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「新巻鮭」木箱がスケボー、ウクレレに! お歳暮の定番が、職人の手で大変身

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.11.24 12:00
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ARAMAKIシリーズの「シャケレレ」と「シャケバッグ」(画像はゲンカンパニー提供、以下同)
ARAMAKIシリーズの「シャケレレ」と「シャケバッグ」(画像はゲンカンパニー提供、以下同)

2018年も師走目前、お歳暮の季節だ。その定番といえば何を想像するだろうか。ビール、お酒、調味料、やっぱりハム......?

北海道はじめとする北の地方では、鮭がよくとれる。昔から、お歳暮の定番品といえば、鮭を塩で漬けた「新巻鮭(あらまきじゃけ)」だ。

そんな新巻鮭を運ぶ木箱(通称:シャケ箱)が、近年、バッグやウクレレなどに姿を変えている。ほかにはない一品モノで「新しくて、オシャレ」と注目され始めている。その名も「ARAMAKIプロジェクト」。なぜ、新巻鮭の木箱をつくり変えたのか?

Jタウンネットは11月17日、このプロジェクトを立ち上げたゲンカンパニー(北海道恵庭市)の村上智彦さんに電話で話を聞いた。

びっくりするほど、音がいい

「ARAMAKIプロジェクト」は、宮大工である村上さんと、ギター職人の鹿川慎也さん、2人のクラフトマンによる作品だ。村上さんによると、きっかけは生まれ育った北海道を離れ、宮大工として日本各地で修業していた村上さんが12年、地元に戻ったのがきっかけだったという。

「新巻鮭を運ぶ『シャケ箱』の色づかいや独特な書体など、グラフィカルな部分が新鮮に見え、カッコイイと思ったんです」

村上さんは、宮大工の修業中に「木は大切に、無駄なく使うこと」を徹底的に教え込まれたこともあり「何かできるんじゃないか」と考えたそうだ。

シャケ箱から、まさかのスケボーも誕生
シャケ箱から、まさかのスケボーも誕生

最初に作ったのは、バッグだった。なぜバッグだったのかと聞くと、

「シャケ箱のサイズを見て、バッグになりそうと思ったのと、その時、自分で欲しいと思えるバッグがなかったから、思い付きで作ってみたんです」

北海道では、シャケ箱にはエゾマツやトドマツなど地元で手に入りやすい木が使われる。厚さは7~8ミリ、最も厚いものでも13ミリ程度。決して良質の素材とはいえないそうだが、そんな制限がある中で、どうやったら満足のいく良いものに仕上げられるかを考え、持てる技術を駆使して本気で作ったという。

シャケ箱の神棚。宮大工の本気の仕事が入っている
シャケ箱の神棚。宮大工の本気の仕事が入っている

村上さんのバッグを見て、参加してくれたのがギター職人の鹿川さんだった。

「15年からは、2人でプロジェクトとしてスタートさせました。仲間であり、お互いライバルのような関係です。職人同士、いいものを作りたいという気持ちで競うように制作しています(笑)。シャケ箱でつくるウクレレはびっくりするほど、音がいいんですよ」

ニオわない? と心配する声も

シャケ箱は、役目を終えたり、水産加工会社やシャケ箱を作る工場などから譲り受けたりしたものを使っている。

「よく、『ニオわない?』と聞かれますが、もともと加工し塩漬けされた鮭を入れて運ぶものなので、基本、ニオイはそんなにつかないんです。活動をする中で、シャケ箱を作る工場や水産加工会社などへ見学させていただきました。行ってみると、『たかが箱』が『されど箱』。新巻鮭やシャケ箱を通して、地元の方々の思いや、課題など想像していた以上のことが見えてきました」

シャケ箱から生まれた作品たちは、ネット販売するほか、北海道や東京などのイベントで展示販売もしている。北海道内でのイベントでは、年配の方から「シャケ箱はつらい仕事の象徴と思っていたけれど、変り様に驚いた」といった声が聞かれた。一方、東京のイベントでは「え?なんだ、新巻鮭は売ってないの?」という反応があったそうだ。

イベント展示の様子
イベント展示の様子

シャケレレのライブやワークショップ、ファッションショー、シャケ箱の歴史を学ぶなどシャケ箱づくしな「シャケサミット」も開催した
シャケレレのライブやワークショップ、ファッションショー、シャケ箱の歴史を学ぶなどシャケ箱づくしな「シャケサミット」も開催した

そんなモノづくりの活動も大工の仕事のひとつだと思っていると村上さんは言う。プロジェクトには、シャケ箱工場の方にも加わってもらい、オリジナルのシャケ箱やいくら箱を作り商品化するなど、活動の幅を広げている。

「私は木材があって楽しんで自分が欲しいものを作っているだけ。それを多くの人に面白がっていただき、北国の文化や、シャケ箱を作る会社、水産加工会社についていろいろ知ってもらえたらうれしいですね」

19年7月には、前代未聞のシャケ箱の工場で行うイベントを計画中。鮮魚店や居酒屋の前に積まれているだけだと思っていた木箱が、地元の職人たちの手で新たな進化を遂げていた。

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