福岡ビギナーのための「博多手一本」入門 ポイントは「パ・パンのパン」
1年以上前のことだが、Jタウンネットでは「東京から福岡に転勤した人たちが帰りたがらない」という話題を記事にしたことがあった(参照:福岡が日本の「ブラックホール」との説が話題に 「一度赴任した人間が本社に帰りたがらない...」)。
転勤した人たちが「帰りたがらない」理由は、「飯はうまい、酒もうまい、ネエちゃんはキレイで優しい......」など。さらに近年、若者の人口が増えている。IT企業の進出がめざましい。福岡=ブラックホール説を検証した結果、どうやら福岡が魅力的な土地であることは間違いない。
いま福岡への移住を考えている人は、かなり多いかもしれない。そこで福岡ビギナーがなるべく早く覚えておいた方が良さそうなことを、一つ挙げておこう。それは「博多手一本」だ。
「えっ、博多手一本? いったい何?」という読者は、引き続きお読みいただきたい。
手一本後の拍手は不作法
「博多手一本」とは、古くから博多に伝わる一本締めのことだ。どうやら他の地方とは異なる独自のスタイルを持っているらしい。いったいどんな一本締めなのか。
そこでJタウンネット編集部は、福岡ビギナーのための「博多手一本」について、福岡に電話して話を聞いてみた。答えてくれたのは、福岡市役所にぎわい振興課の担当者だった。
「博多手一本の注意点ですが、最後の3回手打ちするところがとても大事です。『パ・パンのパン』というリズムでたたきます」と担当者は答えてくれた。
「パ・パンのパン」、どんなリズムだろう?
次に、博多祇園山笠ポータルサイト「山笠ナビ」編集部に、電話で尋ねてみた。「山笠ナビ」は770年以上の伝統を持つ「博多祇園山笠」を楽しむ、山笠ファンのためのサイトだ。
「山笠ナビ」には「博多祇園山笠用語辞典」というコーナーがあり、その中で「手一本」について解説されている。
「山笠ナビ」編集者は、次のように答えてくれた。
「福岡では、新年会や納会など企業の会合や宴会では、手一本で終わる場合がほとんどです。『後日、異議はありません』の約束となり、手一本でお開きとなります。手一本の後に異論を唱えることは許されません。手一本の後に拍手をするのも不作法とされます」と、「山笠ナビ」編集者は語る。
「結婚式でも手一本は重要なセレモニーです。『この結婚を了承しました』という意味を持つからです。私自身の結婚式でもそうでしたが、参加する親族や友人には福岡県外から来られる方が多い。その場合には、博多手一本についてかんたんに説明し、その手順をゆっくりと練習してから、本番の手一本を入れます」。
「山笠ナビ」の「博多祇園山笠用語辞典」にはその手順が記されているので、引用させてもらおう。
一本締めというと手を一回叩く作法だが、博多手一本は複数回手を叩く。 博多手一本のやり方は、体の前で手を打つ体勢を整えた上で、
# 「よーお」(パンパン)
# 「も一つっしょ」(パンパン)
# 「よーと三度」(パパンパン)
と、その場の仕切り役の掛け声に合せて行うのが慣例。
なるほど、少し分かったような気がしてきた。福岡市役所の担当者が話してくれた、最後の3回手打ち「パ・パンのパン」というのは、このことだ。
YouTube上には「博多祝いうた(祝いめでた)と博多手一本」と題した動画があった(40秒くらいから「博多手一本」)。まさに伝統を感じさせる、感動的で厳粛な儀式である。
「そういえば、地元のサッカーチームのアビスパ福岡が、最近手一本を始めたみたいですよ」と「山笠ナビ」編集者。そこで、J2で奮闘中のアビスパ福岡に問い合わせてみた。
電話で答えてくれたのは、アビスパ福岡の広報室担当者だった。
「選手もサポーターも一つになれる、何か福岡らしいものを...と考えて、今シーズンから博多手一本を行うことになりました。他のクラブではできないことなので、サポーターにはとても好評です」。
アビスパ福岡では、ホームでの勝ちゲームの後に、「博多手一本」を行っているのだ。ウェブサイト内のページでは、次のように呼びかけている。
勝利の後は、みんなで一緒に「博多手一本」
今シーズンより、勝利を収めた際は、試合終了後に伝統の「博多手一本」を実施しています!
ぜひ、みなさんも勝利を祝し一緒に「手一本」を行いましょう!実施の際はご起立、脱帽の上、お願いいたします。
参考例として、「博多手一本」の動画が紹介されている。YouTubeでも閲覧できる。
博多手一本(avispachannel 2017/03/20 に公開)
7/1岐阜戦 勝利の博多手一本!(avispachannel 2017/07/01 に公開)
福岡ビギナーにとっては、この動画はかなり親しみやすいかもしれない。最後の3回手打ち「パ・パンのパン」のリズムも分かりやすい。アビスパ福岡のYouTube動画を観ながら、手一本を練習するのも良さそうだ。