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平将門は、このルートで逃走した!? 東京との県境・山梨県丹波山村の案内板が面白い

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.05.09 06:00
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史学的なネタから創作、伝承・伝説、オカルト方面まで、幅広い人気(?)を誇る歴史上の人物は多数存在するが、承平天慶の乱で当時の朝廷に反旗を翻した豪族、平将門もその一人だろう。関東で乱を起こした将門は、追討軍との戦いに敗れ各地を転々と逃走し、最終的には敗死する。

そんな将門の逃走ルートの一部を追体験できる登山ルート、その名も「平将門迷走ルート」なるものが、2017年6月に山梨県北都留郡(きたつるぐん)丹波山(たばやま)村の七ツ石(ななついし)山に設置されたという。また随分と遠くまで逃走したものだ。

意外にのんびり逃走ルート

平将門は本拠地としていたのが下総(しもうさ)~常陸(ひたち)あたり(現在の千葉~茨城)とされており、乱の影響を受けたのも関東全域にまたがるため、今でも各地に将門にまつわる伝説や伝承が多く残されている。

切り落とされた将門の首が射落とされた、祀られている、落ちてきた、などの首にまつわる伝説は特によく知られており、千代田区大手町の首塚は代表例と言えるだろう。

今回ご紹介する「平将門迷走ルート」は、死後ではなく存命時の話だ。ルートが設定されている七ツ石山は、ちょうど東京と山梨の境目に位置する。

ものすごく特徴的な山、という感じではない七ツ石山(Koda6029さん撮影, Wikimedia Commonsより)
ものすごく特徴的な山、という感じではない七ツ石山(Koda6029さん撮影, Wikimedia Commonsより)

登山愛好家の間では、都内最高峰の雲取山(標高2017m)に至るルートの途上としても知られているようだ。登山を趣味にしている記者の家人も、「通過地点の印象がある」と話していた。

ただ、『将門記(しょうもんき)』などの史書によると、敗死に至るまで将門が主に活動していた地域は下総から常陸にかけて。敗走していたのも千葉・茨城方面だと思われ、東京・山梨方面はかなり足を延ばした感がある。

一体、どんな資料や伝承に基づいて設置されたのだろうか。Jタウンネットが設置にあたった丹波山村役場・地域おこし協力隊に取材を行ったところ、文化財担当として資料の確認にあたった寺崎美紅さんに話を聞くことができた。

「関東各地に将門伝説は多く残っていますが、丹波山村も地名などに将門伝説に由来するものが多くあり、七ツ石山もそのひとつです。迷走ルートも史実に基づくわけではなく、村に残る将門伝説を基にしています」

地域おこしの一環として、村の登山道になにか付加価値をと考えていたとき、村史の中に「七ツ石山を通って将門が逃げて行った」との記述があることが、迷走ルート設置のきっかけになったという。

「調べてみると、村の将門伝説を研究していた郷土史家の方が残した資料があり、そこにも将門が逃走する際、七ツ石山から雲取山に至るルートも一部通ったとされていることがわかったのです」

そこで、七ツ石山周辺の昔の呼び名などを、高齢の村民に確認して将門伝説と照合。さらに、その場所を地域おこし協力隊が現地調査し、将門が逃げ延びた道を追体験できるよう、10か所に迷走ルートの看板を設置したという。

ルートは登山道の入り口となる鴨沢という場所から七ツ石山山頂、そして雲取山へと続くブナ坂までとなっており、ちょうど七ツ石山を登って降りたところまで。登山情報サイトなどを見る限り、おおよそ15~6キロというところだろうか。

もちろん、将門はここからさらに先に逃げていくのだが、ブナ坂より先は丹波山村ではなくなるので、丹波山村が設置した迷走ルートとしてはここまでだ。

ネタバレになってしまっては意味がないので、看板の内容に詳しくは言及しないが、かなり読ませる内容で、伝説とはいえ「次の場所では何が起きるのか?」と、続きが気になる展開だ。

迷走ルートに設置された看板のひとつ。なかなか読ませる内容だ(提供:丹波山村役場・地域おこし協力隊)
迷走ルートに設置された看板のひとつ。なかなか読ませる内容だ(提供:丹波山村役場・地域おこし協力隊)

「資料や伝承をそのまま書いてもいいのですが、それではただの案内板になってしまいます。せっかくなので、次の場所に進みたくなるようにと、少し物語性を加えました」

登山者からも、「今までは通り過ぎるだけの林道だったけど、看板を読みながらだと楽しめる」と、反応は上々のようだ。

ただし、先述の通り看板の内容はあくまでも伝承に基づくもので、史実をなぞるものではない。そのため、「風呂に入る」「茶を点てる」など、将門の時代以降に始まった行為も記述されており、「ツッコミ」が入ることもあるという。

「そもそも冷静に考えると、追われて逃げているのにどれだけ休んでいるんだ、と言いたくなるかもしれません。そこは伝承と割り切っていただき、看板にツッコミながら楽しんでいただくのもひとつの在り方だと思います」
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