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「ご当地麺」全国ナンバーワンはどこ?  東京1位、江戸川区「矢打」の鴨汁せいろ

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.11.19 17:00
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全国麺類生活衛生同業組合連合会は、「全国ご当地・オリジナル麺選手権」と題した投票キャンペーンを実施している。麺料理の全国ランキングとグランプリを決める大会だ。

東京ブロック1位に輝いた矢打の「鴨汁せいろ」
東京ブロック1位に輝いた矢打の「鴨汁せいろ」

Jタウンネット編集部では、2018年11月15日から始まる全国大会に先駆け、東京ブロックで1位に輝いた江戸川区のそば店「矢打」を取材。そこには、店主の並々ならぬ情熱とこだわりの結晶があった。

江戸のそば職人

そもそも今回の大会は、全国各地の麺類店が考案した「ご当地麺」、「オリジナル麺」、「力作麺」などの人気を競うもの。9月14日から10月31日まで行われた「全国10ブロック予選大会」の各ブロック上位4店による「全国決勝大会」が11月15日から12月25日まで行われている。

さて東京ブロック1位に輝いた「矢打」は、東京メトロ東西線の葛西駅から車で10分ほどの住宅地にある。お世辞にも交通の便が良いとは言えない上に店の前の道路を行き交う車もそこまで多くない。しかし、そんな場所のメニューが1位になったのは何故なのか。

矢打の前を走る道路
矢打の前を走る道路

矢打の外観
矢打の外観

幸運なことに店主の青木稔さんのご厚意で厨房に入れてもらうことができた。投票者の支持を得たメニューの裏側から紹介しよう。

製粉機
製粉機

まず入れていただいたのは製麺所。青木さん曰く江戸のそば職人が最良と考える提供方法「挽きたて、打ちたて、茹でたて」の三たて方式を実践している。

挽き終わったそば粉
挽き終わったそば粉

挽きたてのそば粉を握るとしっかりと固まり、手の指紋がついている。良いそばは粉の段階で指紋がつくのだという。手に取って舐めてみるとこの時点で甘みがふわりと広がった。

そば切り包丁など
そば切り包丁など

この粉を一旦ふるいにかけ、打つ作業へと入っていく。1キロ以上あるそば切り包丁を使い、重みでそばを切っていく。気候によって、切り方も変えているというのだから驚きだ。

これらの過程を経た麺は一旦、落ち着かせて茹でる作業に移る。

そばを投入する青木さん
そばを投入する青木さん

通常より大きめだという寸胴を使い茹でる。投入した麺は「八の字」で回していくのが重要だという。

茹で具合の確認
茹で具合の確認

タイマーなどは使わずに指で茹で具合は確認し、時間に頼らず職人としての「感覚」を信じて麺を引き上げていく。茹であがった麺のぬめりをとるために水で洗いざるにのせる。ここまで単純な作業のようだが、職人としての技量が無駄を省き、スマートな振る舞いになっていたのだろう。

カットされた鴨肉
カットされた鴨肉

器へ注がれる鴨汁
器へ注がれる鴨汁

鴨汁のこだわりも強い。鴨肉は青森県産の「津軽がも」と呼ばれるバルバリー種の肉を使う。こちらも青木さんの手でカットされている。

これを大量につくるのではなく、一つ一つ丁寧に作っていく。ネギは甘みの強い秋田県の「美人ねぎ」を使用。味のバリエーションを追加する。

鴨汁せいろ
鴨汁せいろ

こうして出来上がった「鴨汁せいろ」だが、熱々の汁につける前に麺だけでいただくのがおすすめの食べ方だ。

何も味がないのではと考えてしまうが、少し硬い麺を咀嚼すると優しい甘みが口いっぱいに広がってくる。最初の躊躇いはどこかへ消え、鴨汁そっちのけで麺だけが減っていってしまう。

鴨肉
鴨肉

麺を十分に味わったら鴨汁とのコンビで楽しませてくれる。麺とは違った濃厚で強さのある甘みが一瞬にして支配し、あっという間に虜だ。さらに鴨肉の程よい硬さと旨味も加わった最高のリレーは、さながら店主も大ファンだというプロ野球・ヤクルトの名コンビ「ロケットボーイズ」のようだ。

家族一丸で作るベストな味

数々のこだわりを見せてくれた青木さんはかつて自身でそばの栽培を行うなど徹底的に信念を貫いている。取材にはいなかったが、夫人が接客を担い、長男が全国を歩き回ってそばの実を探すなど家族総出で「そば」に情熱を傾けている。

東京都麺類生活衛生同業組合の理事も務めている青木さんは後継者問題などで年に約100店ずつ、そば店が減っていく現状を考えれば子どもも協力し後継ぎに意欲的である現状を「幸運」と語った。

「飾り付けよりストレートに」

こう勝負するためには並大抵ではない「こだわり」が必要だと訴える。

「いらっしゃいませ」――。どこの店でも聞くフレーズだが、声の張り方や質といった部分で店のアイデンティティがでる。接客を担当する夫人の声も店のウリなのだ。「どれが欠けても良くない」と話す青木さんはそばだけでなく、

「人の心もおいしい」

すべてが「おいしい」ことこそが最高と話す。

店主の青木稔さん
店主の青木稔さん

1982年に「矢打」の屋号を掲げてから36年が経ち、リピーターも多く獲得している。だからこそ、青木さんは知っている。

「そば店の『味』が続くかを決める。いつもと同じ味が良い」

――青木さんのこだわりの味は、全国大会でも熱い支持を集められるだろうか。大会の行方から目が離せない。

後編に続く)

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