新宿ゴールデン街で火災! 鳴り響く非常ベル、そのとき住民は...
「お店の近くまでは来てるんだけどね、規制線が張られちゃって、入れなくって......」
携帯電話に向かって、女性が困った様子でしゃべりかける。所は花園神社の真裏、新宿ゴールデン街の入り口、時刻は2016年4月12日15時ごろ。「ジリリリリリリ......」と非常ベルが鳴り続け、煙はだいぶん落ち着いたものの、焦げ臭いにおいが辺りには漂う。
12日13時20分ごろ、新宿歌舞伎町のゴールデン街で火災が発生した。
ゴールデン街といえば小さな飲み屋が密集し、最近では海外観光客からも人気が高い。火災直後の、周辺の状況を取材した。
大通りにまで届く煙たさ
「離れてください、消防が通ります――ここから出てください!」
警察官がいらだたしげに呼びかける。区役所通りのホテル前での一幕だ。この1階部分には、ゴールデン街への通り抜け通路がある。その細いスペースに、テレビカメラを担いだ取材クルー、あるいはスマートフォン片手の野次馬がどっと詰めかけ、満員状態になっていた。
ようやく開いた道に、ハシゴが担ぎ込まれる。白煙が上がる中、雨のように消防車の放水が降り注ぐのが見えた。
火元となったのは、このホテルのすぐ裏手、「まねき通り」に面する店舗だ。火災発生からおよそ1時間30分が経ち、火の手はすでに弱まっていたものの、もうもうと上がる煙は、表の靖国通りからも容易に見て取れた。通りがかる人には、うっかり煙を深く吸い込み、激しくむせる人もいる。
「こちらが、火災の現場です!」と走る演技のテレビクルー
ここからは現場に近づけないと判断した記者は、時計回りにゴールデン街の周囲を歩くことにした。
サブウェイ、吉本興業、テルマー湯などのある北側の一角にも、大勢の野次馬や取材陣が詰めかけている。あるワイドショーの記者が、「こちらが、火災の現場です!」と叫びながらカメラを連れて走ってくる、という「定番の」カットを撮影しているかと思えば、近所の居酒屋の店員らしい若い男女が、「予約のお客様どうしよう......」とぼやいているなど、人間模様はさまざまだ。
さらにぐるりと回って、花園神社を通り抜ける形で、ようやくゴールデン街の入り口に入ることができた。ここには野次馬よりも、従業員や近所の住民と思しき人たちが多く集まっている。スウェット姿だったり、サンダル姿だったりと、まさに「着のみ着のまま」という出で立ちである。非常ベルは変わらず鳴り続けているが、延焼の心配もなくなってきたためか、住民たちは落ち着いた様子だ。
「煙がこっちに来なくなったねえ」
「風があっち向きになったんだね」
「いや、火が消えたんだよ」
ちょうどこの会話が行われていたころ、現場では消防隊員の努力もあって、火災は終息に向かっていた。各社の報道によれば5軒前後の建物を焼き、1人が軽傷を負ったという。