所要時間1分! 東京中心部で「一番高い」箱根山(標高44.6m)に登ってみた
日本で一番高い山は、当然だが富士山。東京都で一番高い山は、というと、これは奥多摩の雲取山(標高2017.09メートル)。では、さらに範囲を絞り、東京中心部=山手線の内側で、一番高い山は、どこにあるかご存じだろうか。
今回のJタウン探検隊は、その山――新宿区にある「箱根山」登山に挑戦した。
早稲田大学のすぐ近く
東京メトロ東西線・早稲田駅。学生たちでにぎわう駅前から歩くことおよそ数分、取材陣(今回は珍しく2人)は、問題の箱根山があるという都立戸山公園に到着した。
新宿にもほど近い、東京のど真ん中にあるといっていい立地だが、園内は晩春の濃い緑に包まれ、なんとものどかな空気を醸し出している。
だがぱっと見た限り、そんな「高い山」は見当たらないが......。
突如現れた登山道
園内を歩くことしばし、探検隊が発見したのは、「箱根山北入口」の看板だ。
どうやらここが、登山道の出発点らしい。確かにその奥には、こんもりとした木々の群れがそびえたっている。
「探検隊」と言いつつ、実は筆者、登山など中学生時代の林間学校以来だ。果たして無事に登り切れるか――不安を感じつつ、ゆるやかな「山道」を進んでいく。
もう頂上かよ!
約30秒後(30分ではない。30秒)。
筆者の目に、驚くべき光景が飛び込んできた。
頂上だ。
「まだ登山開始から1分も経っていないのに?!」――驚きつつ、まったく険しくない階段を相手に懸命のアタックを開始する。
「ファイトー! いっぱーつ!」
......約20秒後。小芝居もむなしく、探検隊は無事山頂に到着した。
特に見晴らしがいいわけでもない
水準点によれば、「箱根山」の標高は44.6メートルだ。ちょっと高いマンションと大して変わらないくらいの高さだが、山手線の内側には、これより高い「山」は存在しない。こんな箱根山でも、立派な「山手線内最高峰」なのだ。
とはいえ、山頂に立ってみても別に新宿の街が一望できる――なんてことはない。周りの木々の方が背が高いからだ。緑の間に、かろうじて高層ビル街が顔を出している程度か。
もっとも裏を返せば、都会の真ん中にあって都会から断絶された、ある種の別天地と言えなくもない。ほかの「登山客」も、ご近所住まいと思しきおじさんやおばさんがほとんどで、山の周りはほのぼのした憩いの場となっていた。
元々は旧陸軍の施設があった
この箱根山は元々江戸時代、一帯に下屋敷を構えていた尾張徳川家の庭園として造成された人工の築山だ。
明治時代以降は陸軍戸山学校をはじめ、旧陸軍の施設が辺りには集められ、箱根山もその一画に組み込まれた。「箱根山」という名前ができたのもそのころだという。日々訓練に追われる軍人たちも、せめて遊山気分を味わいたかったのだろうか。
戦後、一帯は公園や団地などとして再開発され当時の面影はほとんどないが、箱根山はそのまま古くからの姿を残している。
さすがに「登山」には無理があるものの、戸山公園と合わせてちょっとしたハイキングにはぴったり。都会の喧騒と編集作業に疲れ気味の調査隊は、少し癒された心で箱根山を後にした。