都会の真ん中に「ゴーストタウン」出現! まもなく再開発の「古き渋谷」桜丘町を歩く
日本で最も人が集まる場所の一つの渋谷。だが、その一角に今ゴーストタウンのような場所が出現している。
渋谷、桜丘町封鎖。ついに工事が始まる...! pic.twitter.com/0acMXjDJh9
— 桜@サンホラ新作待ち (@sakura_laurant) 2019年1月7日
これは渋谷駅の南西にある桜丘町一帯で、異例の大規模再開発が始まろうとしており、テナントがすべて立ち退いた後の光景だ。
Jタウンネット記者は2019年1月9日、現地を訪れた。
落書きも看板も再開発の波にのまれる
桜丘町は渋谷駅の南側、国道246号線の南に広がる地域。これから再開発が始まるのは、246号線のすぐ南とJR山手線の線路に隣接する約2.6ヘクタールの敷地である。鹿島建設・戸田建設・東急不動産などによるプロジェクトで、正式には「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」という。18年までに区域内のすべての建物が無人となり、19年1月から建物の解体工事が始まっていた。そのために区域は道路から仕切られ、工事関係者しか立ち入ることができなくなっている。
JR渋谷駅西口から南側の246号線をまたぐ渋谷駅西口歩道橋もこの再開発の一環で一部の橋脚が封鎖されている。
246号線に面するエリアには数か月前まで大手書店や釣り具屋、ギターショップがあってにぎわっていたが、今ではすべてのビル・店舗に人の気配はなく、看板だけが残っているのは確かに大都会の中では異質な空気を感じる。
すでに区域内の通りはすべて封鎖され、歩行者も立ち入ることはできない。ほとんどの窓ガラスには目張りのテープが張られているが、これが戦時中のようで特異な情景だ。エリアの中ではマンションも雑居ビルも、昔ながらの木造の商店も混在しているが、どの建物も容赦なくこれから解体されていくだろう。
桜丘町は渋谷の中では比較的落ち着いた空気のエリアで、専門学校や小規模な教室が目立つ。ダンスにバーテンダー、果ては小料理の教室の看板まで見ることができ、東京のナイトカルチャーを陰ながら支えていた土地だと感じさせる。ほかにもスナック、バー、雑貨屋に劇団と様々なテナントの看板が足跡を残していた。渋谷らしい落書きもあいまって、猥雑ながら都会のエネルギーが息づくかのような街並みだが、皆消えていく。JRのホームからも見えるこの光景は渋谷らしさを感じさせるものだった。
通り一つ、建物一つ隔てただけの開発区域外と街並みは全く変わらず、その区域外では普通に老若男女が建物に出入りしている。ロープやフェンスで仕切られただけで建物の行く末が全く変わってしまうのも、不条理というか「ベルリンの壁」のようなものを連想してしまう。
再開発事業は2023年に完了するとのことだが、一体どんな景観が出現するのか。そのヒントはJRの線路を挟んだ東側にある。こちらには旧東急東横線高架の跡地を活用した複合施設「渋谷ストリーム」が18年9月に開業している。同じ東急不動産が東急電鉄と共に開発・開業させた施設である。
渋谷川を整備し、高さ180メートルのビルと商業施設を入居させた大規模な再生事業だが、今時のよくある複合ビルディングという印象は拭えない。一方、至近には開発区域に入らなかった雑居ビルが立ち並ぶエリアが残っており、両者の景観の差異が際立つ。
計画が完成すれば、先刻記録した雑多で猥雑なビル群も、現代的かつ金属的で無機質なビル群に変貌するのだろう。渋谷ストリーム周辺と同様の光景が現れると思われる。さらにこの区域の西側に隣接するエリアも「ネクスト渋谷桜丘地区」として再開発計画が策定されている。
今、桜丘町に限らず渋谷は各所で再開発の真っただ中で、クレーンの槌音が響いている。大きな転換期にあるこの街の日常は、こんな風にして変わっていくのだろう。今回は広範囲な開発だったため話題になっていたが、もっと小さな形で消えていく古き渋谷の情景も記憶にとどめておきたい。