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復活した日本最東端ジャズ喫茶、根室「サテンドール」の新店主に話を聞いた

松葉 純一

松葉 純一

2018.09.13 17:00
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サテンドール店内(写真提供:根室市役所総合政策室)
サテンドール店内(写真提供:根室市役所総合政策室)

昭和のある時期、「ジャズ喫茶」というスタイルの喫茶店が人気を集めた。高価なオーディオシステムや大型スピーカーで、輸入盤ジャズのLPがたっぷり聴けるということで、熱心なジャズファンが押し寄せ、コーヒー1杯で何時間もねばったのだ。

そんな時代、1978年、北海道根室市に日本最東端のジャズ喫茶「サテンドール」が誕生した。以来、約40年、店を守り続けた店主・谷内田(やちだ)一哉さん(80)が、高齢のため閉店することに......。2018年3月のことだ。

そこで根室市では、ジャズ文化の発信拠点とその文化的価値を遺そうと、ジャズ喫茶再建プロジェクトを立ち上げた。店を引き継ぎ、新たな活動を興す人を、「地域おこし協力隊員(根室市Jazzの街PR推進員)」として、全国から募集したのだ。

9月10日、「サテンドール」は復活した。新しい店主は棚網(たなあみ)宏さん(62)と妻の享子さん(59)。Jタウンネット編集部は、棚網さんに電話で話を聞いてみた。

「家内にはもう感謝しかありません」

棚網宏さんと妻の享子さん(写真提供:根室市役所総合政策室)
棚網宏さんと妻の享子さん(写真提供:根室市役所総合政策室)

棚網さんは、東京都世田谷区から8月に移住してきたという。まず、応募のきっかけを聞いてみる。

「もともとオーディオ機器やコーヒーを趣味としておりまして、また将来の目標として喫茶店をやりたいという思いがありました。京都に出張で行った際、京都駅でたまたまスマホをのぞいて、このジャズ喫茶の店主募集のことを知りました。ただ根室にはまったく縁がなく、どんなところかも知りませんでした」

棚網さんは印刷会社のエンジニアとして働いていた。そろそろ定年という年齢でもあり、退職後の夢として、ぼんやりとジャズ喫茶を思い浮かべていたようだ。だが現実にはなかなか難しい。そんな時、京都駅でスマホを見たのが、人生の転機となった。

応募したのは4月、根室市で審査会に出たのが6月、決定したのは7月だった。20人以上の応募者の中から、選ばれたのだ。それにしても、ご家族、とくに奥様の理解をよく得られましたね、と聞くと......、「家内にはもう感謝しかありません。夫婦一緒に根室に移住するというのが、審査会でも評価されたようです」と棚網さん。

谷内田さん(右)と談笑する棚網さん夫妻(写真提供:根室市役所総合政策室)
谷内田さん(右)と談笑する棚網さん夫妻(写真提供:根室市役所総合政策室)

実際に根室に来てみて、いかがですか?

「根室市民の皆さんには本当に温かく迎えられています。開店の準備作業も、ずいぶん手伝っていただきました。『ネムロホットジャズクラブ』のメンバーや古くからの常連のお客様にも交替でご来店いただいています。ご自宅のオーディオ機材やLPを持って来て、良かったら使ってよと、置いて行かれたり......。もう『俺たちの店』という感じですね」

前店主の谷内田さんとは、綿密に引き継ぎをされたのですか? と聞く。

「いえ、ほとんどありません。どうぞ自由にやってくださいとおっしゃって......。たまに顔を出されるくらいですよ」と棚網さん。「そういえば、『ジャズを聴きに来る人はあまりいませんよ』とは言われましたね。たしかにゆったりと話をされるお客さんが多くて、スピーカーの音量を少し下げてと、頼まれることも......。町のサロン的な役割の方が大きいかもしれません」

どうやら東京のジャズ喫茶とは、ちょっとものさしが違う、ようだ。

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