シカ肉、全国2位は「鳥取県」 北海道に続くジビエ利用量なぜ?
狩猟で捕獲した野生の鳥獣を食材として楽しむ「ジビエ」もすっかり定着してきた。居酒屋などでもジビエメニューとしてシカ肉やイノシシ肉、鴨肉などを楽しむことができる。
そんな国内のジビエ利用実態を示す初めての調査結果、「野生鳥獣資源利用実態調査(平成28年度)」が2018年2月9日、農林水産省によって発表されている。イノシシ肉やシカ肉のジビエ利用量(トン)が都道府県ごとに報告されているのだが、シカ肉は北海道が400トンという圧倒的な量を誇り、それに次ぐ第2位が47トンで鳥取県となっているのだ。
当然ながら山林が豊かだと思われる地域がよく販売しているようだが、なぜ鳥取県でシカ肉なのだろうか。広島出身の記者のイメージでは山陽・山陰はイノシシが多い印象だ。地元でもイノシシ料理を提供するお店が少なくない。逆にシカ肉についてはあまり印象がない(当たり前だが宮島のシカは食べない)。
そもそも、「鳥取名物といえば、そうシカ肉」......というイメージはなく、どちらかといえば海産物。面積的にも北海道や長野県よりも小さな鳥取県にシカが多いなにか特別な理由があるのか。
Jタウンネットは2月26日、鳥取のジビエ振興に関わっている商工労働部兼農林水産部の食のみやこ推進課に取材を行ったところ、担当者は次のように話してくれた。
「鳥取県に特別野生のシカが多いというデータはないかと思います」
担当者によると、鳥取から出荷されるほぼすべてのシカ肉は県東部、兵庫との県境に位置する若桜町(わかさちょう)で捕獲されたものだという。ただし、若桜町にシカが多いというわけではない。
「首都圏などでジビエとしての需要が高まり、それに応えるためにさまざまな取り組みを行い、鳥取のシカ肉が高く認知されるようになったためではないでしょうか」
そう、鳥取でイノシシ肉とシカ肉を合わせたジビエ利用量は59トンに達するが、自家消費量は4トンほど。大半はジビエの材料として他県に出荷しているのだ。「いなばのジビエ推進協議会」といった団体も立ち上げ、県を挙げて積極的にジビエの出荷に取り組んでいる。
「ハンタースクールで若手のハンターを育成するのはもちろん、ジビエの品質を左右する処理技術の研究も日々行い、衛生管理の独自認証を設けるなど食肉としての価値を高めるための工夫をしています。自画自賛になりますが、こうした取り組みおかげで鳥取のシカ肉は全国で高い評価をいただき、東京の一流店の食材としても活用されているほどです」
特に処理の速さがジビエの味を左右する重要な要因ということもあり、若桜町にはジビエ加工処理施設を設け、素早くかつ高い処理技術で食肉化できるような体制を整えているという。
「県東部ではシカですが、県中西部ではイノシシ猟が盛んです。今後はさらにイノシシ肉の出荷にも力を入れていきたいと考えています」
ぜひとも鳥取のシカ肉を味わいたいところだが、残念ながらネット販売などはされておらず、基本的には各地の料理店に販売されている。どうしても家で味わいたいという人は、鳥取市内にあるスーパー「サンマート」で購入することが可能だ。