、7月17日~9月1日に「京の夏の旅 文化財特別公開」、9月7日から11月24日までは「秋期」として、落慶記念の特別内拝が行われる。堂内の障壁画及び仏像33体が公開される。拝観料1000円(記念品付き)。北野線の「御室仁和寺駅」が最寄り駅だ。

嵐電・ラッピング電車に乗って、仁和寺の観音様に会いに行こう。

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