今「来てる」街・福岡! LINE Fukuoka移転で、IT都市化さらに加速するか
最近、福岡が「来てる」よね――そんな話を、最近よく耳にする。特にIT業界人の口からは、かなりの高確率で「福岡」の地名が出るように思う。
Jタウン研究所が2015年7月にまとめた「住みたい都道府県」アンケートでも、沖縄や北海道、東京を抑えて1位に輝いたのは、福岡県だった。特に都内からの得票が目立つ。「Go West」ならぬ、「Go Fukuoka, young man」の風が、確実に吹き始めている。
なんとなく福岡が気になっている人、いっそ引っ越してもいいかも――と思い始めている人、あるいは「修羅の国」というネットのイメージに毒されている人。そんなあなたのためにJタウンネット編集部では今「来てる」街、福岡の魅力を、短期連載という形で紹介したい。
福岡から独身のまま帰ってくる男はいない?!
福岡という街の性格をわかりやすく示しているのが、その「人口」だ。
2015年7月1日時点の推定人口は、約153万人。東京、横浜、大阪、名古屋、札幌、神戸に次ぐ、日本第7位のポジションにある。しかも、この10年で10万人以上増加中だ。
また若者世代(15~29歳)の多さも、福岡の「活気」を象徴している。その比率は19.2%、政令市の中では全国一を誇る。
また人口でいえば、福岡は女性が多く男性が少ない(しかも、若い女性ほど多い)、いわゆる「女あまり」な土地としても知られる。福岡に拠点を置くある大手企業の元社員によれば、
「福岡に赴任して、独身のまま東京に戻ってくる男性社員はいない」
という話が、社内ではまことしやかにささやかれていたそうだ。
それにしてもなぜ、若者が福岡に集まるのか。1つは、大学や専門学校の多さだろう。たとえば大学では、九州大学を筆頭に、福岡大学や西南学院大学、福岡女学院大学、福岡女子大学、九州産業大学、福岡工業大学、九州造形短期大学などがキャンパスを置き、主に九州各地から若者が進学してくる。また卒業後はそのまま福岡で就職する人も多く、若い人材が集まりやすい土地となっているのだ。
続々と福岡に集まる躍進企業
こうした人材の豊富さは、経営側にとっては魅力だ。加えて、
(1)オフィス賃料の安さ(市内のビジネス地区で1坪当たり9217円。東京都の約55%)
(2)職住近接のコンパクトシティ
(3)空港が都市部から近く、アジアを始め海外へのアクセスが容易
(4)地震を始めとする自然災害のリスクが少ない
(5)「創業特区」としてスタートアップ企業などへの支援に行政が積極的
といった条件の良さから、今福岡には勢いのある企業が続々と集まっている。
福岡で起業し、今や世界からも注目を集めるレベルファイブやヌーラボ、震災のリスク回避などを理由に本社を福岡に移したケンコーコム、また開発拠点を新たに設けたサイバーエージェントなど、IT・クリエイティブ系を中心に、福岡を舞台に活動する企業が引きを切らない。こうした動きを受けて、会員制転職サイト「ビズリーチ」など、福岡の求人に力を入れるところも出てきた。
すでに600人以上が福岡で働くLINE
福岡進出企業の代表格は、なんといってもLINEだ。
LINEは2013年7月、福岡に「国内第2の拠点」として、市内中心部に約1000人が働く新社屋の建設を発表、世間を驚かせるとともに「これからは福岡」の流れを決定づけた。森川亮社長(当時)は地元紙・西日本新聞の取材に、
「(福岡は)教育、物価、治安の面で東京より外国人が住みやすい。食事と空気もおいしい」
と話すなど、今後の海外展開に向けた前線基地として、福岡への強い期待をにじませていた。
それから2年。新社屋自体の建設は遅れているが、子会社であるLINE Fukuokaはすでに7月時点で従業員数が607人にまで到達(LINE本社は約900人)、名実ともに「国内第2の拠点」としての地位を築きつつある。
LINE福岡「優秀な人材がいれば積極的に採用」
またここに来て、新しい動きも出てきた。これまでは駅周辺の複数のオフィスを利用していたLINE Fukuokaだが、従業員増を受けて5月、博多駅前に建設中の「JRJP博多ビル」(2016年5月完成予定)への入居を発表したのだ。駅と直結(徒歩1分)する、九州最大のオフィスビル。このビルを選んだ理由についてLINEに尋ねたところ、
「博多駅は九州最大の玄関口で、ヒトやモノが集まる活気に溢れた福岡のシンボリックな場所である。JRJP博多ビルはそんな博多駅に直結した立地で、優れた設備、十分なキャパシティを保有している福岡有数のビルのため、入居を決定した」
との回答があった。また今後の増員計画についても、「引き続き、優秀な人材がいれば積極的に採用を行っていく」とのことだ。
「シンボリックな場所」である博多駅前への本格進出で、さらにLINEが福岡での存在感を増すことは間違いない。またその人員拡大は、福岡の「IT都市」化をさらに促進しそうだ。