あなたの知らない京都の魅力、教えます ツウも唸る冬のツアーをご紹介
日本で一番の観光都市「京都」。しかし、あまりに見どころがありすぎて旅行の計画を考えるのも大変だ。
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今回は京都の良いところをピックアップした「京の冬の旅」、「春はあけぼの 京都の世界遺産いちばん乗りツアー」という2つのツアーの一部を、筆者が実際に体験。普段は見られない場所、ちょっと早い時間から出ることで体験できる幻想的な世界の一部を紹介する。
通な場所にも拝観
京都取材の初日に筆者が回ったのは、今回が53回目となる「京の冬の旅」のコースだ。3か所を回り、文化と芸術の中心地であった京都の歴史に触れた。
最初に訪れたのは仁和寺からも近い転法輪寺(轉法輪寺)。浄土宗の寺院で観光向けの拝観は通常行っていない。

本堂には高さ約7.5メートルの阿彌陀如來座像が安置されている。桜町天皇対幅のために造られたと伝わっているもの。御室大仏とも呼ばれ、転法輪寺の本尊となっている。
本尊の手前には巨大な木魚が置かれている。1本の木から作られた木魚としては日本で2番目の大きさを誇り、木魚バチだけでも4.5キロの重さがある。
そのほかにも裸のままの姿が珍しい阿弥陀如来立像、高さ5.3メートルの釈迦大涅槃図も拝観できる。これらの文化財は兼岩和広住職の説明が受けられ、住職の軽快なトークも魅力。仁和寺や龍安寺といった大きな寺とは違い、狭い敷地にあるが観光客がどっと押し寄せることなく、落ち着くことのできる貴重な場所なのかもしれない。
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続いて訪れたのは建仁寺両足院。両足尊にちなんで名づけられたこの場所は建仁寺の塔頭寺院だ。
ここでは桃山時代の絵師の長谷川等伯や伊藤若冲の作品が展示される。また、道釈画家の七類堂天谿氏による方丈障壁画が全面完成を記念して初公開。新旧の名作を一気に味わえる。
道釈画にはちょっとした秘密が隠されているほか、画家の気迫が伝わるシンプルながら生が伝わる線。構想だけでも数年を使ったという大作の魅力は必見だ。

初日の最後に回ったのは同じく建仁寺の塔頭の正伝永源院。織田有楽斎ゆかりの寺で、正伝院と永源庵と別々のお寺だったものが明治時代に正伝永源院と名を変えた。

ここは熊本藩主の細川家の菩提所という縁があって、細川護熙元首相が描いた障壁画がある。近年描かれた作品なだけあって、障壁画の先に京都の街が映る窓のよう。花見小路の喧騒から近く、夢と現実の狭間に置かれた感覚を楽しめる。

これらの文化財は1月10日から3月18日まで公開されている。正伝永源院は1月10日から27日、3月1日から18日と日程が異なる。
今回は数多くの名画が残る京都の魅力の一つに過ぎない。名作から何かを受け取るだけでなく、自身の想像力を掻き立てられ現世から離れた世界へも飛べる。無限の可能性を秘めた体験とも言える。
早起きは三文の徳
翌日は混雑必至の世界遺産寺院に、一般拝観開始前に訪れる「春はあけぼの 京都の世界遺産いちばんのりツアー」の一部を体験した。
一般拝観開始前とあってどのツアーもスタートが比較的早い。この日筆者は早朝5時に起床し、向かったのは世界遺産の「東寺」だ。
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実際にツアーが行われるのは3月24日、30日と31日。筆者が訪れたのは1月18日とあってとんでもない寒さ。出来る限りの防寒対策をしたつもりだが、それすらも貫く気温の低さと風。これに耐えながら夜明けの美を体感するため待った。

この日は少々雲が厚かったが、車のバックライトと世界遺産は思ったよりも合っている。薄紫色にメイクした空はどこか怪しげで背徳感のようなものを感じる。
寒さこそあったが、早起きで得る光景は忘れられない自分だけの絶景となり得る。

朝焼けバックの五重塔の撮影スポットは柵で閉ざされており、通常は8時から解放される。しかし、このツアーに参加すると5時50分から中に入れる。
先ほど同様に鮮やかな朝焼けは出なかったものの、シャイな太陽の光で五重塔が切り絵のような姿に。天候が関わる故、常にベストコンディションとはいかない。しかし、その時々の天候で様々な表情を見せてくれるはずだ。
また、自由参加で6時から行われる「生身供(しょうじんく)」と呼ばれる法要の参加も可能となっている。

続いては世界から愛される「龍安寺」。この場所は何といっても石庭が有名だ。筆者も中学時代の修学旅行で唯一サボらず訪れたのも龍安寺の石庭だった。
修学旅行の定番コース故、通常は人が多く落ち着いて見られない。しかし、一般拝観が始まる8時前から参加者のみで拝観。早朝の落ち着きと静寂―― 普段手に入らないものがそこにある。
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ほかにも通常非公開の仏殿や茶室を拝観できるが、筆者が一番驚いたのは知足の蹲踞(つくばい)の実物だ。通常はレプリカを拝見できるが、ツアーに参加すると実物を目にすることができる。
蹲踞は茶室に入る前に手を清めるための手水鉢のことだが、ここにあるのは水戸黄門と呼ばれた水戸藩主徳川光圀公の寄進によるもの。
水溜め部分を口とすると、四方の文字と合わせて「吾唯足知(我、ただ足るを知る)」の漢字が浮かび上がる。今でも脅かされてしまうような素晴らしき洒落。文字の力強さは健在、ここでしか見られない蹲踞の姿を見逃せない。

最後に訪れたのは龍安寺からも近い仁和寺。ここでも非公開の場所を巡り、金堂の裏にある圧巻の「五大明王壁画」を特別に拝観。内側の壁に描かれているため、保存状態は良好で鮮明な壁画を見ることができる。

そしてこちらも普段は非公開の経蔵の内部にも入ることができる。天海版一切経と呼ばれる経典を保管する書架で中央の八角形の回転式の輪蔵は押して回転させるとすべての経典を読誦した功徳を得られる。現在は重要文化財指定がされているため回転こそできないが、768個の棚は圧巻に尽きる。
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龍安寺と仁和寺は「世界に愛される禅寺『龍安寺』と五大明王壁画が眠る『仁和寺』巡り」と題した貸し切りバスツアーと題して3月10日のみ実施される。
筆者は体験しなかったが「世界遺産を守る『平成の大修理』の現場に迫る!」という清水寺と平等院を巡るツアーも用意されている。こちらは2月10日と11日、3月3日にわたって開催予定だ。
レアな体験ばかりの「いちばん乗りツアー」はフィアンセや家族、誰と参加しても生涯忘れられないツアーになることだろう。